34 / 105
Main Tales
Tale20:堕ちる罠には、この柔らかさを望みます
しおりを挟む
『おかえりなさい、リリア様』
「お姉様っ、おかえりなさい!」
真っ白な空間に帰ってくると、リリアとスラリアが出迎えてくれる。
あのぅ、スラリア……?
出迎えの言葉は、私の胸に飛び込んできながら発言していてもおかしくない、そのぐらいに勢いあるものだった。
しかし実際の行動は、リリアの膝枕を堪能しすぎて離れられない、っていうように見えるんだけど?
私の視線に気付いたのか、横になったままのスラリアは弁解の言葉を述べはじめる。
「うぅ、お姉様、助けてください。女神様のお膝が気持ちよすぎるのです……!」
あなた、断腸の思い――スライムだから腸はなさそう――みたいな言い方しているけど。
膝枕をしているリリアが頭を撫でると、とろんと蕩けた顔になっているよね?
撫でるリリアもリリアで、まるで女神かのような優しい表情でスラリアの髪を手で梳く。
『リリア様、本日は武器を調達してきてはいかがでしょうか?』
あっ、スラリアを膝枕したまま会話を続けるのね。
それにしても、武器を調達ってどういうことだろう。
「……そこの尻軽スライム娘を、別の武器に変えるってこと?」
「ふぇっ!? お姉様ぁ、捨てないでぇぇぇ!」
私の言葉を聞いたスラリアは、慌てた様子で起き上がって一目散に縋りついてきた。
ほら、なんて軽いお尻なのかしら。
『ふふっ、違いますよ』
膝枕で乱れた装いを整えながら、立ち上がるリリア。
ひじょうに楽しげで、口元に手をやってくすくすと笑っている。
『テイマーでも、操る魔物とは別に武器を持つことが可能です』
「えっ、そうなの?」
それなら、魔物プラス武器で戦えば最強になれそうだけど。
どうして不人気ジョブなのだろうか。
『ただ、使用武器に登録することができないため、習熟度は上がりません』
それでも素手よりはいいでしょう、とリリアは教えてくれる。
なるほど、スラリアも習熟度の上昇に伴ってどんどん強くなっていった。
その恩恵が得られないのは、確かにマイナスが大きいのかもしれない。
「じゃあ、忘れずに武器を調達してくるね。ここに戻ってきたら戦闘訓練してもらってもいい?」
腰に組みつくスラリアの頭を撫でながら、私はリリアに聞く。
ドSモードのリリアとの戦闘訓練はかなり疲れるからね。
キツいことはさっさと終わらせるのが信条であるが、ドS訓練は話が別。
絶対に後の方が効率がいいはずだ。
『はい、もちろんです』
いまのリリアは、優しさで後光が差しているぐらいなのに。
ドSモードだと、眼光の鋭さで人が殺せそうなんだもん。
そんなことを考えて見つめていると、なぜかリリアは恥ずかしそうに顔を赤らめて俯く。
うーん、永遠に見ていられるけど、そろそろ行かなきゃ。
「よし、行ってくるね」
「行ってきまーす」
『あの、念のために確認させていただくのですが……』
手を振る私とスラリアに、リリアが言いにくそうに切り出す。
『スラリアちゃん、その姿のままですか?』
その問いに、私とスラリアは顔を見合わせた。
確かに、いまのスラリアの姿はかなり煽情的だ。
服を着ているとは言っても、ちょっと動いたら見えてしまうマイクロミニ丈のエプロンドレス。
それに中にスパッツなどを穿いていないから、もしかしたら私が着ていたときよりもえっちかもしれない。
「いくら元がスライムでも、近くで見ないとスライムだってわからないからね」
「えへへ、褒めてますか?」
私が頭を撫でると、スラリアは嬉しそうにはしゃぐ。
その拍子にドレスの裾が跳ねて、こんなちょっとの動きなのに、ひじょうに大胆に脚などなどが露わになる。
「……うん、この格好はえっちすぎる。別の服を買わないと」
このままでは、また掲示板が盛り上がってしまう。
どうせ、この服はセッチさんに返さなければならないのだ。
もう少しお淑やかな服を探すことにしよう。
『いえっ、えっと、ぇっちとか……そういうことではなく――その姿のスラリアちゃんを見たら、熟練のプレイヤーはなにかがあったことに気づくと思います』
リリアは顔を赤らめつつも、えっちな格好の話は受け流すことにしたようだ。
くそぅ、真面目な話に変えられてしまったら、どうしようもない。
「……同調のスキルを持っていることが、バレちゃうってこと?」
『運営から情報を出したことはないので、そのスキルの存在を知るのはリリア様だけです』
「じゃあ、別にいいんじゃない?」
スラリアの姿を見ただけで、同調のスキル効果までを看破できるとは思えないし。
もちろん、私もわざわざ言いふらす気はない。
『……私は、油断しているシキミ様に対して、同調のスキルを使用したリリア様が先手を取って勝利――という絵を思い描いていました』
リリアは喋りづらそうに、とつとつと言葉を紡いだ。
おそらく、運営の発言としては公平性に欠けるからだろうか。
「なるほど、確かに勝てる可能性は高くなりそう……」
シキミさんが油断してくれるかどうか、そこまではわからないけどね。
「リリアが私たちのこと考えてくれてて、嬉しい」
スラリアの手を引いて、いっしょにリリアの前に歩み寄る。
いえ、と小さくつぶやいて、リリアは俯いてしまう。
「でも、大丈夫。戦いになったら、私たちは正面から真っ直ぐぶつかる。その上で、シキミさんたちをぶっ飛ばすんだ」
「ぶっ飛ばしますっ」
私とスラリアは鏡のように、拳を掲げて宣言した。
勝手に油断されるならいいけど、こちらから油断を誘うのは違う気がするからね。
『……差し出がましいことを、申し訳ございません』
俯いたまま、リリアはさらに頭を下げてくる。
「ううんっ、リリアには、たくさん助けてもらってるんだから」
「女神様、謝らないでください」
私とスラリアは、それぞれがリリアの肩に手を置きながら言う。
しばらくして、ゆっくりと顔を上げたリリアは。
少し嬉しげに、そして困ったように微笑むのだった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【名前】リリア
【レベル】9
【ジョブ】テイマー
【使用武器】スライム:習熟度5
【ステータス】
物理攻撃:20 物理防御:40
魔力:35 敏捷:10 幸運:25
【スキル】スライム強化、なつき度強化、勇敢
知恵の泉、魅了、同調
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「お姉様っ、おかえりなさい!」
真っ白な空間に帰ってくると、リリアとスラリアが出迎えてくれる。
あのぅ、スラリア……?
出迎えの言葉は、私の胸に飛び込んできながら発言していてもおかしくない、そのぐらいに勢いあるものだった。
しかし実際の行動は、リリアの膝枕を堪能しすぎて離れられない、っていうように見えるんだけど?
私の視線に気付いたのか、横になったままのスラリアは弁解の言葉を述べはじめる。
「うぅ、お姉様、助けてください。女神様のお膝が気持ちよすぎるのです……!」
あなた、断腸の思い――スライムだから腸はなさそう――みたいな言い方しているけど。
膝枕をしているリリアが頭を撫でると、とろんと蕩けた顔になっているよね?
撫でるリリアもリリアで、まるで女神かのような優しい表情でスラリアの髪を手で梳く。
『リリア様、本日は武器を調達してきてはいかがでしょうか?』
あっ、スラリアを膝枕したまま会話を続けるのね。
それにしても、武器を調達ってどういうことだろう。
「……そこの尻軽スライム娘を、別の武器に変えるってこと?」
「ふぇっ!? お姉様ぁ、捨てないでぇぇぇ!」
私の言葉を聞いたスラリアは、慌てた様子で起き上がって一目散に縋りついてきた。
ほら、なんて軽いお尻なのかしら。
『ふふっ、違いますよ』
膝枕で乱れた装いを整えながら、立ち上がるリリア。
ひじょうに楽しげで、口元に手をやってくすくすと笑っている。
『テイマーでも、操る魔物とは別に武器を持つことが可能です』
「えっ、そうなの?」
それなら、魔物プラス武器で戦えば最強になれそうだけど。
どうして不人気ジョブなのだろうか。
『ただ、使用武器に登録することができないため、習熟度は上がりません』
それでも素手よりはいいでしょう、とリリアは教えてくれる。
なるほど、スラリアも習熟度の上昇に伴ってどんどん強くなっていった。
その恩恵が得られないのは、確かにマイナスが大きいのかもしれない。
「じゃあ、忘れずに武器を調達してくるね。ここに戻ってきたら戦闘訓練してもらってもいい?」
腰に組みつくスラリアの頭を撫でながら、私はリリアに聞く。
ドSモードのリリアとの戦闘訓練はかなり疲れるからね。
キツいことはさっさと終わらせるのが信条であるが、ドS訓練は話が別。
絶対に後の方が効率がいいはずだ。
『はい、もちろんです』
いまのリリアは、優しさで後光が差しているぐらいなのに。
ドSモードだと、眼光の鋭さで人が殺せそうなんだもん。
そんなことを考えて見つめていると、なぜかリリアは恥ずかしそうに顔を赤らめて俯く。
うーん、永遠に見ていられるけど、そろそろ行かなきゃ。
「よし、行ってくるね」
「行ってきまーす」
『あの、念のために確認させていただくのですが……』
手を振る私とスラリアに、リリアが言いにくそうに切り出す。
『スラリアちゃん、その姿のままですか?』
その問いに、私とスラリアは顔を見合わせた。
確かに、いまのスラリアの姿はかなり煽情的だ。
服を着ているとは言っても、ちょっと動いたら見えてしまうマイクロミニ丈のエプロンドレス。
それに中にスパッツなどを穿いていないから、もしかしたら私が着ていたときよりもえっちかもしれない。
「いくら元がスライムでも、近くで見ないとスライムだってわからないからね」
「えへへ、褒めてますか?」
私が頭を撫でると、スラリアは嬉しそうにはしゃぐ。
その拍子にドレスの裾が跳ねて、こんなちょっとの動きなのに、ひじょうに大胆に脚などなどが露わになる。
「……うん、この格好はえっちすぎる。別の服を買わないと」
このままでは、また掲示板が盛り上がってしまう。
どうせ、この服はセッチさんに返さなければならないのだ。
もう少しお淑やかな服を探すことにしよう。
『いえっ、えっと、ぇっちとか……そういうことではなく――その姿のスラリアちゃんを見たら、熟練のプレイヤーはなにかがあったことに気づくと思います』
リリアは顔を赤らめつつも、えっちな格好の話は受け流すことにしたようだ。
くそぅ、真面目な話に変えられてしまったら、どうしようもない。
「……同調のスキルを持っていることが、バレちゃうってこと?」
『運営から情報を出したことはないので、そのスキルの存在を知るのはリリア様だけです』
「じゃあ、別にいいんじゃない?」
スラリアの姿を見ただけで、同調のスキル効果までを看破できるとは思えないし。
もちろん、私もわざわざ言いふらす気はない。
『……私は、油断しているシキミ様に対して、同調のスキルを使用したリリア様が先手を取って勝利――という絵を思い描いていました』
リリアは喋りづらそうに、とつとつと言葉を紡いだ。
おそらく、運営の発言としては公平性に欠けるからだろうか。
「なるほど、確かに勝てる可能性は高くなりそう……」
シキミさんが油断してくれるかどうか、そこまではわからないけどね。
「リリアが私たちのこと考えてくれてて、嬉しい」
スラリアの手を引いて、いっしょにリリアの前に歩み寄る。
いえ、と小さくつぶやいて、リリアは俯いてしまう。
「でも、大丈夫。戦いになったら、私たちは正面から真っ直ぐぶつかる。その上で、シキミさんたちをぶっ飛ばすんだ」
「ぶっ飛ばしますっ」
私とスラリアは鏡のように、拳を掲げて宣言した。
勝手に油断されるならいいけど、こちらから油断を誘うのは違う気がするからね。
『……差し出がましいことを、申し訳ございません』
俯いたまま、リリアはさらに頭を下げてくる。
「ううんっ、リリアには、たくさん助けてもらってるんだから」
「女神様、謝らないでください」
私とスラリアは、それぞれがリリアの肩に手を置きながら言う。
しばらくして、ゆっくりと顔を上げたリリアは。
少し嬉しげに、そして困ったように微笑むのだった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【名前】リリア
【レベル】9
【ジョブ】テイマー
【使用武器】スライム:習熟度5
【ステータス】
物理攻撃:20 物理防御:40
魔力:35 敏捷:10 幸運:25
【スキル】スライム強化、なつき度強化、勇敢
知恵の泉、魅了、同調
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
0
お気に入りに追加
162
あなたにおすすめの小説
魔王が営む神秘の洞窟と温泉郷~スライムの大行進~
鷲原ほの
ファンタジー
異世界ファングランドのライハンス大陸では桃源郷の噂話が流れている。
それは、小さな世界の創造主としてダンジョンを自分好みに増改築する
オニキス・サクラが仲良しスライム達を巻き込み奔走する異世界冒険譚。
まったりするため薬効温泉を選んだところから箱庭の娯楽は動き出す。
Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷
くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。
怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。
最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。
その要因は手に持つ箱。
ゲーム、Anotherfantasia
体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。
「このゲームがなんぼのもんよ!!!」
怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。
「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」
ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。
それは、翠の想像を上回った。
「これが………ゲーム………?」
現実離れした世界観。
でも、確かに感じるのは現実だった。
初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。
楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。
【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】
翠は、柔らかく笑うのだった。
Reboot ~AIに管理を任せたVRMMOが反旗を翻したので運営と力を合わせて攻略します~
霧氷こあ
SF
フルダイブMMORPGのクローズドβテストに参加した三人が、システム統括のAI『アイリス』によって閉じ込められた。
それを助けるためログインしたクロノスだったが、アイリスの妨害によりレベル1に……!?
見兼ねたシステム設計者で運営である『イヴ』がハイエルフの姿を借りて仮想空間に入り込む。だがそこはすでに、AIが統治する恐ろしくも残酷な世界だった。
「ここは現実であって、現実ではないの」
自我を持ち始めた混沌とした世界、乖離していく紅の世界。相反する二つを結ぶ少年と少女を描いたSFファンタジー。
サモナーって不遇職らしいね
7576
SF
世はフルダイブ時代。
人類は労働から解放され日々仮想世界で遊び暮らす理想郷、そんな時代を生きる男は今日も今日とて遊んで暮らす。
男が選んだゲームは『グラディウスマギカ』
ワールドシミュレータとも呼ばれるほど高性能なAIと広大な剣と魔法のファンタジー世界で、より強くなれる装備を求めて冒険するMMORPGゲームだ。
そんな世界で厨二感マシマシの堕天使ネクアムとなって男はのんびりサモナー生活だ。
神様のミスで女に転生したようです
結城はる
ファンタジー
34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。
いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。
目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。
美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい
死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。
気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。
ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。
え……。
神様、私女になってるんですけどーーーー!!!
小説家になろうでも掲載しています。
URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」
沢山寝たい少女のVRMMORPG〜武器と防具は枕とパジャマ?!〜
雪雪ノ雪
ファンタジー
世界初のフルダイブ型のVRゲーム『Second World Online』通称SWO。
剣と魔法の世界で冒険をするVRMMORPGだ。
このゲームの1番の特徴は『ゲーム内での3時間は現実世界の1時間である』というもの。
これを知った少女、明日香 睡月(あすか すいげつ)は
「このゲームをやれば沢山寝れる!!」
と言いこのゲームを始める。
ゲームを始めてすぐ、ある問題点に気づく。
「お金がないと、宿に泊まれない!!ベットで寝れない!!....敷布団でもいいけど」
何とかお金を稼ぐ方法を考えた明日香がとった行動は
「そうだ!!寝ながら戦えばお金も経験値も入って一石三鳥!!」
武器は枕で防具はパジャマ!!少女のVRMMORPGの旅が今始まる!!
..........寝ながら。
春空VRオンライン ~島から出ない採取生産職ののんびり体験記~
滝川 海老郎
SF
新作のフルダイブVRMMOが発売になる。 最初の舞台は「チュートリ島」という小島で正式リリースまではこの島で過ごすことになっていた。
島で釣りをしたり、スライム狩りをしたり、探険したり、干物のアルバイトをしたり、宝探しトレジャーハントをしたり、のんびり、のほほんと、過ごしていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる