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Tale19:三人イコールは姦しいでしょうか
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目の前で、リリアがリリアを支えるように抱いている。
それを見ている私も、リリアなんだけどね。
「んぁ……?」
びっくりしてフリーズしていた脳の処理機能が、徐々に回復してきた。
片方のリリアは、ドS戦闘サポートNPC女神のリリアだろう。
もう片方のリリアを支えてあげているようだが、なぜか顔を真っ赤にしている。
支えられている方のリリアは……えっと、服を着ていない。
もろに言うのであれば、もろ出しのすっぽんぽーんであった。
その子のリリアな横顔から視線を下ろしていくと、滑らかそうな背中、そして小ぶりだが艶やかなお尻に、曲線美のある腿のライン。
あれ……?
よく目を凝らすと、人間のわりには肌が青く透き通っていて……って、スラリアじゃない!?
いやに透明感のある綺麗な肌だと思ったら、スライムなんだもんっ、当たり前じゃん!
「ぁむ……?」
おそらくリリアバージョンの形態を取っているスラリアが、寝起きのような声を上げた。
『ス、スラリアちゃん? とりあえず、服を着ようか』
顔を赤くしているリリアが、スラリアと声をかけた。
そうなんだ、やっぱりスラリアなのか。
デフォルメわんこの丸っこさから考えると、こんなに複雑に変身できるようになったなんてすごい進化だ。
「あっ、女神様! おはよーございますっ」
『う、うん。おはよう』
なるべくスラリアの方を見ないようにしながら、リリアは、あいさつを返す。
そんなに恥ずかしいものかね、自分の裸なのに。
ん? 自分の裸なのに、恥ずかしい……?
スラリアが真似しているのは、リリアの身体?
「あっ、お姉様は?」
そう言って、きょろきょろと辺りを見渡したスラリアは、私と目が合う。
瞳の色は、リリアと同じ深い海の青だ。
もともとの色が近いと似せやすいのだろうか。
「――っお姉様!」
リリアから離れて、スラリアは私に向かってくる。
スライムであるこの子には、恥じらいという感情がないみたいだ。
「ちょっ、ちょっと……! あなた、前を隠しなさいよっ」
幸いなことに、ゲームの仕様なのだろうか、いろいろな凹凸は精密に表現されてはいなかった。
リリアのしっとりとした髪の一本一本が忠実に再現――金色ではなくスラリアの青色だが――されているから、できるはずではあるのだが。
しかし、いくらマネキンのような裸体とはいっても、えっちなものはえっちだ。
「どうしてですか? お姉様の美しい身体は、隠すものではありませんっ」
目に余ることを言いながら、私にぎゅっと抱きついてくるスラリア。
ぷにぷにな感触と、微かな温かさが伝わってくる。
「やっぱり! これ、私の身体じゃないの!」
どおりで抱きつかれやすいと思ったよ、ちくしょう!
リリアの身体だったら、邪魔な脂肪がつっかかるもんね!
「そうですよ? 同調したことによってお姉様の隅々まで知ることができたので、真似られるようになりました」
スラリアは、私の胸に頬擦りしながら得意そうだ。
うん、すごく偉い。
私だって、よしよしなでなでしてあげたいよ?
ちゃんと人間の言葉を喋られるようになったのも素敵だし。
でも、あなたが裸だと、人間の私は恥ずかしいんだよ。
『リリア様、スラリアちゃんに服を……』
こちらをちらちらと見ながら、リリアが懇願するように言ってきた。
サポートNPCでも、スラリアにぱっと服を着せることはできないらしい。
「あぁもう、スラリアっ、とりあえずスライム形態に戻って?」
「あの姿に戻ったら、もう一度同調しないと完璧なお姉様になれないから嫌でーすっ」
一瞬で反抗期を迎えていたスラリア。
いったい、どこで育て方を間違えたのだろうか。
「じゃあ、せめて服を着なさいっ」
離そうとしないスラリアを引き剥がして、アイテムポーチを探る。
そして、セッチさんのお店からパクっていた給仕服を取り出した。
いや、ちゃんと返しに行くつもりだったのよ?
シキミさんにPKされたからタイミングを逃しただけだし。
「お姉様が着ていた服、ですか……? うーん、まあ、それならいいでしょう」
なぜか鷹揚に頷いて、スラリアは服を着てくれたのだった。
この後、ドSリリアとの戦闘訓練の疲れも相まってもうログアウトするという私と、やだやだ絶対帰らないでというスラリアの間で、ひと悶着どころかろく悶着ぐらいあったのだが。
それは傍から見たらただの痴話げんかだったし、リリアはリリアで温かく見守ってるだけだったし……もういい、恥ずかしいから終わりっ!
ちなみに、いままでログアウト間際のスラリアがドライだったのは、寂しさの裏返しだったらしい。
うん、可愛いやつだな。
それを見ている私も、リリアなんだけどね。
「んぁ……?」
びっくりしてフリーズしていた脳の処理機能が、徐々に回復してきた。
片方のリリアは、ドS戦闘サポートNPC女神のリリアだろう。
もう片方のリリアを支えてあげているようだが、なぜか顔を真っ赤にしている。
支えられている方のリリアは……えっと、服を着ていない。
もろに言うのであれば、もろ出しのすっぽんぽーんであった。
その子のリリアな横顔から視線を下ろしていくと、滑らかそうな背中、そして小ぶりだが艶やかなお尻に、曲線美のある腿のライン。
あれ……?
よく目を凝らすと、人間のわりには肌が青く透き通っていて……って、スラリアじゃない!?
いやに透明感のある綺麗な肌だと思ったら、スライムなんだもんっ、当たり前じゃん!
「ぁむ……?」
おそらくリリアバージョンの形態を取っているスラリアが、寝起きのような声を上げた。
『ス、スラリアちゃん? とりあえず、服を着ようか』
顔を赤くしているリリアが、スラリアと声をかけた。
そうなんだ、やっぱりスラリアなのか。
デフォルメわんこの丸っこさから考えると、こんなに複雑に変身できるようになったなんてすごい進化だ。
「あっ、女神様! おはよーございますっ」
『う、うん。おはよう』
なるべくスラリアの方を見ないようにしながら、リリアは、あいさつを返す。
そんなに恥ずかしいものかね、自分の裸なのに。
ん? 自分の裸なのに、恥ずかしい……?
スラリアが真似しているのは、リリアの身体?
「あっ、お姉様は?」
そう言って、きょろきょろと辺りを見渡したスラリアは、私と目が合う。
瞳の色は、リリアと同じ深い海の青だ。
もともとの色が近いと似せやすいのだろうか。
「――っお姉様!」
リリアから離れて、スラリアは私に向かってくる。
スライムであるこの子には、恥じらいという感情がないみたいだ。
「ちょっ、ちょっと……! あなた、前を隠しなさいよっ」
幸いなことに、ゲームの仕様なのだろうか、いろいろな凹凸は精密に表現されてはいなかった。
リリアのしっとりとした髪の一本一本が忠実に再現――金色ではなくスラリアの青色だが――されているから、できるはずではあるのだが。
しかし、いくらマネキンのような裸体とはいっても、えっちなものはえっちだ。
「どうしてですか? お姉様の美しい身体は、隠すものではありませんっ」
目に余ることを言いながら、私にぎゅっと抱きついてくるスラリア。
ぷにぷにな感触と、微かな温かさが伝わってくる。
「やっぱり! これ、私の身体じゃないの!」
どおりで抱きつかれやすいと思ったよ、ちくしょう!
リリアの身体だったら、邪魔な脂肪がつっかかるもんね!
「そうですよ? 同調したことによってお姉様の隅々まで知ることができたので、真似られるようになりました」
スラリアは、私の胸に頬擦りしながら得意そうだ。
うん、すごく偉い。
私だって、よしよしなでなでしてあげたいよ?
ちゃんと人間の言葉を喋られるようになったのも素敵だし。
でも、あなたが裸だと、人間の私は恥ずかしいんだよ。
『リリア様、スラリアちゃんに服を……』
こちらをちらちらと見ながら、リリアが懇願するように言ってきた。
サポートNPCでも、スラリアにぱっと服を着せることはできないらしい。
「あぁもう、スラリアっ、とりあえずスライム形態に戻って?」
「あの姿に戻ったら、もう一度同調しないと完璧なお姉様になれないから嫌でーすっ」
一瞬で反抗期を迎えていたスラリア。
いったい、どこで育て方を間違えたのだろうか。
「じゃあ、せめて服を着なさいっ」
離そうとしないスラリアを引き剥がして、アイテムポーチを探る。
そして、セッチさんのお店からパクっていた給仕服を取り出した。
いや、ちゃんと返しに行くつもりだったのよ?
シキミさんにPKされたからタイミングを逃しただけだし。
「お姉様が着ていた服、ですか……? うーん、まあ、それならいいでしょう」
なぜか鷹揚に頷いて、スラリアは服を着てくれたのだった。
この後、ドSリリアとの戦闘訓練の疲れも相まってもうログアウトするという私と、やだやだ絶対帰らないでというスラリアの間で、ひと悶着どころかろく悶着ぐらいあったのだが。
それは傍から見たらただの痴話げんかだったし、リリアはリリアで温かく見守ってるだけだったし……もういい、恥ずかしいから終わりっ!
ちなみに、いままでログアウト間際のスラリアがドライだったのは、寂しさの裏返しだったらしい。
うん、可愛いやつだな。
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