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Tale11:女神にできることは少ないのです

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『おかえりなさい、リリア様』

「ぷにゅにゅー」

 リリアと、その胸に抱かれるスラリアが、白い空間に降り立った私を出迎える。

 この前の最後にからかわれたから、開始フェイズをスキップしてやろうかしら。
 そんな考えが一瞬だけ頭を過ぎったが、私は大人なので当てつけのようなことはしないのだ。

『ふふっ、その可愛らしい装備ですが、いつもの装備に替えていきますか?』

 リリアの言葉を聞いて自分の身体を見下ろすと、赤いスカーフが視界に入る。

「ぅにゃっ!?」

 脚がスースーしてしょうがない、マイクロミニ丈ハレンチ給仕服を身に着けたままだった。
 確かに、この格好でゲームを出たから当たり前のことではあったのだが。

「そっ……そうね、着替えていこうかな」
 
『はい、かしこまりました――えいっ』

 顔の熱さを自覚していたが、できるだけ平静を装うとした。
 それをくすくす笑いながら、リリアはかけ声とともに私を指して装備を替える。
 革手袋に編み込みブーツ、白シャツ、黒ショートパンツのいつものスタイルだ。

 うーん……この装備でもそこそこ脚は出ているのだけれど。
 さっきと違って恥ずかしくないのは、どうしてだろうか。

『さて、リリア様』

 リリアが手を離すと、スラリアはぷにょんと跳ねて私の胸に収まる。
 ふんっ、収まりやすくてごめんなさいね。

『どうでしょう、気分転換に違う街に行ってみませんか?』

「違う街?」

「ぷにゅにゅ?」

『ええ、どうやらお恥ずかしいこともあったようですし、それを忘れるという意味合いも兼ねて』

 リリアがおちょくってこなければ、恥ずかしさは半減していたのだけど。
 いや、リリアが掲示板のことを言わなければ、弟の莉央りおが私のお尻――スパッツは穿いていたけれど――画像を見ていたかもしれないのか。

『冒険者ギルドなどのメイン建造物の位置、街の構造に大きな違いはありません。ただ、建物の装飾は異なっているので、新しい街並みを楽しめると思いますよ』

 なるほど、いつもの街はカラフルな煉瓦造りの建造物が多い。
 他の街がどうなっているのか、確かに気になるかも。

「でも、街の人たちは違うんだよね?」

「ぷにゅ?」

 私の問いかけに、一瞬だけリリアの微笑みが硬くなった――ような気がした。

『はい、現実と同じように、街に生きるNPCたちは全て違います』
 
 リリアは、いつもの女神な笑みで答える。
 なんだろ……さっきのは気のせい、だよね。

「じゃあ、今日はいつもの街に行こうかな」

 オージちゃんは私が行かないと寂しがるだろうし、ミリナちゃんの勉強も見てあげたいし。
 忘れたい思い出だから、セッチさんに給仕服を返すのも忘れないようにしないと。

『……かしこまりました』

「あっ、違う街には行ってみたいから。今度ね、今度」

「ぷにゅぷにゅ」

 頭を下げるリリアに、私は明るく話しかける。
 なんだか、余計なことを言ってしまったと感じていそうだったから。

『ええ、そのときはご案内させてくださいね』

 顔を上げたリリアは、嬉しそうに微笑んだ。
 気にしていなさそうでよかった。

『では、いつもの街にお送りします』

「うん、また後でね」

「ぷにゅにゅー」

 私とスラリアが手を振ると、リリアは穏やかな笑みを返してきた。
 あっ、一応言っておくと、スラリアには手がないから手を振るようにぷにっただけだからね。

『あなたの物語、その強さを信じます……気をつけて――』

 ふわっと浮かび上がる私の耳に、リリアが祈るように紡いだ言葉が。

 気をつける……? なにに?
 疑問を持ったけれど、すでに私の眼前には、たくさんの人通り。

「なんだったんだろ……まあ、いいか。行こう、スラリア」

「ぷにゅ!」

 私は、抱きかかえるスラリアのやる気ぷにぷに具合に苦笑して。
 オージちゃんのいる、いつもの冒険者ギルドに足を向けるのだった。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【名前】リリア
【レベル】9
【ジョブ】テイマー
【使用武器】スライム:習熟度4

【ステータス】
物理攻撃:20 物理防御:40 
魔力:35 敏捷:10 幸運:25
【スキル】スライム強化、なつき度強化、勇敢
知恵の泉、魅了
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