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Tale5:仮想と現実の橋渡しをしましょう
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農場での魔物退治を終えて。
そこから、まだ時間があったので、私とスラリアはもうひとつ依頼を行うことにした。
「お姉ちゃん、これで合ってる?」
「おー、正解。ミリナちゃん、あたま良きだねー」
よき? と女の子が首を傾げる。
女の子の後ろで、スラリアも真似するようにぷにゅっているのが目についた。
冒険者ギルドに寄せられる依頼には、冒険っぽくないものも含まれている。
その中のひとつ『娘の勉強を見てください』を受けてみることにした。
この街には学校というものがなく、代わりに神殿が教育を行う役割を担っている。
しかし、農作業とかで忙しい子どもは、神殿に行く時間を確保できないことも多いらしい。
「円すいって、なーに?」
ミリナちゃんは、神殿に行くことができていない農家の娘だ。
でも、配布されている教科書を使ってまじめに勉強をしている。
ふわふわな癖っ毛が可愛い、10歳ぐらいの女の子だ。
「スラリア、円すいになってくれる?」
「ぷにゅっ」
ぷにゅぷにゅぷにゅ、とスラリアが形を変える。
勉強を始めてから一時間ぐらい経つけれど、ミリナちゃんは集中が切れる様子もなくがんばっていた。
「これが円すい、底の面が円形なんだね」
スラリアを両手で抱え上げて、ミリナちゃんに見せた。
ちょっと角が丸いけれど、まあ、問題はないだろう。
「ほほー、なんかお野菜みたいだね」
「あー、確かに……?」
なんだろう、玉ねぎとかかな。
どちらかと言えばイチゴっぽいけど。
スラリアの色が青いから、食べ物で想像しづらい。
「じゃあ、円すいを展開すると、どうなるのー?」
「展開図の問題ね。よし、スラリア、展開して」
「ぷにゅにゅにゅ!?」
こんな感じで、『テイルズ・オンライン』の世界では、あらゆる物語を紡ぐ用意がされているようだ。
まさか、学校の先生になるという現実世界での私の夢、その練習がゲーム内でもできるとは思わなかった。
最近のゲームってのは、本当にすごいのね。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「お姉ちゃん、また来てねっ」
嬉しいことに、ミリナちゃんは私に懐いてくれた。
元気よく振られた手に、私も半分ぐらいの元気を乗せて返す。
「ぷにゅっにゅにゅー」
スラリアが残りの半分を担っているから、ちょうどいいだろう。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【スキル】知恵の泉を取得しました!
思考速度を零程度だけ増加します。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
郊外のミリナちゃんの家から、街の冒険者ギルドへの道すがら。
さっき獲得した、知恵の泉のスキル効果を確認する。
「思考が速くなる……うーん、なにかが変わった感覚はないなぁ」
「ぷにゅにゅぅ?」
頭の中で素数を並べてみたけれど、いつもより速かった気もするし、そうでないような気もする。
「まあ、零程度って書いてあるし、こんなものなのかも」
「ぷにゅぷにゅ」
ふりがなが振られていないけど、零ということはないと思う。
スキルの意味がなくなっちゃうからね。
「オージちゃんのところに依頼の達成報告に行ったら、今日は終わりかな」
「ぷにゅにゅー」
「いや、ギルドに行ってから終わり、だからね? まだ帰らないからね?」
相変わらず、去り際になるとなんだかドライなスラリア。
ちょっと寂しいから余計にぷにぷにしながら、私はのどかな街道を歩いて行った。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【名前】リリア
【レベル】4
【ジョブ】テイマー
【使用武器】スライム:習熟度3
【ステータス】
物理攻撃:10 物理防御:25
魔力:25 敏捷:5 幸運:15
【スキル】スライム強化、なつき度強化、勇敢
知恵の泉
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そこから、まだ時間があったので、私とスラリアはもうひとつ依頼を行うことにした。
「お姉ちゃん、これで合ってる?」
「おー、正解。ミリナちゃん、あたま良きだねー」
よき? と女の子が首を傾げる。
女の子の後ろで、スラリアも真似するようにぷにゅっているのが目についた。
冒険者ギルドに寄せられる依頼には、冒険っぽくないものも含まれている。
その中のひとつ『娘の勉強を見てください』を受けてみることにした。
この街には学校というものがなく、代わりに神殿が教育を行う役割を担っている。
しかし、農作業とかで忙しい子どもは、神殿に行く時間を確保できないことも多いらしい。
「円すいって、なーに?」
ミリナちゃんは、神殿に行くことができていない農家の娘だ。
でも、配布されている教科書を使ってまじめに勉強をしている。
ふわふわな癖っ毛が可愛い、10歳ぐらいの女の子だ。
「スラリア、円すいになってくれる?」
「ぷにゅっ」
ぷにゅぷにゅぷにゅ、とスラリアが形を変える。
勉強を始めてから一時間ぐらい経つけれど、ミリナちゃんは集中が切れる様子もなくがんばっていた。
「これが円すい、底の面が円形なんだね」
スラリアを両手で抱え上げて、ミリナちゃんに見せた。
ちょっと角が丸いけれど、まあ、問題はないだろう。
「ほほー、なんかお野菜みたいだね」
「あー、確かに……?」
なんだろう、玉ねぎとかかな。
どちらかと言えばイチゴっぽいけど。
スラリアの色が青いから、食べ物で想像しづらい。
「じゃあ、円すいを展開すると、どうなるのー?」
「展開図の問題ね。よし、スラリア、展開して」
「ぷにゅにゅにゅ!?」
こんな感じで、『テイルズ・オンライン』の世界では、あらゆる物語を紡ぐ用意がされているようだ。
まさか、学校の先生になるという現実世界での私の夢、その練習がゲーム内でもできるとは思わなかった。
最近のゲームってのは、本当にすごいのね。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「お姉ちゃん、また来てねっ」
嬉しいことに、ミリナちゃんは私に懐いてくれた。
元気よく振られた手に、私も半分ぐらいの元気を乗せて返す。
「ぷにゅっにゅにゅー」
スラリアが残りの半分を担っているから、ちょうどいいだろう。
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【スキル】知恵の泉を取得しました!
思考速度を零程度だけ増加します。
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郊外のミリナちゃんの家から、街の冒険者ギルドへの道すがら。
さっき獲得した、知恵の泉のスキル効果を確認する。
「思考が速くなる……うーん、なにかが変わった感覚はないなぁ」
「ぷにゅにゅぅ?」
頭の中で素数を並べてみたけれど、いつもより速かった気もするし、そうでないような気もする。
「まあ、零程度って書いてあるし、こんなものなのかも」
「ぷにゅぷにゅ」
ふりがなが振られていないけど、零ということはないと思う。
スキルの意味がなくなっちゃうからね。
「オージちゃんのところに依頼の達成報告に行ったら、今日は終わりかな」
「ぷにゅにゅー」
「いや、ギルドに行ってから終わり、だからね? まだ帰らないからね?」
相変わらず、去り際になるとなんだかドライなスラリア。
ちょっと寂しいから余計にぷにぷにしながら、私はのどかな街道を歩いて行った。
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【名前】リリア
【レベル】4
【ジョブ】テイマー
【使用武器】スライム:習熟度3
【ステータス】
物理攻撃:10 物理防御:25
魔力:25 敏捷:5 幸運:15
【スキル】スライム強化、なつき度強化、勇敢
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