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第一話 ラベンダー畑にて
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ある日の酒場にて竜狩人のジークはドラゴン駆除の依頼で埋め尽くされている依頼板を眺めていた。その中でも手軽に出来そうなものを引き受ける。
「あらジーク君、また竜狩りに行くの?単独で行くなら遭難には気を付けなさいよー」
受付嬢が話しかけてきたが、ジークはそれを聞き流した。その警告通りになるなんて、この時は思ってもいなかったからである。
「ハハ…まさか遭難しちまうとはなぁ…」
暗い森の中、ジークは脚を引きずっていた。ワイバーンを追っている時に、崖から転がり落ちていたのだ。そのうえゴブリンの集団に囲まれてしまい、なんとか倒せたものの疲弊していた。意識がクラリと霞みその場に倒れ込む。
そんなジークを冷たい満月は照らしていた。
* * *
ジークが目を覚ますとそこは見知らぬ家の中だった。戸惑うジークに少女は優しく声をかける。
「ここ、は…」
「気が付きましたか?…家主が森で貴方を助けたんですよ」
メリューと名乗った少女はそう言って微笑んだ。
「そうだったのか…すまない礼を言う。ところでその家主は一体どこに…」
「家主なら庭でお茶を飲んでいますよ」
この家には庭があるのかと窓の外を見たが、外は依然として月が昇っている。不思議に思いながらもジークが庭に出ると──
そこには大きな空色のドラゴンが一匹、一面のラベンダー畑で紅茶を飲んでいた。
「あらジーク君、また竜狩りに行くの?単独で行くなら遭難には気を付けなさいよー」
受付嬢が話しかけてきたが、ジークはそれを聞き流した。その警告通りになるなんて、この時は思ってもいなかったからである。
「ハハ…まさか遭難しちまうとはなぁ…」
暗い森の中、ジークは脚を引きずっていた。ワイバーンを追っている時に、崖から転がり落ちていたのだ。そのうえゴブリンの集団に囲まれてしまい、なんとか倒せたものの疲弊していた。意識がクラリと霞みその場に倒れ込む。
そんなジークを冷たい満月は照らしていた。
* * *
ジークが目を覚ますとそこは見知らぬ家の中だった。戸惑うジークに少女は優しく声をかける。
「ここ、は…」
「気が付きましたか?…家主が森で貴方を助けたんですよ」
メリューと名乗った少女はそう言って微笑んだ。
「そうだったのか…すまない礼を言う。ところでその家主は一体どこに…」
「家主なら庭でお茶を飲んでいますよ」
この家には庭があるのかと窓の外を見たが、外は依然として月が昇っている。不思議に思いながらもジークが庭に出ると──
そこには大きな空色のドラゴンが一匹、一面のラベンダー畑で紅茶を飲んでいた。
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