月白色の叙情詩~銀礫の魔女が綴るもの~

羽月明香

文字の大きさ
上 下
162 / 214
【第三晶~理に背きし者等の彷徨~】

17 ルキフェルの視点

しおりを挟む
 セバスチャンにクズ魔石と鉱石をあるだけ運んでもらうことに。
 今は夜なので追加でいるなら明日にならないとダメだって言うので市場荒らさない程度に仕入れてほしいとお願いした。

 クズ魔石を溶かして魔力を通して、魔導インクを大量に作って、板状の鋼板に魔法陣を書き込んでいく。
 ほんの少しの魔力を入れれば何日かは暖かさが持つはず。
 長く持たせるならもう少し装置を複雑にしないとだけど緊急事態なので許してほしい。
 
 火の魔石を魔法陣の上に置けば威力が増すから室内ならだいぶ良い。

 あとはカイロもどきを一気に量産して。

 ふと気付いてしまった。私が休まないとニーナたちが休めない。

「ニーナ、アラン、ジェイク、明日も大変だろうから休んできて?私もこれが済んだら寝るから」

「みんなが動いてるんで気になさらなくて良いんですよ。リーシャさまはお身体にためにそれが済んだら絶対おしまいですからね」

 のぉ。念押しされちゃった。

「はぁい」

 ニーナに逆らったらダメ。なのでしおらしくしておきます。

 病人がたくさんなので空気清浄機を作っておきたいの。〈洗浄〉〈清浄〉でわりとなんとかなるだろうけど大広間全体は流石に普通の魔力じゃ厳しいはず。

 ウィルスはなくても綺麗な空気の方が衰弱してるなら安心だろうし。

 風魔法と聖魔法の魔法術式を組み込んで鋼板に魔法陣を書き込んで空調っぽい動作ができるように設計。
 流石に大部屋の分だけ大型五台にしておいた。

 アランとジェイクがマジックバッグに入れて運んでくれるので、私も動作確認がしたいので一緒に向かった。

 未だ新たに運ばれてきてるので一向に休まらないだろうなって状態。

 壁沿いに空気清浄機をセットしていきスイッチを入れれば、ちゃんと稼働したので安心。

 寒さに震えてるような人は居なさそうなので循環させるだけで良いかな。

 ちょうどセバスチャンと遭遇したので、カイロもどきとヒーターがわりの鋼板を渡した。

「あれから数時間でこんなに!?体調は!?」
 肩をガシッとされたので「大丈夫だから早くホーンに配ってあげて」って言って逃げた。

 大きな声が聞こえたのでそっちを覗くとまさに出産中なお部屋ならしい。
 マギー先生のドスの聞いた応援?が迫力だ。
 覗くわけにもいかず「無事に生まれて」ってお祈りして離れる。
 お義母さまが侍女長さんと廊下を早足で歩いていたのでお声を掛けると、
「あら、リーシャちゃん、寝てなくても大丈夫?」
 と心配気に頭を撫でられる。未だに栄養失調な私が目に浮かんでるんだろうな。
「はい、お義母さま。私にも何か出来ますか?」
 お義母さまも少し疲労の色が出てるので早く休んでほしいけど、使用人のみんながフル稼働だからそうも言ってられない。

「そうねぇ、多分最低でも一週間はこの状態になるだろうから交代で休まないとなのよねぇ」
 まぁ吹雪が済むまでとその後の生活の立て直しもあるだろうしすぐには帰せないよね。

「明日にはアンゼリカちゃんたちも来てくれるだろうから休むのはそれからにして今は滋養にいい食べ物をルルゥと相談してくれないかしらぁ?」

 私がお役に立ちたい気持ちを汲んでくれてる気がする。

「でもいっぱい魔力を使ったと聞いたわよぉ~?無理だけはしないでねぇ?」

 ぎゅむっとハグをしてくれてお義母さまは別にお部屋に様子を見に行った。

「ニーナ、無理はしないから厨房に行こう」

 流石にこの状況で寝ろとは言えないらしく超渋い顔で一緒に厨房に向かってもらう。

 お肌ツルツルを喜んでたのが嘘みたいな急展開で、今度は目にクマーを飼う話になりそう。

「あら、リーシャちゃん、ちょうど良かったわ。味見てちょうだい」

 渡されたお椀には甘酒の香りがする穀類がトロトロになったスープ。

「ちょっと甘くなっちゃった気がするのよ?」
「ん、優しい味だし、身体がほかほかになりそうだから良いと思うよ。大人にはちょっとこれを混ぜてみたらどうかな」
 
 私は棚に置いてある生姜の塊を指差した。

「ああ~これは良さそうね」

 あとはたまご粥と味噌をミルクに溶かしてスープにしたのを提案してみた。
 お野菜は全部微塵切り。比較的調子がよさそうなら大きい具とお肉も入れて。

 妊婦さんには湯豆腐や豆腐スープも良いかも?メグミもリーシャも経験がないから臨月の人が何食べたいかわかんないなぁ。とにかく寒さにやられた後だから温かいものを!

 鶏白湯がいいなって思いついて、私は邪魔にならないところで若いコックさんを捕まえて鳥の骨の処理を手伝ってもらう。

 アランとジェイクにはしばらくここにいるから交代で仮眠を取るように伝えた。
 最初は渋っていたけど長丁場なので納得してくれた。コックさんたちの仮眠室を使わせてもらうそうだ。
 ニーナにも言ったんだけど、私と一緒にって言われちゃった。

 魔導コンロだと火力が弱いけどとりあえずやってみる。
 骨と野菜と薬草と漢方系の実を一緒に煮込んで薬膳スープにすることにした。

「向こうのコンロ使ってもいいんじゃないですか?」
 コックさんが言ってくれたけど全部フル稼働だから無理に割り込まなくても良い。順番に仕上がって出していけば。

 スープは煮込むのに時間が掛かるから、合間にミートボールを作ることに。ミンチ肉なら消化もいいし食べやすいはず。

 コックさんたちが使ってくれないミンサーに貯蔵室から運んでもらった魔獣肉を入れまくる。
 ハーブと塩胡椒で味付けをしてだんご状にしていくのをコックさんたちが手伝ってくれた。
 こっちのは鳥でこっちは・・・蛇かも!?んであれはオークだっけ。色合いの違いで多少わかるようになった。

 忙しく働いてくれてるうちの人たちにも力付けてもらわないとだからいっぱいミンチにしちゃうんだ。

 ポムたちがなぜが慌ただしくあっちこっちに動き回ってるけど何してるんだろう?







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

処理中です...