【完結】白い結婚で生まれた私は王族にはなりません〜光の精霊王と予言の王女〜

白崎りか

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第2部 魔法学校編

69 エピローグ〜勇者〜

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 いい人生だったな。

 まぶたの裏に浮かぶ人たちに、心の中で別れの挨拶をする。
 長く使った肉体は、もう、動かすこともできない。

 104歳か。長生きしたな。

 怒涛の人生を思い出す。普通の子供だった自分が、まさか過去で活躍するとは……。楽しい日々だった。

 寝台を囲む家族たちの声が聞こえる。愛する子供たち、孫たち、ひ孫たち、そしてひ孫の子供たち。
 全員自分と同じ黒髪黒目だ。この子たちの子孫が、500年続いて、そして黒髪黒目のオスカー君が生まれる。

 ああ、それは楽しみだ。
 そして、彼らは出会う。かけがえのない時間をともに過ごすんだ。

 姉さまはちゃんと僕の遺産を見つけてくれるだろうか?
 ダンジョン作りを、リシアが手伝ってくれたけれど、頂上までたどりつけたかな?
 聖の魔力を増やすには、体力と知力が必要だってリシアが言うから、姉さまでも修行できるように、ダンジョンを作ったんだよ。

 姉さまはサボり癖があるからな。まじめに取り組んだかな?

 それでも、本当に、姉さまの弟でよかった。

 姉さまをちゃんと未来に誕生させるために、王家に予言を残したり、書きつけを残したり、いろいろ大変だったんだよ。過去が変わったら未来が変わるって、リシアが言うから……。


 目を開けると、枕元に光の精霊王が座り込んでいた。寂しい目をした精霊。だいじょうぶ。きっと君の希望は叶えられる。生まれた時に側にいた僕を、親のように慕う精霊は、声もあげずにぽろぽろと虹色の涙を落としていた。
 その姿に姉さまを思い出す。
 辛い時にも、黙って泣いていた子供を。

 君たちは未来で出会うよ。僕は未来で見て来たのだから。聖女リシアそっくりの顔をした姉さまに、君は契約を申し込む。王家に伝えた予言は、500年の時を経て叶う。

 もう、充分に生きた。

 先に亡くなった妻は、あの世で自分を待ってくれているだろうか。聖女リシアも、今度は生まれ変わらずに、死後の楽園でのんびり過ごしているかな?

 さあ、お迎えが来たようだ。もう、目を開いている力も残っていない。

 思い残すことは何もな……。

 ! 

 あった!

 大変だ! 言い忘れていた! とても大事なことを!

 どうすればいい? 姉さまに必ず伝えなければ。

 光の精霊王! 聞いてくれ、絶対に姉さまに言わないといけないんだ! 

 でも、もう口が開かない。何か手段はないのか?

 そうだ、そう。魔物蔦! 
 近くにいるはずだ。

 魔物蔦よ! 心の声を聞いてくれ!
 勇者リョウの一生の願いだ。

 伝えてくれ!

 今から500年後に生まれる、聖女リシアと同じ色合いの、そっくりな女の子に伝言を頼む!

 いいか? 

 勇者の妻は一人だけだった。

 勇者は、女剣士としか子供ができるようなことはしていない。

 姉さまが気持ち悪いって言っていた勇者ハーレムなんて、なかったんだ! 絶対に!

 女魔法使いには手を出していない!
 彼女は、勇者の子供を生んだってみんなに言いふらしていたけど、その子は黒髪じゃなかった!

 まあ、うちの息子が彼女の娘に誘惑されて浮気して、結局黒髪の孫が生まれたけど。
 でも、誓って、勇者の子ではないのだ!

 知らせないと……! 姉さまに誤解されたままは嫌だ。

 魔物蔦よ。必ず姉さまに伝えてくれ!

 勇者リョウの妻は一人だけ!

 愛する女は一人だけだったと。

 いいかい。「勇者の、女は、1人だけ」だ。

 必ず……伝えて……絶対……に……。





※※※※※※
 500年後、魔物蔦は、がんばって遺言を伝えました。(23  魔物蔦)でも、自分で台無しにしたのを忘れてます。
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