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第2部 魔法学校編
65 すてきな婚約者〜ベアトリス〜(魔法学校1年時)
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魔法学校一学期の終わりの時期です。
※※※※※※※※※
私はベアトリス・シルバスター。公爵家の長女よ。魔法学校に通う1年生。同じクラスの王太子とは婚約者候補という関係よ。
はっきり言って、王太子はクズね。
顔は、まあまあだけど、あの選民思想と変にこじれた劣等感で、王子としての評判は最悪ね。まあ、気の毒に思わないこともないわ。国王が妻を捨てて真実の愛の相手を選んだせいで、王子なのに紫眼を持たなかったんだもの。それは、彼のせいではないわ。貴族や使用人に陰口をたたかれて、腹が立つのは分かるわ。でも、だからって暴力や暴言で返すのは、本当に愚かね。
まあ、そういう小心者だから、私がちょっと優しくしてあげたら、すぐに懐いたから、操りやすいっていうのは都合がいいわね。
なにしろ、わが国は精霊王の結界によって守られているのだから。国王だけがこの契約を持続できる。だから、どんなに国王が人間的に問題があっても、王命に逆らえないのよ。
先の王はまだ良かったけど、今の国王はダメね。凡庸で愚鈍どころか、仕事は宰相任せで、ちょっと非難されたら相手を殺そうとする。早く退位してほしいわ。
その代わりにビクトル王子が国王になるっていうのも、問題だけど。私がうまく操縦できるように、教育を受けて来たのよ。バカな王が2代続くと大変だもの。
仕方ないわ。私はシルバスター公爵の娘だもの。それが私の義務よ。
そう納得していたの。でも、ある日、宰相のハロルド・ゴールドウィンが訪ねて来たの。
「国王を退位させましょう」
両親との話し合いの席には、私も呼ばれた。そして、金髪に紺色の目をした宰相は、そう言った。
「今更なにを? 貴公は、オリヴィア殿が王宮を追放された時も、何もしなかったではないか。どういう心境の変化だ?」
父の質問に、宰相はゆっくりと言葉を返した。
「妹の時とは事情が違います。この先、王家に紫眼の王女は生まれません。ここで、精霊王の結界の契約は終わるのです」
どういうことかしら? 確かに、王太子の魔力はとても低いわ。水色の瞳が表しているもの。でも、私との子なら、少しは魔力が高くなるんじゃない? 向こうもそれを期待しているもの。私の子がまた魔力の高い子と結ばれれば、いずれは紫眼にもどるのじゃないの?
「聖女リシアと精霊王の契約です。聖女リシアの教えでは、夫婦間の不貞行為を許しません。不貞で生まれた王太子には、精霊王の加護は得られないでしょう」
宰相の説明に首をかしげる。王太子はフローラ妃の娘よね。不貞ではないわ。確かに、生まれた月を考えたら、結婚前から男女間の関係にあったかもしれないけど。……あ!
そうよ。白い結婚で婚姻無効を宣言する前に、フローラ妃は妊娠していたのよね。
「ベアトリス嬢。あなたは王太子と結婚しても、子供に紫眼を授けることはできないでしょう」
宰相の紺色の目が私をまっすぐに見た。その瞳のなかに、私を憐れむ感情が見えた。私の父よりは若いと言っても、ずっと年上のはずなのに、宰相は若々しく見える。
今までずっと独身なのはなぜかしら。悪女オリヴィアの兄として責任を取ったなんて噂する人もいるけど、そんなわけないわ。この人の頭の中には何があるのかしら? 彼について知りたいと思ってしまった。
「それは、貴公の養女を王太子妃にするために、シルバスター家に身を引けといっているのか?」
父が宰相を探るように目を細めた。
宰相の養女は、紫眼のクリス様の娘のレティシアさんね。
でも、レティシアさんは、王太子に嫌われているわ。紫眼を持っているだけで、憎まれているのよ。どんなに王太后が婚約者にしようとしても、あの調子では無理でしょう。それに、そもそもレティシアさんには、貴族の責任感が皆無よ。王妃になれる器じゃない。勉強はできるようになったみたいだけど、進級テストに受かったからと言って、学校での社交を投げ出すなんて、貴族として致命的な欠点よ。成績優秀でも、貴族としては落第生ね。
私の考えには、みんな同意見だった。
「レティシアを王太子にやるつもりはないよ。王太子は排除する」
きっぱりと言い切った反逆の言葉に、両親は無言になった。
「では、次の王には誰がなるのですか? まさか王女様ですか?」
両親の代わりに私が質問した。王女マリアンヌは王太子よりはマシね。暴力を振るわないところだけね。でも、流され安く、周囲の都合の良い嘘をすぐに信じてしまう愚かさは一緒よ。たとえ、王配にしっかりとした者をつけたとしても、どうなのかしら? 自分のことを聖女リシアの生まれ変わりだなんて言ってるのよ。予言の王女は紫眼なのに。何を考えてるのかしら。ううん、何も考えてないのよね。彼女はありえないわ。
「私がなりますよ」
そう宣言した宰相に、私たちは息をのんだ。
「私の父は先代国王の弟ですからね。血筋的には問題ありません」
「だが、貴公は紫眼ではない。それならばまだ、クリストファー殿の方が」
「クリスは国王になど、絶対にならないですよ。それに、紫眼でないのは、王太子と王女も同じだ」
そうね。王太子の薄い水色の目に比べて、宰相の目は魔力の多い紺色だわ。そして、ゴールドウィン家は王族と言ってもいいほど血が近いものね。
よく考えると、それもいいかもしれないと思えて来た。今も宰相が国王の仕事をすべてやっているのだから、彼が国王になって何も困ることはないわ。ただ、一つだけ。
「貴公が国王になったとして、王妃が不在だぞ。独身主義をやめなければならないぞ」
父の言葉から、もう、宰相が王になる考えに賛成していると感じられた。
「そう、それを頼みにきました。ジュエニー・シルバスター嬢に結婚を申し込みたい」
! 叔母様と?
「ジュエニー殿は、まだ婚約者もいないという。私は年上だがどうだろうか。彼女に未来の王妃になってほしい」
叔母様は、27歳。まだ結婚してない。なぜって、叔母様は、「私は冒険者になる」なんて勝手なことを言って、ダンジョンに入り浸っているから。でも、対外的には領地で療養してるってことになってる。叔母様に王妃なんて絶対無理だ。それなら、
「私が結婚します!」
両親が何か言う前に、私が言ってやった。
驚きを隠すように瞬きをした宰相に、私は自分の優位性を示した。
「私は、王太子妃教育も済ませました。勉強も社交も得意です。未来の王妃にふさわしいのは叔母ではなく私です」
「いや、しかし。年齢が離れすぎているし、君は王太子の婚約者候補じゃないか」
「でも、ビクトル様は王太子ではなくなるのでしょう? 私は王太子でないビクトル様とは結婚しませんわ。責任を取ってください」
にっこり笑ってそう言うと、宰相は何度も瞬きをした。
少し、動揺してる? もうひと押し。
「ゴールドウィン家とシルバスター家の縁組により、他の貴族家の支持を得られますわ。これが一番いい方法です」
「そうだな。その通りだ。ジュエニーは、その、体が弱いので王妃は無理だからな」
「ベアトリスの方が王妃には向いているわ。この子は年齢よりも大人びてますものね」
叔母様のことを表に出したくない両親は、私に同意した。
そして、その場で、私と宰相の婚約は調った。
「ハロルド様」
一番美しく見えるように微笑んで、宰相の目を見つめると、彼はまた、瞬きした。
「これからよろしくお願いしますね」
この人が私の夫になるのね。ビクトル様よりもずっといいわ。
帰り際に、ハロルド様がお父様におかしな頼みごとをしていた。
「そちらの使用人で不要な者がいたら、娘にチョコレートを送ったことにしてほしい」って。
その時は何のことか分からなかったけど、後日、レティシア様と話をすると理由が分かった。
そうね、彼女に復讐なんて似合わないもの。そういうのは、もっと成熟した大人でないとね。
自分好みの成熟した大人の婚約者ができて、私はとても満足している。
※※※※※※
ジュエニー叔母さんは、この後、ハロルドの仲介で辺境伯の長男とお見合いします。二人は意気投合、似た者夫婦になります。
プロポーズの言葉は「一緒に修行者のダンジョン99階を目指そう」でした。
※※※※※※※※※
私はベアトリス・シルバスター。公爵家の長女よ。魔法学校に通う1年生。同じクラスの王太子とは婚約者候補という関係よ。
はっきり言って、王太子はクズね。
顔は、まあまあだけど、あの選民思想と変にこじれた劣等感で、王子としての評判は最悪ね。まあ、気の毒に思わないこともないわ。国王が妻を捨てて真実の愛の相手を選んだせいで、王子なのに紫眼を持たなかったんだもの。それは、彼のせいではないわ。貴族や使用人に陰口をたたかれて、腹が立つのは分かるわ。でも、だからって暴力や暴言で返すのは、本当に愚かね。
まあ、そういう小心者だから、私がちょっと優しくしてあげたら、すぐに懐いたから、操りやすいっていうのは都合がいいわね。
なにしろ、わが国は精霊王の結界によって守られているのだから。国王だけがこの契約を持続できる。だから、どんなに国王が人間的に問題があっても、王命に逆らえないのよ。
先の王はまだ良かったけど、今の国王はダメね。凡庸で愚鈍どころか、仕事は宰相任せで、ちょっと非難されたら相手を殺そうとする。早く退位してほしいわ。
その代わりにビクトル王子が国王になるっていうのも、問題だけど。私がうまく操縦できるように、教育を受けて来たのよ。バカな王が2代続くと大変だもの。
仕方ないわ。私はシルバスター公爵の娘だもの。それが私の義務よ。
そう納得していたの。でも、ある日、宰相のハロルド・ゴールドウィンが訪ねて来たの。
「国王を退位させましょう」
両親との話し合いの席には、私も呼ばれた。そして、金髪に紺色の目をした宰相は、そう言った。
「今更なにを? 貴公は、オリヴィア殿が王宮を追放された時も、何もしなかったではないか。どういう心境の変化だ?」
父の質問に、宰相はゆっくりと言葉を返した。
「妹の時とは事情が違います。この先、王家に紫眼の王女は生まれません。ここで、精霊王の結界の契約は終わるのです」
どういうことかしら? 確かに、王太子の魔力はとても低いわ。水色の瞳が表しているもの。でも、私との子なら、少しは魔力が高くなるんじゃない? 向こうもそれを期待しているもの。私の子がまた魔力の高い子と結ばれれば、いずれは紫眼にもどるのじゃないの?
「聖女リシアと精霊王の契約です。聖女リシアの教えでは、夫婦間の不貞行為を許しません。不貞で生まれた王太子には、精霊王の加護は得られないでしょう」
宰相の説明に首をかしげる。王太子はフローラ妃の娘よね。不貞ではないわ。確かに、生まれた月を考えたら、結婚前から男女間の関係にあったかもしれないけど。……あ!
そうよ。白い結婚で婚姻無効を宣言する前に、フローラ妃は妊娠していたのよね。
「ベアトリス嬢。あなたは王太子と結婚しても、子供に紫眼を授けることはできないでしょう」
宰相の紺色の目が私をまっすぐに見た。その瞳のなかに、私を憐れむ感情が見えた。私の父よりは若いと言っても、ずっと年上のはずなのに、宰相は若々しく見える。
今までずっと独身なのはなぜかしら。悪女オリヴィアの兄として責任を取ったなんて噂する人もいるけど、そんなわけないわ。この人の頭の中には何があるのかしら? 彼について知りたいと思ってしまった。
「それは、貴公の養女を王太子妃にするために、シルバスター家に身を引けといっているのか?」
父が宰相を探るように目を細めた。
宰相の養女は、紫眼のクリス様の娘のレティシアさんね。
でも、レティシアさんは、王太子に嫌われているわ。紫眼を持っているだけで、憎まれているのよ。どんなに王太后が婚約者にしようとしても、あの調子では無理でしょう。それに、そもそもレティシアさんには、貴族の責任感が皆無よ。王妃になれる器じゃない。勉強はできるようになったみたいだけど、進級テストに受かったからと言って、学校での社交を投げ出すなんて、貴族として致命的な欠点よ。成績優秀でも、貴族としては落第生ね。
私の考えには、みんな同意見だった。
「レティシアを王太子にやるつもりはないよ。王太子は排除する」
きっぱりと言い切った反逆の言葉に、両親は無言になった。
「では、次の王には誰がなるのですか? まさか王女様ですか?」
両親の代わりに私が質問した。王女マリアンヌは王太子よりはマシね。暴力を振るわないところだけね。でも、流され安く、周囲の都合の良い嘘をすぐに信じてしまう愚かさは一緒よ。たとえ、王配にしっかりとした者をつけたとしても、どうなのかしら? 自分のことを聖女リシアの生まれ変わりだなんて言ってるのよ。予言の王女は紫眼なのに。何を考えてるのかしら。ううん、何も考えてないのよね。彼女はありえないわ。
「私がなりますよ」
そう宣言した宰相に、私たちは息をのんだ。
「私の父は先代国王の弟ですからね。血筋的には問題ありません」
「だが、貴公は紫眼ではない。それならばまだ、クリストファー殿の方が」
「クリスは国王になど、絶対にならないですよ。それに、紫眼でないのは、王太子と王女も同じだ」
そうね。王太子の薄い水色の目に比べて、宰相の目は魔力の多い紺色だわ。そして、ゴールドウィン家は王族と言ってもいいほど血が近いものね。
よく考えると、それもいいかもしれないと思えて来た。今も宰相が国王の仕事をすべてやっているのだから、彼が国王になって何も困ることはないわ。ただ、一つだけ。
「貴公が国王になったとして、王妃が不在だぞ。独身主義をやめなければならないぞ」
父の言葉から、もう、宰相が王になる考えに賛成していると感じられた。
「そう、それを頼みにきました。ジュエニー・シルバスター嬢に結婚を申し込みたい」
! 叔母様と?
「ジュエニー殿は、まだ婚約者もいないという。私は年上だがどうだろうか。彼女に未来の王妃になってほしい」
叔母様は、27歳。まだ結婚してない。なぜって、叔母様は、「私は冒険者になる」なんて勝手なことを言って、ダンジョンに入り浸っているから。でも、対外的には領地で療養してるってことになってる。叔母様に王妃なんて絶対無理だ。それなら、
「私が結婚します!」
両親が何か言う前に、私が言ってやった。
驚きを隠すように瞬きをした宰相に、私は自分の優位性を示した。
「私は、王太子妃教育も済ませました。勉強も社交も得意です。未来の王妃にふさわしいのは叔母ではなく私です」
「いや、しかし。年齢が離れすぎているし、君は王太子の婚約者候補じゃないか」
「でも、ビクトル様は王太子ではなくなるのでしょう? 私は王太子でないビクトル様とは結婚しませんわ。責任を取ってください」
にっこり笑ってそう言うと、宰相は何度も瞬きをした。
少し、動揺してる? もうひと押し。
「ゴールドウィン家とシルバスター家の縁組により、他の貴族家の支持を得られますわ。これが一番いい方法です」
「そうだな。その通りだ。ジュエニーは、その、体が弱いので王妃は無理だからな」
「ベアトリスの方が王妃には向いているわ。この子は年齢よりも大人びてますものね」
叔母様のことを表に出したくない両親は、私に同意した。
そして、その場で、私と宰相の婚約は調った。
「ハロルド様」
一番美しく見えるように微笑んで、宰相の目を見つめると、彼はまた、瞬きした。
「これからよろしくお願いしますね」
この人が私の夫になるのね。ビクトル様よりもずっといいわ。
帰り際に、ハロルド様がお父様におかしな頼みごとをしていた。
「そちらの使用人で不要な者がいたら、娘にチョコレートを送ったことにしてほしい」って。
その時は何のことか分からなかったけど、後日、レティシア様と話をすると理由が分かった。
そうね、彼女に復讐なんて似合わないもの。そういうのは、もっと成熟した大人でないとね。
自分好みの成熟した大人の婚約者ができて、私はとても満足している。
※※※※※※
ジュエニー叔母さんは、この後、ハロルドの仲介で辺境伯の長男とお見合いします。二人は意気投合、似た者夫婦になります。
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