【完結】白い結婚で生まれた私は王族にはなりません〜光の精霊王と予言の王女〜

白崎りか

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第2部 魔法学校編

46 魔法学校一年

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「新入生代表、王太子ビクトル殿下」

 壇上に上がったのは、久しぶりに見る凶暴王太子。

 8年前よりもずっと、背が伸びて、男らしい顔つきになっている。輝きの少ない金髪と、薄い水色の瞳は相変わらずだ。

 婚約者候補なのに、全然交流がなかったのかって? そう、そのとおり。嫌がる私のために、伯父様が尽力してくれた。相性が最悪だった私の実母の話まで持ち出して、これ以上仲が悪くならないためには、しばらく距離を置こうっていう変な理由をつけて。王太子の方も私を毛嫌いしていたので、お互いが出席する集まりは、事前にチェックして欠席、もしも鉢合わせたら、即退散。そういう点では私達、うまく共闘してたみたい。もっとも、私は全く、貴族の集まりには出なかったけどね。

「みな、よく聞け。この学園には、王族から貧しい平民まで様々な人種がいる。俺は、底辺の民にも声をかけてやるつもりだ。まじめに勉学に取り組み、王の役に立つ力を見せた者は、身分が卑しくとも、俺のために働かせてやろう。自分を卑下せずに励め」

 王太子はいいことを言った感を出して、舞台から降りたけど、めちゃくちゃ上から目線だね。ひどいな。ますます嫌いになるよ。聞いてた人も、ドン引きしてない?

 この学園は貴族学園とは違って、身分を超えた実力主義になっている。クラス分けは成績順だ。だから、平民がAクラスで、侯爵令嬢がBクラスっていうのも珍しい話じゃない。王太子もBクラスになってた。
 ふふふ、忖度抜きだとこんなもんでしょうね。私はもちろん、Aクラス。なぜって、そりゃあ、魔力が大きいからね。貴族学園の卒園式の後、保護者と別室で受けた魔力検査で、針が最大まで吹っ切れた。全属性魔力最大。

 まあ、知ってたけど。でも、これは別に転生者特典ってわけではなく、王族はみんな全属性だそうだ。それでいくと、王太子がBクラスなのはおかしいんだけど、魔力量が低すぎるのか、それとも勉強面で足を引っ張ったのか……? 


「レティ!」

 入学式が終わり、クラスに向かう途中で呼び止められた。
 さらりとした黒髪にキラキラした黒真珠のように輝く瞳を持つさわやかイケメン、オスカー様だ。精悍な顔立ちに、すらりと伸びた筋肉質な体。どこからどう見ても完璧だ。

「オスカー様、ごきげんよう。一月ぶりですね」

 王太子と違ってオスカー様とは交流がある。なにしろ、私は、しばらく辺境で過ごしていたのだ。

「よかった。一緒のクラスになれた。レティは勉強をがんばったから当然だね」

 さわやかに笑って褒めてくれるんだけど、あのしんどかった受験勉強を思い出して、吐きそうになった。めちゃくちゃ勉強したよ。もう、嫌になるほど。

「あれから、修行者のダンジョンの攻略は進んだ?」

「うん、すこしだけね。やっぱり杖がないと、上に行くのは難しいね」

 オスカー様は私のすぐ隣を歩く。手が触れそうなほど、距離が近い。辺境では疲れた時に支えてもらったけど、ここは学校だ。周囲の目もある。

「あの、オスカー様?」

「うん? オスカーでいいよ。俺もレティって呼んでるだろ」

 いえいえ、未婚の男女でお互いにそんな呼び方をしてると、周囲に誤解されますよ。私は一応、王太子の婚約者候補なんだし。

「あら、それなら、わたくしのことはトリスと呼んでくださらない?」

 突然、私達の間に、鈴の音のような声が割って入った。

「ベアトリス様、ごきげんよう」

「ごきげんよう。レティシア様。婚約者候補のお茶会に来られないほど体調を崩されているそうだけど、もうお元気になられましたのね」

 にっこり笑って嫌味を言ってくる。でも、その美少女ぶりは健在だ。ホワイトブロンドの髪は緩やかに背中に流れて、真っ青な瞳は深い湖のように見た者を引き込む。優雅な貴族令嬢のお手本のような女の子だ。もちろん、中身も、これぞ貴族って感じの性格。

「ご心配おかけしました。まだ体調が優れないので、学校が終わったら家にこもる予定です」

 これからも社交はしませんって宣言しておく。一切、王太子には興味ないんで、そっちで好きにやってくださいね。

「まあ、それはいけませんわ。では、今日の新入生歓迎パーティはどうなさいますの? 殿下はわたくしのエスコートをしてくださる予定ですけれど……」

「レティの相手は俺だよ」

 オスカー様がきりっとして言った。え? 聞いてないよ。そんなの。
 私は欠席するってば。

「今日のパーティは全員参加なんだ。少しでいいから出た方がいいよ」

 オスカー様はにっこりとさわやかに笑った。
 ああもう、仕方ないな。今日はいろいろやることがあったのに。
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