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第1部 貴族学園編
22 夏休み
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親切なオスカー様は、わざわざ馬車を手配してくれた。
私は迎えに来てくれた騎士さんたちと一緒に、辺境伯領へ出発した。
辺境伯領は遠いので、途中で転移門を通る。
これも、勇者の発明だ。日本にはテレポートできる機械なんてなかったのに、こんなものを開発するなんて、勇者はどれだけ頭いいの? それとも私の死後、テレポート装置が開発された? 勇者は未来の日本人?
母様が大金を払って手に入れた転移門の設計図を、リョウ君がかじりつくように見ていたけど、私は秒であきらめたよ。意味わかんない。理解できない。
でも、とにかく、転移門をぬけたら、そこはブラーク辺境領だった。
「リョウ君! レティシアちゃん!」
領主の館に着いたら、オスカー様が笑顔で迎えてくれた。隣には、黒い騎士服を着た背の高い女の人もいる。栗色の髪に焦げ茶の目。オスカー様のお母様かな?
「お世話になります。ブラーク辺境伯夫人」
リョウ君と一緒に挨拶した。
「ようこそ辺境へ。あなたたちの話はオスカーから毎日聞いているわ。この子ね、あなたたちが来るのをとっても楽しみにしてたのよ」
「ぼくたちもです! 来る途中に、馬車の中から不思議な生き物をたくさん見ました。角が生えたウサギとか、羽が生えた鹿とか。もう、すごく楽しいです」
「ああ、あれは魔物だよ。でも、近よらない限り攻撃してこないから安心して。って、全然怖がってないね」
「うん! ぼく、もっと近くでよく見たい」
リョウ君は紫の目をキラキラ輝かせた。
「まあ、あなたたち、魔物に耐性があるのね! すばらしいわ。中央の貴族なんて、魔物酔いをするからって辺境領に入ることもできないのよ。あなたたち、素質があるわよ」
魔物酔いって何だろう? っていうか、魔物ってこの国の結界があるから入ってこれないんじゃなかった?
疑問が顔に出ていたのか、辺境伯夫人が応接室へ歩きながら教えてくれた。
「ここはね、結界の外側なのよ。でも、安心して、向こうにもう一つ結界があるの。魔物と戦う術を忘れることを危惧した先祖が、光の精霊王に頼んで、比較的弱い魔物だけを辺境領に入れるように調節してくれたのよ」
夫人の話を聞きながら、きょろきょろと館内を見渡した。
大きな剣や弓、斧やこん棒があちこちに置かれている。
壁には重そうな鉄の盾が立てかけられていた。
「でも、残念ね。リョウ君は跡継ぎだから辺境に引き抜けないわね。運動会での大活躍をうちの騎士が絶賛していたのよ。でも、それなら、ねえ、レティシアちゃんがうちに嫁に来ない? 息子が3人いるの。どの子を選んでも大歓迎よ。後で紹介するわね」
夫人がとんでもないことをおっしゃった。
「母上!」
オスカー様は真っ赤になって抗議した。
そうだよね。この年で結婚相手なんか決められたくないよね。
それに、私は将来は平民の魔道具職人になるって決めてるんだから……。でも、私の成績でなれるかどうか、最近ちょっと不安。
「レティシアちゃん、リョウ君! 部屋に案内するよ。行こう」
オスカー様に手を引っ張られた。
まだお茶も飲んでないのに。
夫人はにこにこしながら、引きずられていく私達に手を振った。
騎士さんが馬車からおろしてくれた荷物を、辺境伯のメイドさんが片付けてくれていた。
「ふたりは一緒の部屋にしたんだ。知らない土地で心細いかと思って」
大きなベッドが二つ並んだだけのシンプルな寝室に案内された。隣の部屋にはテーブルや椅子、衣装棚がどんっと置かれていた。装飾のない無駄を省いた部屋だ。
ベッドの上に座った私は、ぱたぱたと走り回るリョウ君を見た。
「見て! 捕まえたよ。これ、何?」
リョウ君は両手ですくった、小さくて青いぷよぷよしたものを見せて来た。
「あ、掃除スライムの子供だ。ごめん。また生まれてたんだね」
焦ったようにオスカー様は、その小さいスライムをリョウ君の手から取った。
「大丈夫? 俺は魔力が高いから、少しぐらい吸われても何ともないけど、リョウ君は……うん、平気そうだね」
「うん? 平気だよ。そのスライムの赤ちゃんは魔力がご飯なの?」
「いや、ほこりや小さい虫の死骸を好んで食べるんだ。でも、子供のうちは魔力を吸収することもある。そっか、君たちは魔力が多いんだよね。少し吸われても、全然気にならないくらいに。母上がスカウトしたがるわけだね」
「ぼく、ここの家、気に入ったよ! 面白いものがいっぱいある! ねえ、他にも魔物はいるの?」
興奮しているリョウ君を見て、オスカー様は私達に魔物牧場を案内してくれることになった。
私は迎えに来てくれた騎士さんたちと一緒に、辺境伯領へ出発した。
辺境伯領は遠いので、途中で転移門を通る。
これも、勇者の発明だ。日本にはテレポートできる機械なんてなかったのに、こんなものを開発するなんて、勇者はどれだけ頭いいの? それとも私の死後、テレポート装置が開発された? 勇者は未来の日本人?
母様が大金を払って手に入れた転移門の設計図を、リョウ君がかじりつくように見ていたけど、私は秒であきらめたよ。意味わかんない。理解できない。
でも、とにかく、転移門をぬけたら、そこはブラーク辺境領だった。
「リョウ君! レティシアちゃん!」
領主の館に着いたら、オスカー様が笑顔で迎えてくれた。隣には、黒い騎士服を着た背の高い女の人もいる。栗色の髪に焦げ茶の目。オスカー様のお母様かな?
「お世話になります。ブラーク辺境伯夫人」
リョウ君と一緒に挨拶した。
「ようこそ辺境へ。あなたたちの話はオスカーから毎日聞いているわ。この子ね、あなたたちが来るのをとっても楽しみにしてたのよ」
「ぼくたちもです! 来る途中に、馬車の中から不思議な生き物をたくさん見ました。角が生えたウサギとか、羽が生えた鹿とか。もう、すごく楽しいです」
「ああ、あれは魔物だよ。でも、近よらない限り攻撃してこないから安心して。って、全然怖がってないね」
「うん! ぼく、もっと近くでよく見たい」
リョウ君は紫の目をキラキラ輝かせた。
「まあ、あなたたち、魔物に耐性があるのね! すばらしいわ。中央の貴族なんて、魔物酔いをするからって辺境領に入ることもできないのよ。あなたたち、素質があるわよ」
魔物酔いって何だろう? っていうか、魔物ってこの国の結界があるから入ってこれないんじゃなかった?
疑問が顔に出ていたのか、辺境伯夫人が応接室へ歩きながら教えてくれた。
「ここはね、結界の外側なのよ。でも、安心して、向こうにもう一つ結界があるの。魔物と戦う術を忘れることを危惧した先祖が、光の精霊王に頼んで、比較的弱い魔物だけを辺境領に入れるように調節してくれたのよ」
夫人の話を聞きながら、きょろきょろと館内を見渡した。
大きな剣や弓、斧やこん棒があちこちに置かれている。
壁には重そうな鉄の盾が立てかけられていた。
「でも、残念ね。リョウ君は跡継ぎだから辺境に引き抜けないわね。運動会での大活躍をうちの騎士が絶賛していたのよ。でも、それなら、ねえ、レティシアちゃんがうちに嫁に来ない? 息子が3人いるの。どの子を選んでも大歓迎よ。後で紹介するわね」
夫人がとんでもないことをおっしゃった。
「母上!」
オスカー様は真っ赤になって抗議した。
そうだよね。この年で結婚相手なんか決められたくないよね。
それに、私は将来は平民の魔道具職人になるって決めてるんだから……。でも、私の成績でなれるかどうか、最近ちょっと不安。
「レティシアちゃん、リョウ君! 部屋に案内するよ。行こう」
オスカー様に手を引っ張られた。
まだお茶も飲んでないのに。
夫人はにこにこしながら、引きずられていく私達に手を振った。
騎士さんが馬車からおろしてくれた荷物を、辺境伯のメイドさんが片付けてくれていた。
「ふたりは一緒の部屋にしたんだ。知らない土地で心細いかと思って」
大きなベッドが二つ並んだだけのシンプルな寝室に案内された。隣の部屋にはテーブルや椅子、衣装棚がどんっと置かれていた。装飾のない無駄を省いた部屋だ。
ベッドの上に座った私は、ぱたぱたと走り回るリョウ君を見た。
「見て! 捕まえたよ。これ、何?」
リョウ君は両手ですくった、小さくて青いぷよぷよしたものを見せて来た。
「あ、掃除スライムの子供だ。ごめん。また生まれてたんだね」
焦ったようにオスカー様は、その小さいスライムをリョウ君の手から取った。
「大丈夫? 俺は魔力が高いから、少しぐらい吸われても何ともないけど、リョウ君は……うん、平気そうだね」
「うん? 平気だよ。そのスライムの赤ちゃんは魔力がご飯なの?」
「いや、ほこりや小さい虫の死骸を好んで食べるんだ。でも、子供のうちは魔力を吸収することもある。そっか、君たちは魔力が多いんだよね。少し吸われても、全然気にならないくらいに。母上がスカウトしたがるわけだね」
「ぼく、ここの家、気に入ったよ! 面白いものがいっぱいある! ねえ、他にも魔物はいるの?」
興奮しているリョウ君を見て、オスカー様は私達に魔物牧場を案内してくれることになった。
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