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第1部 貴族学園編
20 魔石と魔力
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騎士さんたちの剣術大会の前に、タンポポ組の競技の障害物競走があった。私はやっぱりビリになったけど、リョウ君は大活躍したよ。障害物? どこそれ? みたいな顔をしてオリンピック選手のような走りを見せてくれた。ほんとにもう、うちの弟って人類最強になれるんじゃない?
疲れてテントに帰ると、オスカー様が気の毒そうな顔をして、私にアイスクリームを渡してくれた。
「保護者会で出された冷たいクリームだよ。今年は氷の魔石がたくさん手に入ったから、子供の分もあるって持ってきてくれたよ。これでも食べて元気出して」
「ありがとう」
甘いミルク味のアイスクリームは、すさんだ心を慰めてくれる。
あ、これを冷やした氷の魔石は、この前私が魔力を補充したやつだね。
「ねえオスカー様、契約獣が手に入ったら何ができるの?」
3口でアイスクリームを食べ終えたリョウ君が、テーブルに置かれた黒い馬のぬいぐるみを手に取りながら、オスカー様に聞いた。
「契約獣は魔力を安定させるんだ。俺たち子供は魔力が不安定だから、まだ使っちゃだめだけど。契約獣が魔力量を調整してくれるようになると、安全に魔力が使えるようになるんだ」
ん?
「契約獣がいないと、魔力を使っちゃダメなの? 魔石に補充できないの?」
「できなくはないけど、かなり危険だよ。魔力を使いすぎると命にかかわるから。子供のうちは魔力量の調整ができない。それで、平民の子供で、お金のために魔石に魔力を補充して、死んじゃった子もいるみたいだよ」
なんですと?
母様は私に、3歳の時から魔力補充させてるけど……。
「え? それじゃ、姉さまは?」
目を見開いて驚いているリョウ君に、私は自分の唇に人差し指を当てた。
そういえば、母様はリョウ君には魔石の魔力補充させてないよね。
「どっちにしろ、まだ俺たちは何の魔力を持ってるかもわからないからね。卒園後に魔力鑑定を行って初めて、適性が分かるんだ。そしたら、貴族の務めとして、結界の魔道具に魔力補充できるようになる。誉れあることだよ」
魔力鑑定……。家にある魔道具で3歳の時に母様にやられたな。そういえば、リョウ君はまだ鑑定してない。
嫌な考えが頭に浮かんだけど、気にしないように首を振った。
「姉さま……」
心配するリョウ君に私はにこりと笑った。
「あ、ほら、騎士さんが戦うよ!」
剣術トーナメントは、途中までは辺境騎士の圧勝だった。
近衛騎士が出てくるまでは。
「今の騎士さんの動きは変だったよ」
剣を取り落として負けを宣言した騎士さんに、リョウ君はがっかりして不満を漏らした。
「ああ、そうだね」
オスカー様は、ものすごく苦いものを口に入れてるように顔をゆがめた。
そっか、そういうことか。
王家の用意した近衛騎士には、勝ったらだめなんだね。
オスカー様がそう命令してたんだ。
後ろで観戦していた騎士さんたちも、悔しそうに肩を落とした。
「さあ、優勝者が決定しました! 皆さんの予想通り、王太子ビクトル様の護衛騎士! 近衛騎士副隊長のアーサー様です! 素晴らしい剣技でした。皆さま、拍手を!!」
アナウンスの声で、わぁーっと歓声が響く。
王太子が指令台に上って、優勝旗を近衛騎士に渡した。近衛騎士はひざまずいて、恭しく受け取った。
その隣で、対戦相手の辺境伯の騎士さんは地面を見ていた。
納得できない競技がいっぱいあったけど、運動会はこうして終わった。最後に指令台の上に国王が立って、閉会の言葉を唱えた。
「終わったね」
「うん、タンポポ組は負けちゃったけどね」
勝ち負けがあるなんて知らなかった。国王がいきなり、「勝者、薔薇組!」って宣言した時は、びっくりしたよ。
なんでタンポポ組の負けなの? 訳わかんないよ。
不満はあふれるほどあったけど、でも、楽しかった。
タンポポ組のみんなはとてもいい子だ。みんなが一緒になって一生懸命やり切ったよ。みんな、声を枯らして応援したよ。
絆が強くなったね。
「ぼくね、タンポポ組でよかった」
「うん、姉さまも」
私達は手をつないで家に帰った。
疲れてテントに帰ると、オスカー様が気の毒そうな顔をして、私にアイスクリームを渡してくれた。
「保護者会で出された冷たいクリームだよ。今年は氷の魔石がたくさん手に入ったから、子供の分もあるって持ってきてくれたよ。これでも食べて元気出して」
「ありがとう」
甘いミルク味のアイスクリームは、すさんだ心を慰めてくれる。
あ、これを冷やした氷の魔石は、この前私が魔力を補充したやつだね。
「ねえオスカー様、契約獣が手に入ったら何ができるの?」
3口でアイスクリームを食べ終えたリョウ君が、テーブルに置かれた黒い馬のぬいぐるみを手に取りながら、オスカー様に聞いた。
「契約獣は魔力を安定させるんだ。俺たち子供は魔力が不安定だから、まだ使っちゃだめだけど。契約獣が魔力量を調整してくれるようになると、安全に魔力が使えるようになるんだ」
ん?
「契約獣がいないと、魔力を使っちゃダメなの? 魔石に補充できないの?」
「できなくはないけど、かなり危険だよ。魔力を使いすぎると命にかかわるから。子供のうちは魔力量の調整ができない。それで、平民の子供で、お金のために魔石に魔力を補充して、死んじゃった子もいるみたいだよ」
なんですと?
母様は私に、3歳の時から魔力補充させてるけど……。
「え? それじゃ、姉さまは?」
目を見開いて驚いているリョウ君に、私は自分の唇に人差し指を当てた。
そういえば、母様はリョウ君には魔石の魔力補充させてないよね。
「どっちにしろ、まだ俺たちは何の魔力を持ってるかもわからないからね。卒園後に魔力鑑定を行って初めて、適性が分かるんだ。そしたら、貴族の務めとして、結界の魔道具に魔力補充できるようになる。誉れあることだよ」
魔力鑑定……。家にある魔道具で3歳の時に母様にやられたな。そういえば、リョウ君はまだ鑑定してない。
嫌な考えが頭に浮かんだけど、気にしないように首を振った。
「姉さま……」
心配するリョウ君に私はにこりと笑った。
「あ、ほら、騎士さんが戦うよ!」
剣術トーナメントは、途中までは辺境騎士の圧勝だった。
近衛騎士が出てくるまでは。
「今の騎士さんの動きは変だったよ」
剣を取り落として負けを宣言した騎士さんに、リョウ君はがっかりして不満を漏らした。
「ああ、そうだね」
オスカー様は、ものすごく苦いものを口に入れてるように顔をゆがめた。
そっか、そういうことか。
王家の用意した近衛騎士には、勝ったらだめなんだね。
オスカー様がそう命令してたんだ。
後ろで観戦していた騎士さんたちも、悔しそうに肩を落とした。
「さあ、優勝者が決定しました! 皆さんの予想通り、王太子ビクトル様の護衛騎士! 近衛騎士副隊長のアーサー様です! 素晴らしい剣技でした。皆さま、拍手を!!」
アナウンスの声で、わぁーっと歓声が響く。
王太子が指令台に上って、優勝旗を近衛騎士に渡した。近衛騎士はひざまずいて、恭しく受け取った。
その隣で、対戦相手の辺境伯の騎士さんは地面を見ていた。
納得できない競技がいっぱいあったけど、運動会はこうして終わった。最後に指令台の上に国王が立って、閉会の言葉を唱えた。
「終わったね」
「うん、タンポポ組は負けちゃったけどね」
勝ち負けがあるなんて知らなかった。国王がいきなり、「勝者、薔薇組!」って宣言した時は、びっくりしたよ。
なんでタンポポ組の負けなの? 訳わかんないよ。
不満はあふれるほどあったけど、でも、楽しかった。
タンポポ組のみんなはとてもいい子だ。みんなが一緒になって一生懸命やり切ったよ。みんな、声を枯らして応援したよ。
絆が強くなったね。
「ぼくね、タンポポ組でよかった」
「うん、姉さまも」
私達は手をつないで家に帰った。
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