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第1部 貴族学園編

19 運動会のダンスとは

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 運動場の前方に楽団が現れた。
 そして、拡張高いクラッシックな曲が、ゆっくりと流れだす。

 タキシードと色鮮やかなドレスに着替えた薔薇組の5歳児たちは、二人一組で社交ダンスを踊りだした。

 運動会で、社交ダンスって……。

 場違い感がすごいけど、みんなかわいい。小さい子が盛装するのって、悪くないね。

 テントの中から双眼鏡で見学した。

 王太子は……あ、ベアトリス様とペアになってる。いつもと違ってにこにこしてる。王太子はベアトリス様のことが大好きなんだね。すごく分かりやすい。

 っと、すぐ横で踊ってるのはスカラ・マッキントン侯爵令嬢! 黒髪は目立つね。赤い目でじろじろとベアトリス様をにらんでる。リズムがずれるから、ペアになった相手が迷惑そうにしてるよ。

 うーん。オスカー様はどこだろう。あ、見つけた。黒髪。
 一緒にいる子は、知らない子だ。うん、かわいいね。どこの上級貴族かな。すごくオスカー様のこと見つめてる。あ、つまずいた。でも、オスカー様が支えた。ふーん。優しいんだ、オスカー様。

「姉さまもダンスしたいの?」

 私が真剣に見てるから、リョウ君が隣で聞いた。

「ううん、全然。ただ見てるだけ」

 社交ダンスって初めて見るけど、こんなにくっつくものなの? オスカー様は背が高いから、相手の女の子に合わすの大変そうじゃん。ほら、また、つまずいてる。ちょっとひっつきすぎじゃない?

 オスカー様を見ているうちに、社交ダンスは終わった。

 さあ、次は楽しみにしていたお弁当だ。やったね。

 ウキウキしながらテーブルの上に料理人の作ってくれたお弁当を並べていると、オスカー様が女の子をぞろぞろ引き連れて帰ってきた。

「オスカー様、うちのテントで一緒にご飯食べましょう?」
「うちのシェフがおいしいお弁当を作ったの。来て!」
「私のうちの方が、おいしいもん! 一緒に食べてくれなきゃヤダ!」

 ああ、モテモテですな。イケメン5歳児。

 私とリョウ君の見ている前で、オスカー様はさわやかな笑顔を浮かべた。

「ごめんね。タキシードが暑くて早く着替えたいんだ。食事はまた今度ね。君たちも早くドレスを着替えた方がいいよ」

 そう言って、女の子たちにくるりと背を向けて、カーテンで仕切られたお着換えコーナーに入って行った。

 残された女の子たちは、私とリョウ君をキッとにらみつけながら、自分のテントに戻って行った。

 ああ、こわいなぁ。5歳児の嫉妬? 女の闘いは貴族学園から始まる……。

「姉さま、このおにぎり、おいしいよ」

 リョウ君は気にせずに、先にお弁当を食べていた。
 おにぎりも勇者リョウが伝えたのかな。
 この世界の食生活が充実していて、前世と変わらなくてうれしい。ありがとう勇者様。

「ああ、午後からは障害物競走と保護者競技か」

「ねえ、保護者競技って何? ぼくは家の人が誰も来てないけど大丈夫なのかな?」

「出場するのは薔薇組だけだから。薔薇組の保護者が用意した剣士がトーナメント戦をするんだ」

「え? じゃあ、騎士さんも出るの」

「うん、我が家で3日間行われた武道大会、剣術の部の優勝者が出場することになってる」

 私は、食後のお茶を飲みながら二人の話を聞いていた。
 保護者競技ってそういうものなの? それって、ただの剣術大会だよね。本当の保護者は出場しないし。意味わかんないよ。

 でも、後ろで騎士さんが、めちゃくちゃやる気になってるからだまっとこう。

「がんばってね、騎士さん」

「おう! ブラーク辺境騎士団のエースとして、勝利しかありえないぜ! 必ず俺の名を刻んでやります」

「はは、相手は殺さないようにね。それと、近衛騎士相手は……分かってるよね」

「はっ。ご命令ですから、承ります」

 強い男たちの本気の剣の闘い。薔薇組のモンスター競争よりは楽しめるかも。辺境騎士さんを応援するね。
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