5 / 70
第1部 貴族学園編
5 勇者の末裔
しおりを挟む
『ドラゴンさんがころんだ』っていうのは、前世でいう『だるまさんがころんだ』のことね。だるまさんはこの世界に存在しないから、みんながよく知ってるドラゴンで代用する。勇者が連れていたブラックドラゴンが、子供はみんな大好きだからね。
私は大きな木に向って立ち、背後の子供たちに向って大声でかけ声を唱えた。
「ドラゴンさーんが、こーろんだ」
抑揚やリズムをつけて、速さを変えて唱えるのがポイント。
唱え終わってすぐに、ぱっと後ろを振り向いて、止まれずに動いた子供を手招きする。
初めての遊びだから、何人も捕まえた。
私と手をつないだ子供たちは、長い列になって救助を待つ。
「ドラゴーンさんが、ころんだっ!」
さすが貴族の子。カーテシーとかで鍛えているのかな。体幹がいいから、だんだん上手になってきたよ。じわじわと私の方へ近づいてくる。そして、動きを止めるタイミングもぴったりになった。でも、私にたどり着くまであと少しって所で、
「はい、最後の一人、リョウ君もちょっと動いたよ」
1回目だから、かなり厳しくチェックしたよ。やったね、全員を捕まえた。みんなが捕まって手をつなぐと、連帯感が生まれて仲良くなれるよね。
「もう一回やろう!」
「もう一回!」
「ぼくもいれて!」
子供たちがわらわら集まってきた。気分は幼稚園の先生だね。担任のマーガレット先生は、保護者とお茶会してて、園児の面倒なんてみないんだから、もうっ。
平民の召使い先生が、事故がないように各所で園児を見守っているけれど、貴族の子供の相手をして遊ぶのは難しいみたい。いいよ、先生の代わりにお姉さんがもう一度相手をしてあげよう。っていっても、クラスの中で私が一番背は小さいんだけどね。
「面白そうなことをしてる! 俺たちも仲間に入れて!」
薔薇組の子供たちがやって来た。その中でひときわ背の高い黒髪の男の子が目立っている。
黒髪だ! ってことは、もしかしてブラーク辺境伯家のご子息?
勇者の末裔の? 頭の中で、急いで貴族年鑑をめくって名前を思い出す。
「ごきげんよう。オスカー様」
オスカー様はブラーク辺境伯爵の三男だ。貴族年鑑でしっかり覚えたもんね。超上級貴族と勇者の末裔関係だけしか覚えてないけど。だって、元日本人としては、やっぱり黒髪黒目って親近感あるしね。
私の挨拶に続いて、側にいたルビアナちゃんとアニータちゃんたちもお辞儀した。辺境伯は上級貴族だから礼儀は大事。あとの薔薇組の子は? 知らないよ、伯爵家かな?
「ごめんね、みんなで遊んでるのに。俺たちも混ざっていい? 初めて見た遊びだけど、面白そうだよね」
オスカー様は私をまっすぐに見つめて、それから太陽のようにまぶしい笑顔を見せた。
なに、この子。すごく、さわやか!
オスカー様の後ろでワイワイ言っている男の子たちとはなんか種類が違う。キラキラしたオーラがある。黒い瞳が輝いてる。
「えっと、じゃ、もう一回やります。みんな、さっき引いた線の所で並んで! はじめの一歩は、がんばって大きく取ってね!」
私の呼びかけに、20人ぐらいの子供が線の後ろに並んだ。
背が高いオスカー様の一歩は大きかった。しかも、鍛えてるのか、変な体勢なのに、ぴくりともせずに止まってる。
「ドラゴンさんがころんだ……アニータちゃんとディヴィット君、こっち来てね」
動いてしまった子どもの名前を呼んで手をつないだ。
そしてまた、大きな木にむかって目をつぶって、かけ声を唱える。
「ドーラゴンさんが、こーろんだっ!」
素早く振り向くと、2、3人があせってぐらついた。ってオスカー様、もうこんなに近くに来たの? めちゃくちゃ早いよ。
オスカー様の真っ黒な目をじっと見つめても、微動だにしない。仕方なくあきらめて、捕まえた子供とつないだ左手をぶんっと振って、木の幹に顔を向けた。
「ドラゴンーさんーがこーろ……!」
「捕まえた!」
温かい手が私の左手を包んだ。びっくりして目を開けて見上げると、すぐ近くにオスカー様の顔があった。
「きゃー」
「わーっ」
歓声をあげながら、捕まえていた子達が私の左手から抜けて逃げていく。
あ、いけない。
「ストップー!」
逃げる子たちに向けて大声で叫んでから、まだ私の手を握っているオスカー様の手に、もう一方の手を重ねておいた。
「オスカー様、捕まえました」
そう言って見上げると、黒真珠のような瞳が私を映していた。
「え? 俺が捕まったの?」
驚いたようにオスカー様は目を見開いた。
「捕まってる子を救出したら、自分も逃げないといけないんですよ」
オスカー様は、しまったって顔をして私から手を放して、自分の頭に置いた。
そして、黒い前髪をかきあげる。
「ああ、もう、失敗したな。じゃあ次は、俺が鬼をやるんだね」
白い歯を見せて、さわやかに笑ったオスカー様に私は思わず見とれてしまった。
さっきまで握られていた手が、まだ温かい気がした。
どうしよう。……かっこいい。
いやいや、オスカー様は5歳児だよ。かっこいいって何? 何だっていうの? そりゃあ、今は私も5歳だけどっ、前世14歳なんだから、おかしいでしょ?! 5歳児にトキメクなんて。
我に返ってすごく恥ずかしくなったんで、「ドラゴンさんがころんだ」3回戦からは離脱宣言をして、少し離れた場所まで移動した。
砂場の横の椅子に座って、みんなと遊んでいるオスカー様をぼうっと見ていると、ルビアナちゃんとアニータちゃんが寄ってきた。
「オスカー様って、かっこいいですわね」
「辺境伯爵家だから、男爵家の私には無理かな。でも、ルビアナちゃんは子爵家だから、いけるんじゃないの?」
「子爵家でも難しいですわ。でも、本当にあの黒い瞳がステキですわね。ね、レティシアちゃん」
「えっ?」
金髪の子供たちの中で、一人だけ黒髪のオスカー様はとても目立つ。他の子達より頭一つ分、背が高いし。だからつい見てしまう。
「あ、うん。えっと、その。のどが渇いたからお茶を飲んでくる!」
私は、二人に言い訳して、あわててその場を離れた。
ああもう、きっと顔が赤くなってる。
オスカー様をずっと見てたこと、きっと二人にバレてる。
だって、なんで? 5歳なのに、なんでこんなにイケメンなのよ?!
恐るべし上級貴族。顔立ちもだけど、身のこなしも、子供なのに小さい騎士って感じで、ついつい見てしまうんだもん!
前世も今世も男性に対して耐性がない私は、ふらふらしながら保護者のいる中庭のお茶会席の方に逃げて行った。
母様のフォローもしなきゃいけないしね。
私は大きな木に向って立ち、背後の子供たちに向って大声でかけ声を唱えた。
「ドラゴンさーんが、こーろんだ」
抑揚やリズムをつけて、速さを変えて唱えるのがポイント。
唱え終わってすぐに、ぱっと後ろを振り向いて、止まれずに動いた子供を手招きする。
初めての遊びだから、何人も捕まえた。
私と手をつないだ子供たちは、長い列になって救助を待つ。
「ドラゴーンさんが、ころんだっ!」
さすが貴族の子。カーテシーとかで鍛えているのかな。体幹がいいから、だんだん上手になってきたよ。じわじわと私の方へ近づいてくる。そして、動きを止めるタイミングもぴったりになった。でも、私にたどり着くまであと少しって所で、
「はい、最後の一人、リョウ君もちょっと動いたよ」
1回目だから、かなり厳しくチェックしたよ。やったね、全員を捕まえた。みんなが捕まって手をつなぐと、連帯感が生まれて仲良くなれるよね。
「もう一回やろう!」
「もう一回!」
「ぼくもいれて!」
子供たちがわらわら集まってきた。気分は幼稚園の先生だね。担任のマーガレット先生は、保護者とお茶会してて、園児の面倒なんてみないんだから、もうっ。
平民の召使い先生が、事故がないように各所で園児を見守っているけれど、貴族の子供の相手をして遊ぶのは難しいみたい。いいよ、先生の代わりにお姉さんがもう一度相手をしてあげよう。っていっても、クラスの中で私が一番背は小さいんだけどね。
「面白そうなことをしてる! 俺たちも仲間に入れて!」
薔薇組の子供たちがやって来た。その中でひときわ背の高い黒髪の男の子が目立っている。
黒髪だ! ってことは、もしかしてブラーク辺境伯家のご子息?
勇者の末裔の? 頭の中で、急いで貴族年鑑をめくって名前を思い出す。
「ごきげんよう。オスカー様」
オスカー様はブラーク辺境伯爵の三男だ。貴族年鑑でしっかり覚えたもんね。超上級貴族と勇者の末裔関係だけしか覚えてないけど。だって、元日本人としては、やっぱり黒髪黒目って親近感あるしね。
私の挨拶に続いて、側にいたルビアナちゃんとアニータちゃんたちもお辞儀した。辺境伯は上級貴族だから礼儀は大事。あとの薔薇組の子は? 知らないよ、伯爵家かな?
「ごめんね、みんなで遊んでるのに。俺たちも混ざっていい? 初めて見た遊びだけど、面白そうだよね」
オスカー様は私をまっすぐに見つめて、それから太陽のようにまぶしい笑顔を見せた。
なに、この子。すごく、さわやか!
オスカー様の後ろでワイワイ言っている男の子たちとはなんか種類が違う。キラキラしたオーラがある。黒い瞳が輝いてる。
「えっと、じゃ、もう一回やります。みんな、さっき引いた線の所で並んで! はじめの一歩は、がんばって大きく取ってね!」
私の呼びかけに、20人ぐらいの子供が線の後ろに並んだ。
背が高いオスカー様の一歩は大きかった。しかも、鍛えてるのか、変な体勢なのに、ぴくりともせずに止まってる。
「ドラゴンさんがころんだ……アニータちゃんとディヴィット君、こっち来てね」
動いてしまった子どもの名前を呼んで手をつないだ。
そしてまた、大きな木にむかって目をつぶって、かけ声を唱える。
「ドーラゴンさんが、こーろんだっ!」
素早く振り向くと、2、3人があせってぐらついた。ってオスカー様、もうこんなに近くに来たの? めちゃくちゃ早いよ。
オスカー様の真っ黒な目をじっと見つめても、微動だにしない。仕方なくあきらめて、捕まえた子供とつないだ左手をぶんっと振って、木の幹に顔を向けた。
「ドラゴンーさんーがこーろ……!」
「捕まえた!」
温かい手が私の左手を包んだ。びっくりして目を開けて見上げると、すぐ近くにオスカー様の顔があった。
「きゃー」
「わーっ」
歓声をあげながら、捕まえていた子達が私の左手から抜けて逃げていく。
あ、いけない。
「ストップー!」
逃げる子たちに向けて大声で叫んでから、まだ私の手を握っているオスカー様の手に、もう一方の手を重ねておいた。
「オスカー様、捕まえました」
そう言って見上げると、黒真珠のような瞳が私を映していた。
「え? 俺が捕まったの?」
驚いたようにオスカー様は目を見開いた。
「捕まってる子を救出したら、自分も逃げないといけないんですよ」
オスカー様は、しまったって顔をして私から手を放して、自分の頭に置いた。
そして、黒い前髪をかきあげる。
「ああ、もう、失敗したな。じゃあ次は、俺が鬼をやるんだね」
白い歯を見せて、さわやかに笑ったオスカー様に私は思わず見とれてしまった。
さっきまで握られていた手が、まだ温かい気がした。
どうしよう。……かっこいい。
いやいや、オスカー様は5歳児だよ。かっこいいって何? 何だっていうの? そりゃあ、今は私も5歳だけどっ、前世14歳なんだから、おかしいでしょ?! 5歳児にトキメクなんて。
我に返ってすごく恥ずかしくなったんで、「ドラゴンさんがころんだ」3回戦からは離脱宣言をして、少し離れた場所まで移動した。
砂場の横の椅子に座って、みんなと遊んでいるオスカー様をぼうっと見ていると、ルビアナちゃんとアニータちゃんが寄ってきた。
「オスカー様って、かっこいいですわね」
「辺境伯爵家だから、男爵家の私には無理かな。でも、ルビアナちゃんは子爵家だから、いけるんじゃないの?」
「子爵家でも難しいですわ。でも、本当にあの黒い瞳がステキですわね。ね、レティシアちゃん」
「えっ?」
金髪の子供たちの中で、一人だけ黒髪のオスカー様はとても目立つ。他の子達より頭一つ分、背が高いし。だからつい見てしまう。
「あ、うん。えっと、その。のどが渇いたからお茶を飲んでくる!」
私は、二人に言い訳して、あわててその場を離れた。
ああもう、きっと顔が赤くなってる。
オスカー様をずっと見てたこと、きっと二人にバレてる。
だって、なんで? 5歳なのに、なんでこんなにイケメンなのよ?!
恐るべし上級貴族。顔立ちもだけど、身のこなしも、子供なのに小さい騎士って感じで、ついつい見てしまうんだもん!
前世も今世も男性に対して耐性がない私は、ふらふらしながら保護者のいる中庭のお茶会席の方に逃げて行った。
母様のフォローもしなきゃいけないしね。
11
お気に入りに追加
1,450
あなたにおすすめの小説
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシャリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
何かと「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢は
だましだまし
ファンタジー
何でもかんでも「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢にその取り巻きの侯爵令息。
私、男爵令嬢ライラの従妹で親友の子爵令嬢ルフィナはそんな二人にしょうちゅう絡まれ楽しい学園生活は段々とつまらなくなっていった。
そのまま卒業と思いきや…?
「ひどいわ」ばっかり言ってるからよ(笑)
全10話+エピローグとなります。
追放聖女。自由気ままに生きていく ~聖魔法?そんなの知らないのです!~
夕姫
ファンタジー
「アリーゼ=ホーリーロック。お前をカトリーナ教会の聖女の任務から破門にする。話しは以上だ。荷物をまとめてここから立ち去れこの「異端の魔女」が!」
カトリーナ教会の聖女として在籍していたアリーゼは聖女の証である「聖痕」と言う身体のどこかに刻まれている痣がなくなり、聖魔法が使えなくなってしまう。
それを同じカトリーナ教会の聖女マルセナにオイゲン大司教に密告されることで、「異端の魔女」扱いを受け教会から破門にされてしまった。そう聖魔法が使えない聖女など「いらん」と。
でもアリーゼはめげなかった。逆にそんな小さな教会の聖女ではなく、逆に世界を旅して世界の聖女になればいいのだと。そして自分を追い出したこと後悔させてやる。聖魔法?そんなの知らないのです!と。
そんなアリーゼは誰よりも「本」で培った知識が豊富だった。自分の意識の中に「世界書庫」と呼ばれる今まで読んだ本の内容を記憶する能力があり、その知識を生かし、時には人類の叡知と呼ばれる崇高な知識、熟練冒険者のようなサバイバル知識、子供が知っているような知識、そして間違った知識など……旅先の人々を助けながら冒険をしていく。そうこれは世界中の人々を助ける存在の『聖女』になるための物語。
※追放物なので多少『ざまぁ』要素はありますが、W主人公なのでタグはありません。
※基本はアリーゼ様のほのぼの旅がメインです。
※追放側のマルセナsideもよろしくです。
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて
だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。
敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。
決して追放に備えていた訳では無いのよ?
妹が真の聖女だったので、偽りの聖女である私は追放されました。でも、聖女の役目はものすごく退屈だったので、最高に嬉しいです【完結】
小平ニコ
ファンタジー
「お姉様、よくも私から夢を奪ってくれたわね。絶対に許さない」
私の妹――シャノーラはそう言うと、計略を巡らし、私から聖女の座を奪った。……でも、私は最高に良い気分だった。だって私、もともと聖女なんかになりたくなかったから。
退職金を貰い、大喜びで国を出た私は、『真の聖女』として国を守る立場になったシャノーラのことを思った。……あの子、聖女になって、一日の休みもなく国を守るのがどれだけ大変なことか、ちゃんと分かってるのかしら?
案の定、シャノーラはよく理解していなかった。
聖女として役目を果たしていくのが、とてつもなく困難な道であることを……
【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。
みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」
魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。
ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。
あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で運命的な出会いをする。
【2024年3月16日完結、全58話】
誰にも愛されずに死んだ侯爵令嬢は一度だけ時間を遡る
月
ファンタジー
癒しの能力を持つコンフォート侯爵家の娘であるシアは、何年経っても能力の発現がなかった。
能力が発現しないせいで辛い思いをして過ごしていたが、ある日突然、フレイアという女性とその娘であるソフィアが侯爵家へとやって来た。
しかも、ソフィアは侯爵家の直系にしか使えないはずの能力を突然発現させた。
——それも、多くの使用人が見ている中で。
シアは侯爵家での肩身がますます狭くなっていった。
そして十八歳のある日、身に覚えのない罪で監獄に幽閉されてしまう。
父も、兄も、誰も会いに来てくれない。
生きる希望をなくしてしまったシアはフレイアから渡された毒を飲んで死んでしまう。
意識がなくなる前、会いたいと願った父と兄の姿が。
そして死んだはずなのに、十年前に時間が遡っていた。
一度目の人生も、二度目の人生も懸命に生きたシア。
自分の力を取り戻すため、家族に愛してもらうため、同じ過ちを繰り返さないようにまた"シアとして"生きていくと決意する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる