【完結】あなたの色に染める〜無色の私が聖女になるまで〜

白崎りか

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10 白い石

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 お母様のお古のクリーム色のドレスに、黄色のリボンを縫い付けた。襟元にはリボンで作った花を飾ってある。そうして、がんばって着飾った姿で、迎えに来た豪華な馬車から、王宮に初めて降り立つ。

 貴族の子女は18歳の成人時に、王宮舞踏会で社交界に正式にデビューするとか。
 色なしの私には縁のないことなのだけれど。

 青を基調にした公爵家の装飾とは違って、王宮は全てが金色だ。いたるところに黄金が飾られている。

 金の額縁の絵画に、金の花瓶に黄金の燭台。きらびやかな廊下を通って、案内された部屋の扉を侍女が叩いた。

「よく来てくれたね。さあ、中に入って」

 ドアを開けて出て来たのは、リュカ王子だった。黒い騎士服の上で短い金髪が輝いている。まぶしい笑顔を見せる王子様は、私の手を握り、部屋の中へと案内した。

 つながれた手から王子の熱が伝わって、緊張する。
 お兄様以外の男の人と、こんな風に手をつないだことなんてないから。リュカ様の手は、お兄様よりも熱を持っていて、大きくて、硬い。
 衝立の向こう側から声がかかった。

「誰を連れて来ても無駄よ。ちょっと変わった魔法が使えるぐらいじゃ、役に立たないんだから」

 王子に繋がれた手を引っ張られて、衝立の奥の応接間に連れて行かれる。そこには、私と同じくらいの年の少女がソファーで横になっていた。

 王子よりも淡い金髪は緩やかなカーブを描いて顔を縁どっている。意思の強そうな金色の瞳。整った顔をゆがめた美少女が、私を見あげて口を開いた。

「あなたまさか、色なしなの?」

 王女様は、すくっと起き上がり、私を頭から足先までじろじろと観察した。

「あ、あの、わた、私は」

 あわてて自己紹介しようとしたけれど、王女様の強い視線にさらされて、緊張して言葉が続かない。

「彼女がアリアだよ。綺麗な銀髪だろう?」

 私が発した震える声は、途中でリュカ王子にさえぎられる。
 彼は、私の髪を一房すくい取った。

「驚いたわ。でも、白じゃなくて、銀なのね。それに瞳も白くない。銀……、ううん、光の加減で」

「まばたきする瞬間、虹色に光って見えるだろう?」

 王女はすぐ前に来て、私に顔を近づける。
 いたたまれなくなって、うつむく。

「ちょっと、顔をあげなさい! 良く見えないでしょう」

 頬に手を当てて、無理やりに上を向かせられた。

「!」

「ルルーシア、乱暴なことはやめろよ」

 涙目になってしまった私に気が付いて、リュカ様が止めてくれる。

「ねえ、あなたは体が弱いの? その銀の目はちゃんと見えている? 色なしは視力が極端に弱いそうだけど、足はどう? 歩くのに支障はないの?」

「見えてます。その、私はとても健康です」

 生まれてから一度も病気になったことがない。そう説明すると、王女は考え込むように唇に指をあてた。

「色なしは魔力が全然ないから、病弱で早死にするっていうけど。……ねえ、あなたの母親は生きてるの?」

「亡くなりました。私が4歳の時に」

「出産時じゃないのね。色なしは、母親の魔力を奪って生まれるって言われてるわ」

「そんなの、迷信です。母は馬車の事故で亡くなったんです」

 でも、お母様の死は私のせい。私が色なしで生まれて来たから。
 お母様は、私のために馬車に乗って出かけたんだから。

「魔力がない者は生き残れないはずよ。だとしたら、あなたには本当は魔力があるってことになるわね。白じゃなくて、銀色だし」

「そう思うだろう? 彼女は、糸に色を付けることができるんだ。魔力がないとできないよ。初めて聞く魔法だけど、すごいことだよ」

「三大魔法以外を使える人は、たくさんいるわよ。だいたいが、くだらない魔法だわ。でも、使うためには魔力が必要よね。検査してみましょう。魔力計測石を持って来させて」

「手配済みだよ。ほら」

 リュカ様はにっこり笑って、ポケットから小さな白い石を取り出した。
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