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精霊は時を戻す
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気がついたら、真っ暗になっていた。隠れ場所から出てきても、生徒会室には誰も残っていない。
部屋の奥の窓から見えるのは細い爪のような白い月。
もっとよく見たくなって、窓を開けて、広いテラスを歩いた。
びゅーっと、強い風が吹いた。
後ろから。
後押しをしてもらっているようで、私は、
テラスの脇の机に登り、
柵を乗り越え、
暗闇に飛び込んだ。
衝撃はなかった。
空気の塊の上に私は落ちた。
もう一人。私の腕をつかむ白い長髪の男の人。
違う、ヒトではなく。
暗闇でも光る紅い瞳で、私を見つめるのは、美しい姿をした精霊だ。
初めて見るのにも関わらず、精霊だとなぜか分かる。この世界のヒトが私を妖精だと感じるように。
違うのだ。
「君はさ、飛び降りたぐらいじゃ死ねないよ」
その美しい精霊は美しい声で、憎たらしいことを言った。
「降ろして」
久しぶりに出した声はひび割れて、醜かった。この美しい精霊に聞かれるのは恥ずかしかった。
「いいね。その歪んだ絶望感」
精霊は私のもつれた髪を撫でて、結んでいたリボンを解いた。今の私の髪は蛇の髪を持つ地獄の醜女のように醜いだろう。この美しい人の前に、これ以上存在するのは耐えられなかった。
「妖精は美しいものを愛する。精霊は歪んだ心に惹きつけられる」
歌うように美貌の精霊は告げ、私の顎を持ち上げた。
「とはいえ、精霊も美しい容姿を好むものだ。では、時を戻そう。その忌々しい禁忌魔法を使う前に」
そして、私は禁忌の成長魔法を使うことになったマキシムと出会う前に巻き戻ったのだ。
部屋の奥の窓から見えるのは細い爪のような白い月。
もっとよく見たくなって、窓を開けて、広いテラスを歩いた。
びゅーっと、強い風が吹いた。
後ろから。
後押しをしてもらっているようで、私は、
テラスの脇の机に登り、
柵を乗り越え、
暗闇に飛び込んだ。
衝撃はなかった。
空気の塊の上に私は落ちた。
もう一人。私の腕をつかむ白い長髪の男の人。
違う、ヒトではなく。
暗闇でも光る紅い瞳で、私を見つめるのは、美しい姿をした精霊だ。
初めて見るのにも関わらず、精霊だとなぜか分かる。この世界のヒトが私を妖精だと感じるように。
違うのだ。
「君はさ、飛び降りたぐらいじゃ死ねないよ」
その美しい精霊は美しい声で、憎たらしいことを言った。
「降ろして」
久しぶりに出した声はひび割れて、醜かった。この美しい精霊に聞かれるのは恥ずかしかった。
「いいね。その歪んだ絶望感」
精霊は私のもつれた髪を撫でて、結んでいたリボンを解いた。今の私の髪は蛇の髪を持つ地獄の醜女のように醜いだろう。この美しい人の前に、これ以上存在するのは耐えられなかった。
「妖精は美しいものを愛する。精霊は歪んだ心に惹きつけられる」
歌うように美貌の精霊は告げ、私の顎を持ち上げた。
「とはいえ、精霊も美しい容姿を好むものだ。では、時を戻そう。その忌々しい禁忌魔法を使う前に」
そして、私は禁忌の成長魔法を使うことになったマキシムと出会う前に巻き戻ったのだ。
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