【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜

白崎りか

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赤いしずく

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 でも、そんな日々はすぐに終わった。

 魔法学の授業で、いつものように、教師の嫌がらせで廊下に立っていると、窓からA組の授業風景が見えた。

 魔法実践学の授業だ。この距離からでも、マキシムの金髪は木立の間から見つけ出すことができる。

 優秀な王太子は模範演技を行っていた。
 杖の先が魔法陣に触れ、光とともに大きな炎が立ち上がった。ごうごうと燃える炎。周囲の生徒が拍手を送る。そして、教師は、向かいに立つ女生徒になにか指示をした。

 その女生徒は、杖を振り上げると、一瞬でマキシムの炎を消し去った。

 響く歓声と拍手。
 マキシムも女生徒に笑顔を向け、握手の手を差し出した。

 女生徒は後ろで一つに結んだ黒髪をゆらし、マキシムの手をしっかりと握った。

 そう、不吉で無知で落ちこぼれのヒナコはもうどこにもいない。

 高い魔力と、誰も知らない知識、どこの国の言葉でも話せる言語力を持ったヒナコは、私のいる最下層のE組からマキシムのいる優秀なA組に編入したのだ。

 黒髪を厭っていた生徒たちも、こぞって友人になりたがり、教師は特別扱いを始めた。

 今はもう、私とランチを食べることもない。

 それどころか、昼休みはマキシム達、生徒会の役員と共に過ごすようになった。

 ぽとっ。
 赤い水が廊下に落ちた。
 ぽた。

 爪のあった場所から血が落ちた。
 赤い肉が見える場所のこの痛みだけが、心地良い。
 痛みで束の間、苛立ちが消えるのだ。
 いつの間にこんなことになったのだろう。

 落ちた血を上靴で踏んで、寮まで歩いて帰った。
 授業なんて、どうせ、もう、どうでもいい。

 部屋に戻ってすぐ、仕切りカーテンを開け、ヒナコの持ち物をハサミで切りさいた。


 その日から、私は一人部屋になった。
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