【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜

白崎りか

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二度目の恋はゆっくりと

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 今日はマキシムとの初めての顔合わせだ。

 執事に連れられて、王宮の庭園へと向かう。
 案内するはずの王宮侍女は、精霊執事のリウォードを見たとたん、口をぽかんと開けて見惚れてしまい、役に立たなかった。

 時の精霊リウォードは、何故か私の執事としてそばにいる。
 ローデグリーン家ではなく、私の専属執事だ。
 実家では放置されていた私の食事や衣装など、細かく世話をやく。

 薔薇の庭園が近づくに連れて不安になる私の手を、大きな手で包むように握ってくれる。

「大丈夫ですよ。お嬢様。私のほうがあんなのより、数億倍いい男ですから」

 時を戻す前の初顔合わせでは、マキシムの姿を見るなり、恋に落ちてしまった。同じ年のはずなのに、自分の幼い外見を恥じて、禁忌魔法に手を出した。
 もし、また、マキシムに夢中になってしまったら。
 不安でたまらない。

 薔薇の甘い匂いが立ち込める一角で、私は二度目の初顔合わせを経験した。




 何も、何も感じなかった!
 マキシムの金髪は記憶よりもくすんでいて、青い瞳はただの眼だった。

 ホッとすると同時に、こんなのが私の婚約者なのかと、酷くがっかりした。

 そう、この頃には私の一番は、リウォードに上書きされていたのだ。

 その後の私は、禁忌魔法に手を出すことはなく、全系統の魔法を操り、記憶魔法で学問を履修した。嬉しいことに、禁忌に触れることがない固有魔法に、成長魔法が新しく加わった。

 時を戻したことによる副反応らしい。

 すばらしい魔法だった。
 成長魔法を使うと、種はすぐに芽ぶいて、ぐんぐん大きくなり、大樹は大きな果実をたくさんつけた。

 卵はすぐにひび割れ、中から出てきた鳥の雛は見る間に大きくなり、空に羽ばたいた。
 その後、空を飛ぶ鳥を呪文一つで雛に変え、卵に戻すことさえもできた。

 私は、いつでも、その魔法で好きなだけ成長したり、今の姿に戻ることができるようになった。


 二度目の生活はとても楽しかった。

 ただ一つだけ、定例のマキシムとのお茶会を除いては。

 10歳を過ぎた頃からマキシムは、3歳の見た目から成長しない私をあからさまに疎んじていた。
 お茶会には遅れてきて、私を無視して、持ってきた本を読む。

 私はふと、いたずら心からマキシムに成長魔法をかけてみた。40年ほど。

 みるみるうちに、マキシムはふっくら太り、お腹がつきでてきた。そして、自慢げにかきあげていた金髪は、まばらになり頭皮をみせていた。

 まあ、美しくない。

 マキシムに抱いていた執着が、かけらも残っていないことに私は気がついた。

 突然変わった自分の姿にパニックをおこし、泣きわめくマキシムを無視して、私は精霊執事の方に手を伸ばす。
 うやうやしく私の手を取った執事は、妖艶に微笑んだ。

 成長魔法はすぐに解除してあげたけれど、定例のお茶会はなくなった。
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