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第100話 宝を守りし者たち
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ゅんっ。
かつっ!
急に目の前に飛んできた矢に驚いて、僕たちは立ち止まる。
行く手を照らすと、そこには先の部屋にいた魔物と同じ姿をした魔物がいた。
古めかしい弓と、射られたものと同じ矢を持っている。
魔物は僕たちを見て奇声を上げると、くるりと身を翻してばたばたと向こうへと走り去っていった。
足下に落ちた矢を拾って、ブランは魔物が走っていった方を見据えた。
「今のは多分見張りだな」
僕たちという侵入者の存在を見つけて、慌てて仲間に知らせに行ったということか。
どうやらこの先では、熱烈な歓迎が待っているようだ。
乱戦は必至……か。
嫌だなぁ、あいつら人間と同じくらいの知能を持っていそうなんだもの。
僕がブランたちと比べて弱いことを見抜かれて集中的に狙われたらどうしよう。
僕が溜め息をつくと、大丈夫ですよぅと僕の背中に手を触れてイオンが笑いかけた。
「シルカさんは私の後ろにいて下さぁい。シルカさんのことはちゃんと責任を持って守りますからぁ」
「……うん」
彼女の言う通り、僕は彼女の後ろに立った。
不意打ちされる可能性を考えたのかブランがハルバードを抜く。
僕たちは再び歩き始める。
通路の向こうから近付いてくる光。
僕たちはその光に正面から向かっていった。
暗かった視界が開ける。
そこは、今までに見た部屋よりも豪華な造りをした広い部屋になっていた。
朽ちてはいるが、元は立派な見栄えをしていたと分かる家具が壁に並んでいる。
壁には動物の首の剥製や旗、武器が掛けられて、天井には大きな吊りランプが下がっている。
部屋の奥には大きな扉。大きな錠前が下がっており、如何にも何かを厳重に保管しているであろうことが分かる。
床には高そうな絨毯が敷かれ、テーブルの上にはちょっと立派な作りをした宝箱が置かれている。
そしてそれを悠然とした態度で見つめている帽子を被った魔物と、その周囲に立っている人型の魔物が五匹。狼と思わしき魔物が三匹。先程僕たちに矢を射ってきた魔物の姿もある。
帽子を被った魔物は僕たちの方に目を向けてゆっくりと席を立つと、閉ざしていた口を開いた。
「……頭の宝を狙う輩か」
かなりくぐもってはいるが、確かに人の言葉で、それは言った。
「海賊王の宝は渡さねぇ。野郎共、やっちまえ!」
奴の周囲にいた魔物が一斉にこちらに振り向き、声を上げた。
狼が涎を垂らしながら唸り声を発し、近付いてくる。
ブランはこちらを肩越しにちらりと見て、言った。
「シルカは前に出るなよ、狙われたら面倒だからな!」
「言われなくたって分かってるよ!」
僕はイオンの後ろに隠れた。
「サモン・ダイアーウルフ」
イオンは狼の姿をした幻獣を呼び出した。
幻獣はイオンの隣で魔物たちを見据え、体勢を低く取った。
魔物たちが得物を振り上げ、向かってくる。
乱戦が、始まった。
かつっ!
急に目の前に飛んできた矢に驚いて、僕たちは立ち止まる。
行く手を照らすと、そこには先の部屋にいた魔物と同じ姿をした魔物がいた。
古めかしい弓と、射られたものと同じ矢を持っている。
魔物は僕たちを見て奇声を上げると、くるりと身を翻してばたばたと向こうへと走り去っていった。
足下に落ちた矢を拾って、ブランは魔物が走っていった方を見据えた。
「今のは多分見張りだな」
僕たちという侵入者の存在を見つけて、慌てて仲間に知らせに行ったということか。
どうやらこの先では、熱烈な歓迎が待っているようだ。
乱戦は必至……か。
嫌だなぁ、あいつら人間と同じくらいの知能を持っていそうなんだもの。
僕がブランたちと比べて弱いことを見抜かれて集中的に狙われたらどうしよう。
僕が溜め息をつくと、大丈夫ですよぅと僕の背中に手を触れてイオンが笑いかけた。
「シルカさんは私の後ろにいて下さぁい。シルカさんのことはちゃんと責任を持って守りますからぁ」
「……うん」
彼女の言う通り、僕は彼女の後ろに立った。
不意打ちされる可能性を考えたのかブランがハルバードを抜く。
僕たちは再び歩き始める。
通路の向こうから近付いてくる光。
僕たちはその光に正面から向かっていった。
暗かった視界が開ける。
そこは、今までに見た部屋よりも豪華な造りをした広い部屋になっていた。
朽ちてはいるが、元は立派な見栄えをしていたと分かる家具が壁に並んでいる。
壁には動物の首の剥製や旗、武器が掛けられて、天井には大きな吊りランプが下がっている。
部屋の奥には大きな扉。大きな錠前が下がっており、如何にも何かを厳重に保管しているであろうことが分かる。
床には高そうな絨毯が敷かれ、テーブルの上にはちょっと立派な作りをした宝箱が置かれている。
そしてそれを悠然とした態度で見つめている帽子を被った魔物と、その周囲に立っている人型の魔物が五匹。狼と思わしき魔物が三匹。先程僕たちに矢を射ってきた魔物の姿もある。
帽子を被った魔物は僕たちの方に目を向けてゆっくりと席を立つと、閉ざしていた口を開いた。
「……頭の宝を狙う輩か」
かなりくぐもってはいるが、確かに人の言葉で、それは言った。
「海賊王の宝は渡さねぇ。野郎共、やっちまえ!」
奴の周囲にいた魔物が一斉にこちらに振り向き、声を上げた。
狼が涎を垂らしながら唸り声を発し、近付いてくる。
ブランはこちらを肩越しにちらりと見て、言った。
「シルカは前に出るなよ、狙われたら面倒だからな!」
「言われなくたって分かってるよ!」
僕はイオンの後ろに隠れた。
「サモン・ダイアーウルフ」
イオンは狼の姿をした幻獣を呼び出した。
幻獣はイオンの隣で魔物たちを見据え、体勢を低く取った。
魔物たちが得物を振り上げ、向かってくる。
乱戦が、始まった。
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