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第78話 もう一人の来訪者
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食事の席は、和気藹々と言うには遠いが穏やかな雰囲気に包まれていた。
美味い料理は人を幸福な気分にさせる。料理を食べながら、王様と魔王は両国の和平について言葉を交わしていた。
今後、定期的に使者を送って両国の交流を深めていくこと。貿易を行い、物流を発展させていくこと。
ああ、本当に和平会談をしてるんだな、と思える会話が繰り広げられていた。
フランシスカは魔王たちの会話には興味がないようで、黙々と目の前の料理を食べている。
そんな彼女のことが気になるのか、王妃様は上品にミネストローネを食べながらちらちらと彼女の方に視線を送っていた。
とりあえず、晩餐会は成功したみたいだな。
俺は胸中で安堵の息を吐いた。
それと同時だった。
部屋の入口付近の天井に張られていたステンドグラスがけたたましい音と共に砕け散り、破片を纏いながら何かが落ちてきたのは。
それは、黒い鎧を纏った黒髪の若い男だった。
年の頃は俺と同じくらいだろう。決意を秘めた眼差しでまっすぐに正面を睨み、手にした剣の切っ先をすっとこちらに向けてくる。
「魔王! お前の命、貰う!」
「……!?」
酷く聞き覚えのあるその声に、俺の視界が一瞬くらりと揺れた。
若者が床を蹴る。
彼が向かう先には──ラザニアを食べていた魔王。
魔王はゆっくりと顔を若者に向けると、無造作に左手の指先で若者を指差した。
ばんっ!
壁に何かがぶち当たったような派手な音を立てて、若者が吹き飛んだ。入口の扉に背中から激突し、どさりと床に落ちる。
これに驚いたのは王様だ。彼は勢い良く席を立つと、若者の方を見て声を上げた。
「ケイ! 御主も此処に来ていたのか!」
「ケイ……」
俺は王様が口にした名前を口内で反芻して、若者の顔に注目した。
若者が床に伏せていた顔を上げる。
その顔が俺の記憶の中にある顔と全く同じ形をしているという事実に、俺は思わず声を張り上げていた。
「圭!」
「!」
圭の目が俺の方へと向く。
その目が、大きく見開かれた。
「……真央?」
どうやら、向こうも俺のことに気付いたようだ。
「真央、生きてたのか!」
身を起こしながら圭は言った。
剣を構え直しながら、彼は魔王をじっと睨む。
「真央、離れてろ! 魔王は俺が倒す、世界を平和にしてやるからな!」
「圭、やめろ! もう戦う必要はないんだ! 戦争はもう終わったんだよ!」
俺が必死に訴えかけるも、圭は全く聞いていない様子で床を蹴る。
魔王は静かに席を立つと、何処からか杖を取り出してその先端で宙にくるりと円を描いた。
「……これが人間の答か。何とも空しい茶番であろうな」
「違う!」
俺の叫びは魔王が放った衝撃波の音に掻き消された。
皆が見ている前で、衝撃波が圭の全身を包み込む。
ばらばらと柱が吹き飛んで、圭は床を滑るように仰向けに転がっていった。
美味い料理は人を幸福な気分にさせる。料理を食べながら、王様と魔王は両国の和平について言葉を交わしていた。
今後、定期的に使者を送って両国の交流を深めていくこと。貿易を行い、物流を発展させていくこと。
ああ、本当に和平会談をしてるんだな、と思える会話が繰り広げられていた。
フランシスカは魔王たちの会話には興味がないようで、黙々と目の前の料理を食べている。
そんな彼女のことが気になるのか、王妃様は上品にミネストローネを食べながらちらちらと彼女の方に視線を送っていた。
とりあえず、晩餐会は成功したみたいだな。
俺は胸中で安堵の息を吐いた。
それと同時だった。
部屋の入口付近の天井に張られていたステンドグラスがけたたましい音と共に砕け散り、破片を纏いながら何かが落ちてきたのは。
それは、黒い鎧を纏った黒髪の若い男だった。
年の頃は俺と同じくらいだろう。決意を秘めた眼差しでまっすぐに正面を睨み、手にした剣の切っ先をすっとこちらに向けてくる。
「魔王! お前の命、貰う!」
「……!?」
酷く聞き覚えのあるその声に、俺の視界が一瞬くらりと揺れた。
若者が床を蹴る。
彼が向かう先には──ラザニアを食べていた魔王。
魔王はゆっくりと顔を若者に向けると、無造作に左手の指先で若者を指差した。
ばんっ!
壁に何かがぶち当たったような派手な音を立てて、若者が吹き飛んだ。入口の扉に背中から激突し、どさりと床に落ちる。
これに驚いたのは王様だ。彼は勢い良く席を立つと、若者の方を見て声を上げた。
「ケイ! 御主も此処に来ていたのか!」
「ケイ……」
俺は王様が口にした名前を口内で反芻して、若者の顔に注目した。
若者が床に伏せていた顔を上げる。
その顔が俺の記憶の中にある顔と全く同じ形をしているという事実に、俺は思わず声を張り上げていた。
「圭!」
「!」
圭の目が俺の方へと向く。
その目が、大きく見開かれた。
「……真央?」
どうやら、向こうも俺のことに気付いたようだ。
「真央、生きてたのか!」
身を起こしながら圭は言った。
剣を構え直しながら、彼は魔王をじっと睨む。
「真央、離れてろ! 魔王は俺が倒す、世界を平和にしてやるからな!」
「圭、やめろ! もう戦う必要はないんだ! 戦争はもう終わったんだよ!」
俺が必死に訴えかけるも、圭は全く聞いていない様子で床を蹴る。
魔王は静かに席を立つと、何処からか杖を取り出してその先端で宙にくるりと円を描いた。
「……これが人間の答か。何とも空しい茶番であろうな」
「違う!」
俺の叫びは魔王が放った衝撃波の音に掻き消された。
皆が見ている前で、衝撃波が圭の全身を包み込む。
ばらばらと柱が吹き飛んで、圭は床を滑るように仰向けに転がっていった。
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