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第29話 ロールキャベツ

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 今回俺が作ろうと思っているのはロールキャベツだ。
 キャベツが主役の料理ではあるが、肉を多めに使えば食べごたえのある料理になるだろう。
 それじゃあ、作っていこう。
 まずはキャベツの葉をばらして塩茹でにし、芯まで柔らかくなったら取り出す。
 次にキャベツの中に入れる具作り。玉葱をみじん切りにして、挽き肉、牛乳に浸したパン粉、塩、胡椒、ナツメグを混ぜ合わせて粘りが出るまでしっかりと捏ねる。
 捏ねたら適当な大きさに分けて、キャベツの葉で包んでいく。この時小さい葉から包んでいき、一回り大きい葉で包んでいくようにすると綺麗に包めるぞ。
 次に、ソース作り。フライパンに油をしいて、薄切りにした玉葱とエリンギを入れて、炒める。
 野菜がしんなりとしたら水、湯剥きして潰したトマト、コンソメ、砂糖、ケチャップを加えて塩と胡椒で味を調える。
 そこに作ったロールキャベツを並べて、煮込む。大体三十分から四十分ほどで完成だ。
 今回はトマト味に仕立てたが、ポトフの具として入れても美味しいと思う。色々アレンジが利くのがこのレシピの優秀なところだな。
 どうせまたシーグレットが味見するんだろうから、最初の一個は皿に盛り付けて出してやった。
「できたぞ。ロールキャベツだ」
「肉をキャベツで包んだのか。斬新な発想だな」
 シーグレットは戸棚からナイフとフォークを取り出して、ロールキャベツを半分に割った。
 うん、中にもよく火が通ってるみたいだな。
 彼は一口サイズにロールキャベツを切り分けて、トマトソースによく絡めて頬張った。
 しばし無言で口を動かしていたが、ふーっと鼻から長い息を吐いて、開口する。
「キャベツの甘みとトマトの酸味がいい具合に肉の味を引き立ててやがる。そしてこの食べごたえ。フリカデレに劣らねぇ肉の存在感だ」
 美味い、と彼は言った。
 料理人たちが喉を鳴らしながらシーグレットの食べかけのロールキャベツに注目する。
 本当に、すぐに食いたがるなこいつらは。
 俺は鍋に新しいキャベツを入れながら、言った。
「皆の分も作るから料理を手伝ってくれよ。ノルマには全然足りてないんだからさ」
「マオの言う通りだ。オレらが食うのは後でもできる、今は兵たちの食事を作る方が先だ」
 シーグレットは料理人たちに調理を始めるよう言いつけた。
 腹減った、と言いながら料理人たちが野菜やフライパンを持って各々の作業場に散っていく。
 何百、という数のロールキャベツを作らなければならないので厨房はフル回転だったが、三時間ほどでノルマを達成することができた。
 もちろん、俺たちが食べる分のロールキャベツもちゃんと作ったぞ。
 兵士たちの分のロールキャベツは大鍋に入れて、配膳担当の料理人が急ぎ足で大食堂に運んでいった。
「ああ、お腹ぺこぺこだよ。いい匂いがしてると我慢できなくなるから困っちゃうね」
 棚から皿を取り出しながら苦笑するリベロ。
 彼はフライパンに残っているロールキャベツを一個ずつ丁寧に盛りつけ始めた。
「僕たちも食べよう?」
「おっしゃ夕飯だ! やっと食えるぞ!」
 わっとロールキャベツに群がる料理人たち。
 そんなに慌てて取らなくたってちゃんと人数分あるんだから食いっぱぐれることはないっての。
「お前ら砂糖に群がる蟻じゃねぇんだからちゃんと並べ!」
 流石にこれには呆れたらしい。シーグレットが怒鳴っている。
 俺も腹減ったな。夕飯食べよう。
 腹を撫でながら、俺も食事を貰うべく列の最後尾に並んだのだった。
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