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第4話 勇者、認められる
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結局。シーグレットが遠慮なしに作ったコロッケを食いまくるので俺は十回もコロッケを揚げる羽目になった。
因みに、他の料理人連中にもコロッケは好評だった。皆「片手で食べられるのが手軽で美味い」と言って、俺が揚げた傍からコロッケをかっさらっていくんだもんな。途中から大皿の意味がなくなってたよ。
シーグレットはこれで俺の料理の腕前を見るって言ってたけど、これは文句なしだろ? 料理長をも唸らせるまかないをちゃんと作ってみせたんだから。
「お前の料理の腕前だが」
俺を正面に立たせて、シーグレットは腕を組んでいた。
一呼吸の間を置いて、言う。
「合格だ」
当然だろう。これで不合格なんて言ったら暴れるぞ俺は。
……あぁ、この首輪のせいでそれはできないんだっけ。
「あんな料理は見たことねぇ。人間てぇのは、毎日あんな美味いもんを食ってるんだな。ちょっと羨ましくなったぜ」
いや、それは俺が異世界人だから作れた料理なのであって、この世界の人間が作る料理が同じものってわけじゃないんだぞ。
……まあ、それを言ったところで俺の境遇が変わるわけじゃないから、いちいち言ったりはしないけど。
「これだけの腕を持つお前を下働きにしとくのは惜しい。料理長権限で一人前の料理人として扱ってやる。これからは王のため、城で働く兵士たちのために料理を作れ」
何か勝手に昇進したよ。
これは俺の料理の腕が認められたってことで……喜んで、いいのか?
人間なんかって言ってた割には、種族差はそれほど気にしていないみたいだな。
その辺りは人間よりも心が広いなって思う。
「そして、まかない。美味いもんを作れ。期待してるからな」
……ああ、本音はそっちか。
魔族は人間よりも欲望に忠実なんだな。
下手に建前を取り繕おうとする人間よりも付き合いやすいかもしれないとほんの少しだけ思った俺だった。
「さて。これから夕飯の支度に取りかかるわけだが、少し時間に余裕がある」
壁に掛けられた物々しい形の時計を見ながら、シーグレットは言った。
「今のうちに、お前が今日から寝泊まりする部屋を案内してやる。おい、グレン」
「はい」
グレンと呼ばれた料理人の一人が返事をして前に出てきた。白い狼の顔をした細身の獣人だ。
「お前と相部屋だ。連れていってやれ」
「分かりました」
グレンは俺の方をちらりと見ると、付いてこいと言って厨房から出ていった。
そうか、厨房は基本的に昼夜関係なく回転してるから、そこに勤める料理人は城で暮らしてるんだな。
当然王族のような煌びやかな生活をしているわけじゃないんだろうけど、城暮らしって聞くとちょっと期待したくなる。
何より、まともな生活ができそうだというのが嬉しい。
比較すべきじゃないんだろうけど、牢屋は居心地最悪だったからな。
グレンは厨房から少し進んだ位置で立ち止まり、俺が厨房から出てくるのを待っていた。
「こっちだ」
俺はグレンの後に付いて、蝋燭の匂いが漂う煉瓦造りの廊下を進んでいった。
因みに、他の料理人連中にもコロッケは好評だった。皆「片手で食べられるのが手軽で美味い」と言って、俺が揚げた傍からコロッケをかっさらっていくんだもんな。途中から大皿の意味がなくなってたよ。
シーグレットはこれで俺の料理の腕前を見るって言ってたけど、これは文句なしだろ? 料理長をも唸らせるまかないをちゃんと作ってみせたんだから。
「お前の料理の腕前だが」
俺を正面に立たせて、シーグレットは腕を組んでいた。
一呼吸の間を置いて、言う。
「合格だ」
当然だろう。これで不合格なんて言ったら暴れるぞ俺は。
……あぁ、この首輪のせいでそれはできないんだっけ。
「あんな料理は見たことねぇ。人間てぇのは、毎日あんな美味いもんを食ってるんだな。ちょっと羨ましくなったぜ」
いや、それは俺が異世界人だから作れた料理なのであって、この世界の人間が作る料理が同じものってわけじゃないんだぞ。
……まあ、それを言ったところで俺の境遇が変わるわけじゃないから、いちいち言ったりはしないけど。
「これだけの腕を持つお前を下働きにしとくのは惜しい。料理長権限で一人前の料理人として扱ってやる。これからは王のため、城で働く兵士たちのために料理を作れ」
何か勝手に昇進したよ。
これは俺の料理の腕が認められたってことで……喜んで、いいのか?
人間なんかって言ってた割には、種族差はそれほど気にしていないみたいだな。
その辺りは人間よりも心が広いなって思う。
「そして、まかない。美味いもんを作れ。期待してるからな」
……ああ、本音はそっちか。
魔族は人間よりも欲望に忠実なんだな。
下手に建前を取り繕おうとする人間よりも付き合いやすいかもしれないとほんの少しだけ思った俺だった。
「さて。これから夕飯の支度に取りかかるわけだが、少し時間に余裕がある」
壁に掛けられた物々しい形の時計を見ながら、シーグレットは言った。
「今のうちに、お前が今日から寝泊まりする部屋を案内してやる。おい、グレン」
「はい」
グレンと呼ばれた料理人の一人が返事をして前に出てきた。白い狼の顔をした細身の獣人だ。
「お前と相部屋だ。連れていってやれ」
「分かりました」
グレンは俺の方をちらりと見ると、付いてこいと言って厨房から出ていった。
そうか、厨房は基本的に昼夜関係なく回転してるから、そこに勤める料理人は城で暮らしてるんだな。
当然王族のような煌びやかな生活をしているわけじゃないんだろうけど、城暮らしって聞くとちょっと期待したくなる。
何より、まともな生活ができそうだというのが嬉しい。
比較すべきじゃないんだろうけど、牢屋は居心地最悪だったからな。
グレンは厨房から少し進んだ位置で立ち止まり、俺が厨房から出てくるのを待っていた。
「こっちだ」
俺はグレンの後に付いて、蝋燭の匂いが漂う煉瓦造りの廊下を進んでいった。
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