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第59話 邪神の目覚め
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森は、火の海になっていた。
炎の勢いが激しく、熱くて近くまで行くことができない。
先に此処に到着していたエルは、無表情で森が燃える様子を見つめていた。
「エル!」
「……熱い。近くに行けない」
「大変、消さなくちゃ!」
メネは魔法を唱え、森に大粒の雨を降らせた。
雨は炎の勢いを弱め、少しずつ消していく。
しかし燃えている範囲が広すぎて、なかなか一度で全部をとはいかない。
「エルも手伝って! メネだけじゃ手が回らないよ!」
メネがエルに助けを求めると、エルは怪訝そうにメネの方を見た。
「手伝う……この燃えているのを、消すの?」
「そうだよ!」
「分かった」
エルはこくりと頷いて、掌を重ねて森へと翳した。
彼女の手から、大量の水が洪水のように溢れ出した。
それは巨大な津波となって、森を飲み込んでいく。
水に覆われた炎は瞬く間に消えて、後には黒焦げになった木が残った。
流石、エルが使う魔法だ。威力がメネの魔法と全然違う。
「凄い……」
森が鎮火していく様子を見て驚きの声を漏らすメネ。
僕も呆気に取られて目の前の光景をただ見つめるばかりだ。
森を焼いていた炎は、エルの活躍によって無事に消し止められた。
水が引いた森に、僕たちは降り立った。
辺りはすっかり水浸しだが、それは時間が経てば地面が水気を吸って元に戻るだろう。
「……酷い。ぼろぼろになっちゃったね」
半ば炭化した木に手を触れてメネが呟く。
エルはきょろきょろと落ち着きなく辺りを見回している。
その視線が──ある一点を捉えて、動きを止めた。
「……何かいる」
彼女がそう言った、その時だった。
彼女が目を向けている先に生えていた木が、横から加えられた力に押されてめりめりと倒れた。
何かが──来る。
僕たちは身を寄せ合って、倒れた木のある方に注目した。
ずるずる、と何か巨大なものを引き摺る音が近付いてくる。
そして、遂にそれが木を薙ぎ倒しながら目の前に姿を現した。
微妙に灰色がかった白い鱗に覆われた長い胴体。満月のように大きくて丸い金色の瞳。だらりと垂れている長い舌と、剣のように鋭い牙。
それは、全長が五十メートル以上もある、巨大な蛇だった。
蛇はしゅーしゅーと空気が漏れるような音を発しながら、舌をちろちろさせて僕たちのことを見つめている。
「蛇……」
蛇を睨むエル。
僕は全身から血の気が引いていくのを感じた。
蛇……まさか……
蛇は体を伸ばしてこちらに顔を近付けてきた。
メネは蛇を見据えて、叫んだ。
「まさか、復活してたなんて……でも、貴方の好きなようにはさせないよ! ウロボロス!」
──やはり。
僕は確信した。
神界より堕天し、地上に封印された邪神。
『蛇』と呼ばれる神が、三十年の眠りから目覚めたのだということを。
炎の勢いが激しく、熱くて近くまで行くことができない。
先に此処に到着していたエルは、無表情で森が燃える様子を見つめていた。
「エル!」
「……熱い。近くに行けない」
「大変、消さなくちゃ!」
メネは魔法を唱え、森に大粒の雨を降らせた。
雨は炎の勢いを弱め、少しずつ消していく。
しかし燃えている範囲が広すぎて、なかなか一度で全部をとはいかない。
「エルも手伝って! メネだけじゃ手が回らないよ!」
メネがエルに助けを求めると、エルは怪訝そうにメネの方を見た。
「手伝う……この燃えているのを、消すの?」
「そうだよ!」
「分かった」
エルはこくりと頷いて、掌を重ねて森へと翳した。
彼女の手から、大量の水が洪水のように溢れ出した。
それは巨大な津波となって、森を飲み込んでいく。
水に覆われた炎は瞬く間に消えて、後には黒焦げになった木が残った。
流石、エルが使う魔法だ。威力がメネの魔法と全然違う。
「凄い……」
森が鎮火していく様子を見て驚きの声を漏らすメネ。
僕も呆気に取られて目の前の光景をただ見つめるばかりだ。
森を焼いていた炎は、エルの活躍によって無事に消し止められた。
水が引いた森に、僕たちは降り立った。
辺りはすっかり水浸しだが、それは時間が経てば地面が水気を吸って元に戻るだろう。
「……酷い。ぼろぼろになっちゃったね」
半ば炭化した木に手を触れてメネが呟く。
エルはきょろきょろと落ち着きなく辺りを見回している。
その視線が──ある一点を捉えて、動きを止めた。
「……何かいる」
彼女がそう言った、その時だった。
彼女が目を向けている先に生えていた木が、横から加えられた力に押されてめりめりと倒れた。
何かが──来る。
僕たちは身を寄せ合って、倒れた木のある方に注目した。
ずるずる、と何か巨大なものを引き摺る音が近付いてくる。
そして、遂にそれが木を薙ぎ倒しながら目の前に姿を現した。
微妙に灰色がかった白い鱗に覆われた長い胴体。満月のように大きくて丸い金色の瞳。だらりと垂れている長い舌と、剣のように鋭い牙。
それは、全長が五十メートル以上もある、巨大な蛇だった。
蛇はしゅーしゅーと空気が漏れるような音を発しながら、舌をちろちろさせて僕たちのことを見つめている。
「蛇……」
蛇を睨むエル。
僕は全身から血の気が引いていくのを感じた。
蛇……まさか……
蛇は体を伸ばしてこちらに顔を近付けてきた。
メネは蛇を見据えて、叫んだ。
「まさか、復活してたなんて……でも、貴方の好きなようにはさせないよ! ウロボロス!」
──やはり。
僕は確信した。
神界より堕天し、地上に封印された邪神。
『蛇』と呼ばれる神が、三十年の眠りから目覚めたのだということを。
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