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第53話 不調
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創造神のエルの卵を生命の揺り籠に置いて十日が過ぎた。
卵が孵る気配はまだない。
その間にも世界はどんどん再生し、何もない荒地だった大地は今や瑞々しい緑が茂る平原となった。
川の傍には小さいながらも森ができ、色々な動物が暮らす楽園になっていた。
山の麓にあった集落は、小さい畑を作って作物を育てる暮らしを送っていた。
土の具合が良く日の光をよく浴びるから良い作物が採れるんだと言って喜んでたよ。
時折雨が降り、大地を潤して。
すっかり、世界は生命溢れる元の姿に戻ったようだった。
その分、この地の何処かに眠った邪神が目覚める時は近付いているということで。
早くエルが生まれてこないかなと、僕の心の中には僅かな焦りが生じていた。
メネは焦っても仕方ないよと言うけれど、僕は人間だから、落ち着かないのも無理はないと思うんだ。
早く生まれてきてほしい。そう願いながら、僕は今日も牧場と家を往復するいつもの暮らしを送っていた。
──それから更に三日が過ぎ。
それまで変化のなかった日常に、僅かな変化が生じた。
「おはよう、キラ。朝だよー」
「…………」
僕は頭の上から降ってくるメネの言葉を聞きながら、閉じていた目をゆっくりと開いた。
ぼんやりした視界に、僕の顔を覗き込んでいるメネの顔が映る。
「今日の朝御飯も自信作だよ! 早く起きて、顔洗って!」
「……うん」
僕は小さく返事をして上体を起こした。
くらりとした揺れを、頭が感じた。まるで脳味噌を揺さぶられているようで、僕は思わず眉間に手を当てて目をぎゅっと閉じた。
そのまま少し静かにしていると揺れが収まったので、何でもないと思いながらベッドから出ようと足を布団の外に出した。
立ち上がろうとして──再び全身を襲う、眩暈。
たまらず、僕は床に崩れ落ちてしまった。
物音に気付いたメネが、部屋の入口のところで振り返ってくる。
「キラ? どうしたの?」
「…………」
僕はふーっと深く息を吐いた。
眩暈が治まらない。ぐらぐらと揺れる頭は、このまま横になってしまえと体に訴えてくる。
目元を掌で覆う僕の様子を見て、ようやくただ事でないと悟ったらしい。素っ頓狂な声を上げて、メネは僕の傍に飛んできた。
「キラ! 大丈夫!?」
メネの甲高い声が頭に響く。
僕は何とか顔を上げて、彼女に言った。
「ごめん……何か眩暈が酷い。寝てていい?」
「寝てていいよ! と言うよりそんな状態で起きちゃ駄目だよ!」
僕の腕を掴んで引っ張ろうとするメネ。
何とか立てるから、と言って、僕は静かに立ち上がり再びベッドに入った。
横になっていると、ちょっとだけ眩暈が治まる。
深呼吸をして、僕は心配そうに僕のことを見てくるメネに目を向けた。
「朝御飯……せっかく作ってくれたのに、食べられそうにない……ごめんね」
「そんなの別にいいよ! とにかく寝てて!」
メネは僕の額に手を当てて、眉間に皺を寄せると部屋を出て行った。
熱……あるのかな。自分だとよく分からない。
とにかく、今は、寝たい。
僕は布団を肩までしっかりと被って、目を閉じた。
そのまま再び眠りにつくまで、大した時間は要さなかった。
卵が孵る気配はまだない。
その間にも世界はどんどん再生し、何もない荒地だった大地は今や瑞々しい緑が茂る平原となった。
川の傍には小さいながらも森ができ、色々な動物が暮らす楽園になっていた。
山の麓にあった集落は、小さい畑を作って作物を育てる暮らしを送っていた。
土の具合が良く日の光をよく浴びるから良い作物が採れるんだと言って喜んでたよ。
時折雨が降り、大地を潤して。
すっかり、世界は生命溢れる元の姿に戻ったようだった。
その分、この地の何処かに眠った邪神が目覚める時は近付いているということで。
早くエルが生まれてこないかなと、僕の心の中には僅かな焦りが生じていた。
メネは焦っても仕方ないよと言うけれど、僕は人間だから、落ち着かないのも無理はないと思うんだ。
早く生まれてきてほしい。そう願いながら、僕は今日も牧場と家を往復するいつもの暮らしを送っていた。
──それから更に三日が過ぎ。
それまで変化のなかった日常に、僅かな変化が生じた。
「おはよう、キラ。朝だよー」
「…………」
僕は頭の上から降ってくるメネの言葉を聞きながら、閉じていた目をゆっくりと開いた。
ぼんやりした視界に、僕の顔を覗き込んでいるメネの顔が映る。
「今日の朝御飯も自信作だよ! 早く起きて、顔洗って!」
「……うん」
僕は小さく返事をして上体を起こした。
くらりとした揺れを、頭が感じた。まるで脳味噌を揺さぶられているようで、僕は思わず眉間に手を当てて目をぎゅっと閉じた。
そのまま少し静かにしていると揺れが収まったので、何でもないと思いながらベッドから出ようと足を布団の外に出した。
立ち上がろうとして──再び全身を襲う、眩暈。
たまらず、僕は床に崩れ落ちてしまった。
物音に気付いたメネが、部屋の入口のところで振り返ってくる。
「キラ? どうしたの?」
「…………」
僕はふーっと深く息を吐いた。
眩暈が治まらない。ぐらぐらと揺れる頭は、このまま横になってしまえと体に訴えてくる。
目元を掌で覆う僕の様子を見て、ようやくただ事でないと悟ったらしい。素っ頓狂な声を上げて、メネは僕の傍に飛んできた。
「キラ! 大丈夫!?」
メネの甲高い声が頭に響く。
僕は何とか顔を上げて、彼女に言った。
「ごめん……何か眩暈が酷い。寝てていい?」
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僕の腕を掴んで引っ張ろうとするメネ。
何とか立てるから、と言って、僕は静かに立ち上がり再びベッドに入った。
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深呼吸をして、僕は心配そうに僕のことを見てくるメネに目を向けた。
「朝御飯……せっかく作ってくれたのに、食べられそうにない……ごめんね」
「そんなの別にいいよ! とにかく寝てて!」
メネは僕の額に手を当てて、眉間に皺を寄せると部屋を出て行った。
熱……あるのかな。自分だとよく分からない。
とにかく、今は、寝たい。
僕は布団を肩までしっかりと被って、目を閉じた。
そのまま再び眠りにつくまで、大した時間は要さなかった。
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