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第151話 大人になるということ
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バルムンクを思い切り殴った右腕が痛む。
俺はそれに自分で回復魔法を掛けながら、地面の上で全く動かない黒騎士へと歩み寄った。
バルムンクは、全身で息をしながら虚ろに正面を──空を、見上げていた。
ひゅーひゅーと掠れた笛の音のような音を立てている息。口から泡を立てながら流れ出ている血が鮮やかで毒々しい。
意識はあるようだが……俺が目の前に来て顔を覗き込んでも、何の反応も示さない。
まるで、壊れて捨てられた人形のように……微動だにもしなかった。
「……おい」
「……完敗、だ。召喚勇者、ハル」
枕元に膝をついて呼びかけると、掠れた声で奴は言った。
「我の剣が、通用……せぬとはな。極限まで己を強め、その力を持ってしても、お前を傷付けることは、叶わなかった。もはや、我に……お前に対抗できる力はない。全力を出し、敗れたのならば……悔いはない。所詮、我という存在はその程度のものでしかなかった……ということだ」
「……白々しい嘘をつくな。馬鹿野郎が」
俺は眉間に皺を寄せて、奴の言葉を遮った。
「あんたは……最初から、俺を殺す気なんてなかったんだろ。その必要もないってくらい能力で自分を強化して、わざと攻撃を全部外して、自分の体をぶっ壊して……そうして、あんたは俺と本気で戦ってるふりをして、本心では俺に自分のことを殺させようとしてた。そうだろ」
「…………」
バルムンクは何も答えない。
その沈黙こそが、俺が今言った言葉が正しいという何よりの証拠であることを、物語っていた。
「あんたは、迷ってたんだ。本心では魔帝の傍から離れて自分に素直に生きたいって思ってて、でも立場上そう言い出せなくて、悩み抜いた末に……魔帝の下僕という絶対悪として、俺に倒される道を選んだ。自分が勇者に殺されることで自分がしてきたことを清算しようと考えたんだろ。……馬鹿か、死んで全部をなかったことにするとか、そんなのは究極の甘えなんだよ。本当に子供らしい発想だ、このくそったれが!」
俺は怒鳴って回復魔法を唱えた。
多めに魔力を費やして発動させた魔法は、バルムンクの全身の傷を癒していく。
俺の技量では、粉微塵に砕けた骨は何とか形が戻る程度で、罅までは完全に消えはしないだろう。だが、くっつきさえすれば、動くことはできるようになるはずだ。
バルムンクが驚いた顔をして俺のことを見ている。
「……何を、する気だ。我の傷を癒すだと? そのようなことを……」
「やかましい。勝った俺が負けたあんたを好きにしていいのなら、俺はそうさせてもらう。あんたの指図は受けん!」
やがて。見た目だけではあるが、バルムンクの負傷は完全に癒えた。
バルムンクは疲れ切った溜め息をついて、俺から視線をそらした。
「……敗者に対する、情けか……実に下らん。そのような施しを受けて、我が泣いて礼を言うとでも思ったか。情けを掛けてくれると言うのなら……我を倒した後、一思いに心臓を潰すなり何なりしてくれれば良かったものを。生き恥を晒すのは騎士の恥。お前は、本当に甘い……我を生かしたところで、今更意味など……」
「世の中を甘く見てるのはあんたの方なんだよ、いい加減に分かれ、このクソガキが!」
俺はバルムンクの胸倉を掴んで無理矢理相手を起き上がらせて、その頬を思い切りひっぱたいた。
ばしん、と大きな音が立つ。頬を張られたバルムンクが、呆気に取られた様子で俺の顔を見ている。
その丸くなっている目に向かって、言ってやる。
「人生ってのはな、失敗したって生きてる限り何度だってやり直せるんだよ! 諦めさえしなけりゃ、誰にだって前に向かって進んでいくことができる! 一度道を間違えたって、それを間違えたと認めて正しい道を選び直せる権利があるんだ! 俺にだってできることが、あんたに……お前に、できないなんてことはないだろうが! その可能性を見もしないで丸ごと捨てて死ぬなんてのは究極の馬鹿がやらかすことだ! 死ねば全部が許されるってのはガキの発想なんだよ! お前はこの世界じゃもう立派な大人なんだから、駄々を捏ねて甘ったれるのは卒業しろ!」
突き放すように胸倉から手を離すと、奴は何の抵抗もせずにそのままどさりと地面の上に転がった。
相変わらず、奴の目は俺のことを見ようとしない。虚ろに何もないところを彷徨っている。
俺は静かに息を吐き、言葉を続ける。
「……自分の意思で自分が本当にやりたいことを見つけて、それに向かって自分の足で歩け。お前には……それができるだけの、力があるんだから。俺たちと一緒に来いとは言わない。お前が考え抜いた末にやっぱり魔帝の傍で生きるって決めたのなら、それはそれで構わない。それがお前が決めた人生なんだから、それをどうこう言う権利なんて俺にはないからな……後は、好きにしろ。お前の、自由だ」
「…………なあ、おっさん」
しばしの沈黙の後。奴は、若者の顔をして開口した。
「オレは……一体、何を何処で間違えちまったんだろうなぁ……どうすれば、良かったのかな。あんたには、分かるか?」
迷える若者としての、その言葉に。
俺は微苦笑しながら、言葉を返す。
「……そんなものは自分で考えろ。自分で考えて、自分で答えを見つけて、自分で歩け」
そっと、埃を被ってぱさついた金の髪を、撫でてやる。
「大人になるってのは……そういうことだ」
「…………そうか」
ふっ、と口元に笑みを浮かべるバルムンク。
俺がひっぱたいた左の頬に手を当てて、肩を揺らす。
「……ああ、痛ぇ。今までに食らってきたどんな魔法よりも、武器で斬られた痛みよりも、比べ物にならねぇくらいに痛ぇよ。何でだ、何で、なんだよ……こんな、貧弱なおっさんの、屁でもねぇビンタ一発だってのに……」
声が、震えを帯びていく。
涙を筋状に零し、歯をカチカチと鳴らしながら、奴は言った。
「……何で、こんなに、心が痛ぇんだよ……畜生……!」
「当たり前だろ、そんなことは」
俺はゆっくりと膝を伸ばして立ち上がる。
表情をくしゃくしゃにして泣いている相手に、優しく告げる。
「親が子供を殴るのは、憎いからじゃない。本気でそいつを大事に思ってるから、愛してるから、道を踏み外した時に正しい道がある方を見ることができるように、叩くんだ。それと同じだよ。あんたは俺の子供じゃないし、付き合いもそこまで長くはなかったが……それでも、俺は今でもあんたを大事な家族同然の存在だって思ってる。前にも、言っただろうが。忘れたか? 俺なりの愛が篭もってる分、響いたんだろうさ……有難いと思って、受け取っておけ」
「……愛とか……気色悪い、こと、言うんじゃねぇよ……おっさん風情が……!」
ぐすっと鼻をすすって、奴は真っ赤になった目で俺のことを睨んだ。
はぁ、と息を吐き、言う。
「……行けよ。もう、オレには用なんてねぇだろ……オレはもう此処から動く気力もねぇし、あんたを追いかける気もねぇ。自由にしていいって言うんなら、好きにさせてもらうわ。此処で負け犬らしく、寝てるからよ……さっさと、オレの前から消えやがれ。目障りだ」
けっ、と唾を吐くように毒づいて、双眸を閉ざす。
それきり、奴が口を開いて何かを言うことは、なかった。
俺は肩を竦めてバルムンクの傍から離れ、仲間たちが囚われている魔血の檻の傍へと向かう。
そこに腰掛けて事の成り行きを眺めていたユーリルが、呆れたように力の抜けた笑いを零しながら地上へと飛び降りてきた。
「……やれやれ、日頃から自分のことを心なき道具呼ばわりしていた割には、結局は彼も愛情に飢えた単なる子供だったというわけですか。全く、いつの時代も子供というものは自分の言動に責任を持てなくて困ったものですね。呆れてものも言えませんよ」
「そういう言い方をするな。あいつだって……人間なんだ。ちゃんと心があるんだ。何もおかしいところなんてないだろ」
「最初に自分をそう称したのは彼自身ですよ? 私は別に……まあ、良いです。此処で私と貴方がこんなことで言い争っても不毛なだけです。無駄なことはやめましょう」
ユーリルは右手を大きく円を描くようにすいっと振るった。
彼の背後にあった魔血の壁が、びきっと音を立てながら砕け散る。
囚われていたフォルテたちが、真紅の欠片を纏いながら地面の上に落ちてきた。怪我は……していないようだ。
「では……次は、この私がお相手致します。此処では何ですから、どうぞ、こちらへ。私たちが戦うに相応しい舞台へと、御案内致しましょう」
そう言って彼は俺たちに背を向けると、魔帝の城がある崖の方へと歩いて行った。
入口の真正面に立ち、そこに向かって右手を翳す。
すると、目の前が白く光り輝き──レースを編んだような、網模様の光の橋が現れた。
崖を横切るように架けられた光の橋の上を、ユーリルは歩いていく。
迷うことなく。殺し合いの、舞台に向かって。
もしも、俺が此処で足を止めていたら──
あいつとは、永遠に戦い合わずに済むのだろうか。
俺たちは魔帝を倒す。そのために此処まで来た。
だから今更、歩みを止めることなんてありえない。目の前に誰が立ち塞がろうと、前へと進み続けなければならない。
それは、分かっている。
だが。
そう考えずには──いられなかった。
俺はそれに自分で回復魔法を掛けながら、地面の上で全く動かない黒騎士へと歩み寄った。
バルムンクは、全身で息をしながら虚ろに正面を──空を、見上げていた。
ひゅーひゅーと掠れた笛の音のような音を立てている息。口から泡を立てながら流れ出ている血が鮮やかで毒々しい。
意識はあるようだが……俺が目の前に来て顔を覗き込んでも、何の反応も示さない。
まるで、壊れて捨てられた人形のように……微動だにもしなかった。
「……おい」
「……完敗、だ。召喚勇者、ハル」
枕元に膝をついて呼びかけると、掠れた声で奴は言った。
「我の剣が、通用……せぬとはな。極限まで己を強め、その力を持ってしても、お前を傷付けることは、叶わなかった。もはや、我に……お前に対抗できる力はない。全力を出し、敗れたのならば……悔いはない。所詮、我という存在はその程度のものでしかなかった……ということだ」
「……白々しい嘘をつくな。馬鹿野郎が」
俺は眉間に皺を寄せて、奴の言葉を遮った。
「あんたは……最初から、俺を殺す気なんてなかったんだろ。その必要もないってくらい能力で自分を強化して、わざと攻撃を全部外して、自分の体をぶっ壊して……そうして、あんたは俺と本気で戦ってるふりをして、本心では俺に自分のことを殺させようとしてた。そうだろ」
「…………」
バルムンクは何も答えない。
その沈黙こそが、俺が今言った言葉が正しいという何よりの証拠であることを、物語っていた。
「あんたは、迷ってたんだ。本心では魔帝の傍から離れて自分に素直に生きたいって思ってて、でも立場上そう言い出せなくて、悩み抜いた末に……魔帝の下僕という絶対悪として、俺に倒される道を選んだ。自分が勇者に殺されることで自分がしてきたことを清算しようと考えたんだろ。……馬鹿か、死んで全部をなかったことにするとか、そんなのは究極の甘えなんだよ。本当に子供らしい発想だ、このくそったれが!」
俺は怒鳴って回復魔法を唱えた。
多めに魔力を費やして発動させた魔法は、バルムンクの全身の傷を癒していく。
俺の技量では、粉微塵に砕けた骨は何とか形が戻る程度で、罅までは完全に消えはしないだろう。だが、くっつきさえすれば、動くことはできるようになるはずだ。
バルムンクが驚いた顔をして俺のことを見ている。
「……何を、する気だ。我の傷を癒すだと? そのようなことを……」
「やかましい。勝った俺が負けたあんたを好きにしていいのなら、俺はそうさせてもらう。あんたの指図は受けん!」
やがて。見た目だけではあるが、バルムンクの負傷は完全に癒えた。
バルムンクは疲れ切った溜め息をついて、俺から視線をそらした。
「……敗者に対する、情けか……実に下らん。そのような施しを受けて、我が泣いて礼を言うとでも思ったか。情けを掛けてくれると言うのなら……我を倒した後、一思いに心臓を潰すなり何なりしてくれれば良かったものを。生き恥を晒すのは騎士の恥。お前は、本当に甘い……我を生かしたところで、今更意味など……」
「世の中を甘く見てるのはあんたの方なんだよ、いい加減に分かれ、このクソガキが!」
俺はバルムンクの胸倉を掴んで無理矢理相手を起き上がらせて、その頬を思い切りひっぱたいた。
ばしん、と大きな音が立つ。頬を張られたバルムンクが、呆気に取られた様子で俺の顔を見ている。
その丸くなっている目に向かって、言ってやる。
「人生ってのはな、失敗したって生きてる限り何度だってやり直せるんだよ! 諦めさえしなけりゃ、誰にだって前に向かって進んでいくことができる! 一度道を間違えたって、それを間違えたと認めて正しい道を選び直せる権利があるんだ! 俺にだってできることが、あんたに……お前に、できないなんてことはないだろうが! その可能性を見もしないで丸ごと捨てて死ぬなんてのは究極の馬鹿がやらかすことだ! 死ねば全部が許されるってのはガキの発想なんだよ! お前はこの世界じゃもう立派な大人なんだから、駄々を捏ねて甘ったれるのは卒業しろ!」
突き放すように胸倉から手を離すと、奴は何の抵抗もせずにそのままどさりと地面の上に転がった。
相変わらず、奴の目は俺のことを見ようとしない。虚ろに何もないところを彷徨っている。
俺は静かに息を吐き、言葉を続ける。
「……自分の意思で自分が本当にやりたいことを見つけて、それに向かって自分の足で歩け。お前には……それができるだけの、力があるんだから。俺たちと一緒に来いとは言わない。お前が考え抜いた末にやっぱり魔帝の傍で生きるって決めたのなら、それはそれで構わない。それがお前が決めた人生なんだから、それをどうこう言う権利なんて俺にはないからな……後は、好きにしろ。お前の、自由だ」
「…………なあ、おっさん」
しばしの沈黙の後。奴は、若者の顔をして開口した。
「オレは……一体、何を何処で間違えちまったんだろうなぁ……どうすれば、良かったのかな。あんたには、分かるか?」
迷える若者としての、その言葉に。
俺は微苦笑しながら、言葉を返す。
「……そんなものは自分で考えろ。自分で考えて、自分で答えを見つけて、自分で歩け」
そっと、埃を被ってぱさついた金の髪を、撫でてやる。
「大人になるってのは……そういうことだ」
「…………そうか」
ふっ、と口元に笑みを浮かべるバルムンク。
俺がひっぱたいた左の頬に手を当てて、肩を揺らす。
「……ああ、痛ぇ。今までに食らってきたどんな魔法よりも、武器で斬られた痛みよりも、比べ物にならねぇくらいに痛ぇよ。何でだ、何で、なんだよ……こんな、貧弱なおっさんの、屁でもねぇビンタ一発だってのに……」
声が、震えを帯びていく。
涙を筋状に零し、歯をカチカチと鳴らしながら、奴は言った。
「……何で、こんなに、心が痛ぇんだよ……畜生……!」
「当たり前だろ、そんなことは」
俺はゆっくりと膝を伸ばして立ち上がる。
表情をくしゃくしゃにして泣いている相手に、優しく告げる。
「親が子供を殴るのは、憎いからじゃない。本気でそいつを大事に思ってるから、愛してるから、道を踏み外した時に正しい道がある方を見ることができるように、叩くんだ。それと同じだよ。あんたは俺の子供じゃないし、付き合いもそこまで長くはなかったが……それでも、俺は今でもあんたを大事な家族同然の存在だって思ってる。前にも、言っただろうが。忘れたか? 俺なりの愛が篭もってる分、響いたんだろうさ……有難いと思って、受け取っておけ」
「……愛とか……気色悪い、こと、言うんじゃねぇよ……おっさん風情が……!」
ぐすっと鼻をすすって、奴は真っ赤になった目で俺のことを睨んだ。
はぁ、と息を吐き、言う。
「……行けよ。もう、オレには用なんてねぇだろ……オレはもう此処から動く気力もねぇし、あんたを追いかける気もねぇ。自由にしていいって言うんなら、好きにさせてもらうわ。此処で負け犬らしく、寝てるからよ……さっさと、オレの前から消えやがれ。目障りだ」
けっ、と唾を吐くように毒づいて、双眸を閉ざす。
それきり、奴が口を開いて何かを言うことは、なかった。
俺は肩を竦めてバルムンクの傍から離れ、仲間たちが囚われている魔血の檻の傍へと向かう。
そこに腰掛けて事の成り行きを眺めていたユーリルが、呆れたように力の抜けた笑いを零しながら地上へと飛び降りてきた。
「……やれやれ、日頃から自分のことを心なき道具呼ばわりしていた割には、結局は彼も愛情に飢えた単なる子供だったというわけですか。全く、いつの時代も子供というものは自分の言動に責任を持てなくて困ったものですね。呆れてものも言えませんよ」
「そういう言い方をするな。あいつだって……人間なんだ。ちゃんと心があるんだ。何もおかしいところなんてないだろ」
「最初に自分をそう称したのは彼自身ですよ? 私は別に……まあ、良いです。此処で私と貴方がこんなことで言い争っても不毛なだけです。無駄なことはやめましょう」
ユーリルは右手を大きく円を描くようにすいっと振るった。
彼の背後にあった魔血の壁が、びきっと音を立てながら砕け散る。
囚われていたフォルテたちが、真紅の欠片を纏いながら地面の上に落ちてきた。怪我は……していないようだ。
「では……次は、この私がお相手致します。此処では何ですから、どうぞ、こちらへ。私たちが戦うに相応しい舞台へと、御案内致しましょう」
そう言って彼は俺たちに背を向けると、魔帝の城がある崖の方へと歩いて行った。
入口の真正面に立ち、そこに向かって右手を翳す。
すると、目の前が白く光り輝き──レースを編んだような、網模様の光の橋が現れた。
崖を横切るように架けられた光の橋の上を、ユーリルは歩いていく。
迷うことなく。殺し合いの、舞台に向かって。
もしも、俺が此処で足を止めていたら──
あいつとは、永遠に戦い合わずに済むのだろうか。
俺たちは魔帝を倒す。そのために此処まで来た。
だから今更、歩みを止めることなんてありえない。目の前に誰が立ち塞がろうと、前へと進み続けなければならない。
それは、分かっている。
だが。
そう考えずには──いられなかった。
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