新宿プッシールーム

はなざんまい

文字の大きさ
上 下
105 / 113

ペルシャの前夜(1)

しおりを挟む
11月になった

「タキさん」

外苑東通り、乃木坂駅交差点の少し手前に、愛車のボルボXC40を止めて、緑人は運転席の窓から歩道のタキに声をかけた

歩道から駆け寄ってくるタキの頬が心なしか紅潮して見えて、緑人のテンションも上がった


タキと会えるのは月に1、2回、夜から朝にかけてが常だった

しかしその日は、仕事の急なキャンセルがあり、翌々日の朝までフリーとなった

急遽、1日で行って帰ってこられそうな温泉地に宿を取り、初めての旅行に行くことになった

「お仕事は大丈夫でしたか?」

「最近は店に出ることはほとんどないから…」

「ゲームも買いましたよ。よくできてます」

「緑人くん、ゲームするの?!」

「しますよ。俳優始めてからは時間ないけど、ゲーム雑誌に寄稿したこともあります」

緑人はタキがシートベルトを締めたのを確認して、右にハンドルを切った

「旅行なんて久しぶり。誘ってくれてありがとう」

タキが前の車のテールランプに目を細めながら言った

東京から温泉地まで、スムーズに行けば2時間強

それでも着くのは夜10時を回ってしまう

最近、タキといると、夜がもっと長ければいいと願ってしまう

「明日の夕方までには送り届けますけど、2泊で取ってあるので、ゆっくりできると思います」

「お気遣いありがとう」

急な誘いだったにも関わらず、タキは電話口で「行きたい!すぐに支度して向かうね」と言った

明日の夜に、大事な予定があるというが、それでも急な誘いに嬉しそうに応じてくれて、緑人は電話を切った後からその高揚が伝染した状態なのだ

首都高に入りそのまま厚木ICまで東名を走る

東名の交通量を見て、これなら軽い渋滞で済みそうだと緑人はハンドルを握りながらホッとした

新幹線で行けばその間も二人でゆっくりできるが、自分が有名人だという自覚はある

タキが例え、今をときめく作家であって、緑人にとってプラスイメージに働くとしても、いまはスキャンダルは避けたい


その時、ふと自分の考えの違和感に気づいた

(【今は】ってなんだよ。タキさんが男って時点で一生アウトじゃん…)

緑人は横目でタキを見た


こんなきれいな人が男だって、誰がわかるというのだろう

「…タキさんって、女性に間違われたりします?」

「え…何?急に」

「いや、女性で押し通せないかな~と思って」

タキは目を丸くして緑人を見た

「何を?」

「こ、交際宣言とか、け、結婚会見とか…」

「はぁ?!」

タキのきれいな顔が一瞬で崩れた

そして、すぐにお腹を抱えて笑った

「君は本当に面白いね」

「年下扱いはやめてください。半年遅いだけじゃん」

緑人は思いきって敬語をやめてみた

「そうだったそうだった。あーごめん。笑いすぎて涙が出る」

タキは目元をハンカチで拭った

「確かに、ちょっと試してみたい気もするよね。別に性別公表して生きてるワケじゃないんだから。黒滝邦くろたきほうだって、みんな男だと思ってるけど、緑人くんと結婚したら『女だったんた』って思うかもしれない」

「だろ?黙ってればわかんないって」

車がひっそりと寝静まった熱海の市街地を通り抜け宿に着いたのは、ぴったり10時だった
当然、旅館が食事の提供をできる時間は過ぎている

緑人はサービスエリアで買ってきた弁当を広縁のテーブルに置いた

だが、椅子に座った緑人の膝にタキが跨がってきて、それどころではなくなった

タキが腰を浮かせてパンツを下ろすと、白い太ももが露になり、緑人は誘われるまま太ももの奥に指を伸ばした

下着の隙間から指を指し入れ、指が穴の入口に触れるか触れないかのところで、タキの身体がビクッと跳ね上がった
タキの女性のような見た目からは不釣り合いに長いモノが立ち上がって、ボクサーパンツの中で苦しそうにもがいていた


「エロ…」

緑人はタキの下着を脱がせると、タキのペニスをしごきながら、もう片方の手でクルクルと穴の入り口を押し広げていった

タキの身体は不思議で、出会った頃より穴の締まりがきつくなって、以前よりほぐすのに時間がかかるようになった


「本当に仕事してないんだ?」

「そう言った。信じてないの?」

「タキの身体エッチなんだもん。普段エッチしてなくてこんな色気出るもん?」

「出るんだな。これが…」

タキが緑人の唇に自分の唇を押し付けた

「緑人くんの前だと、いくらでもエロくなれる気がするよ」


「くっそ…!」

緑人はタキを膝に乗せたまま腰を浮かせてパンツを下ろした

タキが勃起するよりずっと前にとっくに固くなっている

緑人はまだ十分にほぐしていないタキの中にズブズブと入っていった

「んっ…んっ…」

タキは、シャツの裾を咥えて喘ぐのをこらえている

そんな姿も欲情を掻き立てられるだけだ

タキが腰を浮かすと、そこを追い立てるように緑人が突く

「タキ、きもちいい?」

わかっていても聞いてしまう
どうか「うん」と言ってほしいと願って

「んっんっ…ひょうは」

口を開く度に、シャツによだれが染み込んでいった

「何?」

緑人は耳を近づけた

「ひょうほそいひはい…」

「え?」



タキはシャツの裾を離すと、

「今日こそは緑人くんと一緒にイキたい!」

喘ぎ声よりも響く大きな声だった
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

自称チンタクロースという変態

ミクリ21
BL
チンタク……? サンタクじゃなくて……チンタク……? 変態に注意!

生意気な少年は男の遊び道具にされる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...