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猫たちの新生活(2)
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「新郎側のメンバー、どういう集まり?」
滋の招待客の俳優、諏訪緑人が、シャンパンに口をつけながら女優の長沼彩々に耳打ちした
「知らない。シロートに興味ない」
「いやいや、見てみなよ。タダモノじゃなさそうな面々がいるんだよ」
「旦那がバンドマンだからでしょ?」
彩々は料理から目を離そうとしない
美人で演技もうまいが、愛想のなさはかなりのものだ
緑人はもう一度、新郎側の席を見た
バンドメンバーもいるが、それとは明らかに違う、異彩を放つ団体
「俺も気になってた」
プロデューサーが横から口を挟んだ
華のある素人が気になってしまうのは、もはや職業病の域だ
「俺は気づいちゃいましたー」
緑人の目の前に座る若手俳優の戸田山壮馬がドヤ顔で緑人とプロデューサーを見た
「何々?」
「右端の黒のパンツスーツにパールのネックレスの美人は九ちゃんですよ。モデルの。あと、レイくんもいますね。ゲイビのAV俳優なんですけど、去年引退したはず」
「ゲイビなんて、あんたなんで知ってるのよ」
興味がないと言っていた彩々が食いついた
「ダチにレイくんファンがいたんですよ。見せてもらったことがあるんですが、すっげー美人で俺もしばらくはまりました。あとで写真撮らせてもらおーっと」
壮馬はレイことヒヤに視線を送ったが、全然気づかれない
ヒヤは他人にあまり興味がないため、視野が狭い
今でこそプッシールームのメンバーとはよく話すが、入ってしばらくはマサトとエチゼンしか名前と顔が一致していなかった
「九って、聞いたことあるな。彼も確かそっち関係で騒がれてなかった?」
プロデューサーが九を見た
九なら視線に気がつけば手くらい振ってきそうだが、目が悪いからプロデューサーが自分を見ていることに気づいてすらいない
「プッシールームっつうゲイ向けの風俗店で働いてる動画が流出したんですよ。あのメンバーその繋がりなのかな?だとしたら新郎何者?って話になりますよね」
「何その交遊関係。そっちの知り合い多いんですアピール?わたしはLGBTやらに理解ありますよーって?」
「彩々さん」
彩々の毒舌には慣れていたが、さすがにこの場にそぐわない発言だと感じ、緑人は彩々をたしなめた
「なんか視線を感じる…気がする」
新婦側の席に背を向けて座っているエチゼンが、フォークを握りしめたまま、背中を丸めた
「エチゼンって、そんなに自意識過剰だった?」
大好物のフォアグラを頬張りながらミナミが言った
「あんたらとつるんでたら、嫌でもそうなります!」
「失礼なヤツだなあ。ヒヤ、こいつはいつもこんなか?」
ミナミが、自分の隣に座るヒヤに聞いた
「俺といてもそこまでではないんですけど、確かに九さんやコノエさんと遊びに行くと卑屈になって帰ってくるかも」
ヒヤは、エチゼンと付き合いはじめてから、自殺未遂をしなくなった
爪噛みは、客に嫌な言葉を投げ掛けられた時や、エチゼンと喧嘩をした時などに出るが、それも親指だけとコントロールしている
そのお陰で、カトラリーを操る手は、どこに出しても恥ずかしくないくらいきれいだった
「お前ら、楽しんでるか?」
各テーブルを回ってデザートをサーブしていたマサトと滋が、プッシールームのテーブルにやってきた
「おめでとうございまーす!」
全員で声を張り上げたため、新郎友人席はにわかに騒がしくなり、周りの視線が集まった
「お前ら、学生ノリかよ」
今日のマサトは無精髭も剃り、髪もワックスできれいに整えていて、滋の隣に立っていても見劣りしないほどかっこよかった
「みんな、来てくれてありがとう」
滋が一人一人の顔を見て言った
幸せというベールをまとった花嫁の美しさは格別だ
「好きなデザートを取り分けるから、言ってね」
滋の言葉を聞いて、
「滋さんきれー!」
「打掛もよかったけど、ウェディングドレスも似合ってますね!」
九、ヒヤ、タキがいち早く滋のところに群がった
話しながらもしっかりとデザートを指定する姿は女子そのものだ
「あれで合コンできねーかなー」
「あれ、滋さん以外は男だから」
4人がウフフと話す姿を見たコノエの発言に、エチゼンがすかさずツッこんだ
「二次会も来るだろ?」
残りのメンバーには、マサトが適当に盛ったものを渡した
「行きまーす」
アヤメが手を挙げた横で、コタローも手を挙げた
「そういえば、リンは?」
ミナミは、神前式の時から気になっていたことをマサトに聞いた
「…ちょい急用ができたらしくて、昨日、連絡もらったよ」
ずっと笑顔だったマサトの表情が一瞬曇った
「そっか、俺も久しぶりだから会いたかったんですけどね」
ミナミにも、リンに対して思うところがあるのだろう
結果的に、ああいう決別をさせてしまったことを、マサトは心苦しく思っていた
「二次会は来れるって言ってたから、安心しろ」
マサトはミナミの頭をポンポンと叩いた
滋の招待客の俳優、諏訪緑人が、シャンパンに口をつけながら女優の長沼彩々に耳打ちした
「知らない。シロートに興味ない」
「いやいや、見てみなよ。タダモノじゃなさそうな面々がいるんだよ」
「旦那がバンドマンだからでしょ?」
彩々は料理から目を離そうとしない
美人で演技もうまいが、愛想のなさはかなりのものだ
緑人はもう一度、新郎側の席を見た
バンドメンバーもいるが、それとは明らかに違う、異彩を放つ団体
「俺も気になってた」
プロデューサーが横から口を挟んだ
華のある素人が気になってしまうのは、もはや職業病の域だ
「俺は気づいちゃいましたー」
緑人の目の前に座る若手俳優の戸田山壮馬がドヤ顔で緑人とプロデューサーを見た
「何々?」
「右端の黒のパンツスーツにパールのネックレスの美人は九ちゃんですよ。モデルの。あと、レイくんもいますね。ゲイビのAV俳優なんですけど、去年引退したはず」
「ゲイビなんて、あんたなんで知ってるのよ」
興味がないと言っていた彩々が食いついた
「ダチにレイくんファンがいたんですよ。見せてもらったことがあるんですが、すっげー美人で俺もしばらくはまりました。あとで写真撮らせてもらおーっと」
壮馬はレイことヒヤに視線を送ったが、全然気づかれない
ヒヤは他人にあまり興味がないため、視野が狭い
今でこそプッシールームのメンバーとはよく話すが、入ってしばらくはマサトとエチゼンしか名前と顔が一致していなかった
「九って、聞いたことあるな。彼も確かそっち関係で騒がれてなかった?」
プロデューサーが九を見た
九なら視線に気がつけば手くらい振ってきそうだが、目が悪いからプロデューサーが自分を見ていることに気づいてすらいない
「プッシールームっつうゲイ向けの風俗店で働いてる動画が流出したんですよ。あのメンバーその繋がりなのかな?だとしたら新郎何者?って話になりますよね」
「何その交遊関係。そっちの知り合い多いんですアピール?わたしはLGBTやらに理解ありますよーって?」
「彩々さん」
彩々の毒舌には慣れていたが、さすがにこの場にそぐわない発言だと感じ、緑人は彩々をたしなめた
「なんか視線を感じる…気がする」
新婦側の席に背を向けて座っているエチゼンが、フォークを握りしめたまま、背中を丸めた
「エチゼンって、そんなに自意識過剰だった?」
大好物のフォアグラを頬張りながらミナミが言った
「あんたらとつるんでたら、嫌でもそうなります!」
「失礼なヤツだなあ。ヒヤ、こいつはいつもこんなか?」
ミナミが、自分の隣に座るヒヤに聞いた
「俺といてもそこまでではないんですけど、確かに九さんやコノエさんと遊びに行くと卑屈になって帰ってくるかも」
ヒヤは、エチゼンと付き合いはじめてから、自殺未遂をしなくなった
爪噛みは、客に嫌な言葉を投げ掛けられた時や、エチゼンと喧嘩をした時などに出るが、それも親指だけとコントロールしている
そのお陰で、カトラリーを操る手は、どこに出しても恥ずかしくないくらいきれいだった
「お前ら、楽しんでるか?」
各テーブルを回ってデザートをサーブしていたマサトと滋が、プッシールームのテーブルにやってきた
「おめでとうございまーす!」
全員で声を張り上げたため、新郎友人席はにわかに騒がしくなり、周りの視線が集まった
「お前ら、学生ノリかよ」
今日のマサトは無精髭も剃り、髪もワックスできれいに整えていて、滋の隣に立っていても見劣りしないほどかっこよかった
「みんな、来てくれてありがとう」
滋が一人一人の顔を見て言った
幸せというベールをまとった花嫁の美しさは格別だ
「好きなデザートを取り分けるから、言ってね」
滋の言葉を聞いて、
「滋さんきれー!」
「打掛もよかったけど、ウェディングドレスも似合ってますね!」
九、ヒヤ、タキがいち早く滋のところに群がった
話しながらもしっかりとデザートを指定する姿は女子そのものだ
「あれで合コンできねーかなー」
「あれ、滋さん以外は男だから」
4人がウフフと話す姿を見たコノエの発言に、エチゼンがすかさずツッこんだ
「二次会も来るだろ?」
残りのメンバーには、マサトが適当に盛ったものを渡した
「行きまーす」
アヤメが手を挙げた横で、コタローも手を挙げた
「そういえば、リンは?」
ミナミは、神前式の時から気になっていたことをマサトに聞いた
「…ちょい急用ができたらしくて、昨日、連絡もらったよ」
ずっと笑顔だったマサトの表情が一瞬曇った
「そっか、俺も久しぶりだから会いたかったんですけどね」
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結果的に、ああいう決別をさせてしまったことを、マサトは心苦しく思っていた
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