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まだあげない
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朝陽だからこそ欲情するのに、それを朝陽に知られるのが恥ずかしい。兆し始めたそこに気づかれないように、少し体を離す。
「ひくわけない、けど」
「けど?」
「その、朝陽はこういうの、興味ないのかなって思ってたから、心の準備が……」
「……俺が恭兄を好きだっていつ気づいたか、覚えてる?」
「それは……オレが高校の時、家の前で、その……だろ?」
橋本の名前も、キスを見られた時だとはっきり言うのも憚られる。口籠りながらも答えれば、朝陽は頷く。
そして恭生を抱きしめて、耳の下に口づけながらささやかれる。
「俺、あの日に精通した」
「……っ! ……え?」
「だから、恭兄のことが好きって気づいた瞬間に、自分のことがはしたないとも思った。それで、恭兄の顔まともに見られなくなって。だから避けてた。ごめん。でも、だから……俺はあの時からずっと、恭兄のこと、そういう目で見てた。触りたい、したい、って――思ってたよ」
「あっ、やば……」
避けられていた理由は、そういうことだったのか。まさかの事実を告げられて、急激にそこが張り詰める。恥ずかしいのか、朝陽の頬は淡く染まっていて。それも堪らない。
熟れきった声が零れそうで、慌てて手で口をふさぐ。
「はあ、恭兄、触っていい?」
朝陽の手が下に伸びて、思わずそれを掴む。不服そうな目が向けられるけれど。
こういう瞬間が来たならリードしてあげたいと、前々から考えていた。四つ年上の人生の先輩として、いいところを見せたい。
なにより心配だから、朝陽には今はなるべくじっとしていてほしい。
「オレがする」
「え……恭兄?」
「お兄ちゃんに任せろって」
「いや、でも……」
「退院したばっかりなんだし、朝陽はじっとしてろ。な? ほら、パンツ脱いで」
朝陽はなにか言いたげだが、構わずベルトをほどく。足からパンツを抜き、お互い下着だけになった。
再び朝陽の太腿に跨り、下着の上から触れてみる。そっと手を滑らせただけで、朝陽は息を熱く吐いた。
下着はすでに色を濃くしていて、ぬるついているのが布越しに分かる。手を往復させると、声をかみ殺した朝陽が腰を揺らす。
その様子を見ているだけで、恭生もごくりと喉が鳴った。触れている手に、朝陽の手が重なる。
「恭兄、俺も触りたい」
「へ? いや、でも」
「お願い、恭兄」
「……手、だけだぞ。他はじっとしてるって約束しろ」
「うん、約束」
おあずけを食らっていた従順な犬みたいに、抱きついてじゃれてくる。だが、愛らしいのはそこまでだった。
大きな手が恭生のそこに宛がわれ、あまりの感覚に朝陽へしがみつく。ひと撫でされただけなのに、嘘みたいに気持ちがいい。
「は……? なに、朝陽、これ、やばい……」
「ん、俺もやばい」
「あっ」
顔を覗いてみれば、朝陽の瞳に宿っているのはただただ雄だった。かわいい弟なんかじゃない。恭生をひたすらに求める、男だ。
夢中でキスをして、互いに下着の中まで手を忍ばせる。指が絡んできて、あまりの感覚に腰が震える。濡れた音が恥ずかしいのに、羞恥がさらに快感を煽る。
朝陽に触れられている、朝陽に求められている。リードしてやりたいと思っていたのに。
もっと朝陽のペースに飲まれたくなる。
「朝陽、も、イく」
「うん、俺も……んっ」
首筋にキスをしてくる朝陽を掻き抱く。朝陽の喉を震わせる喘ぐ声が、肌から染みこんでくるみたいだ。それに背筋を震わせ、押し出されるみたいに吐精し、くったりと体を預け合う。
「ひくわけない、けど」
「けど?」
「その、朝陽はこういうの、興味ないのかなって思ってたから、心の準備が……」
「……俺が恭兄を好きだっていつ気づいたか、覚えてる?」
「それは……オレが高校の時、家の前で、その……だろ?」
橋本の名前も、キスを見られた時だとはっきり言うのも憚られる。口籠りながらも答えれば、朝陽は頷く。
そして恭生を抱きしめて、耳の下に口づけながらささやかれる。
「俺、あの日に精通した」
「……っ! ……え?」
「だから、恭兄のことが好きって気づいた瞬間に、自分のことがはしたないとも思った。それで、恭兄の顔まともに見られなくなって。だから避けてた。ごめん。でも、だから……俺はあの時からずっと、恭兄のこと、そういう目で見てた。触りたい、したい、って――思ってたよ」
「あっ、やば……」
避けられていた理由は、そういうことだったのか。まさかの事実を告げられて、急激にそこが張り詰める。恥ずかしいのか、朝陽の頬は淡く染まっていて。それも堪らない。
熟れきった声が零れそうで、慌てて手で口をふさぐ。
「はあ、恭兄、触っていい?」
朝陽の手が下に伸びて、思わずそれを掴む。不服そうな目が向けられるけれど。
こういう瞬間が来たならリードしてあげたいと、前々から考えていた。四つ年上の人生の先輩として、いいところを見せたい。
なにより心配だから、朝陽には今はなるべくじっとしていてほしい。
「オレがする」
「え……恭兄?」
「お兄ちゃんに任せろって」
「いや、でも……」
「退院したばっかりなんだし、朝陽はじっとしてろ。な? ほら、パンツ脱いで」
朝陽はなにか言いたげだが、構わずベルトをほどく。足からパンツを抜き、お互い下着だけになった。
再び朝陽の太腿に跨り、下着の上から触れてみる。そっと手を滑らせただけで、朝陽は息を熱く吐いた。
下着はすでに色を濃くしていて、ぬるついているのが布越しに分かる。手を往復させると、声をかみ殺した朝陽が腰を揺らす。
その様子を見ているだけで、恭生もごくりと喉が鳴った。触れている手に、朝陽の手が重なる。
「恭兄、俺も触りたい」
「へ? いや、でも」
「お願い、恭兄」
「……手、だけだぞ。他はじっとしてるって約束しろ」
「うん、約束」
おあずけを食らっていた従順な犬みたいに、抱きついてじゃれてくる。だが、愛らしいのはそこまでだった。
大きな手が恭生のそこに宛がわれ、あまりの感覚に朝陽へしがみつく。ひと撫でされただけなのに、嘘みたいに気持ちがいい。
「は……? なに、朝陽、これ、やばい……」
「ん、俺もやばい」
「あっ」
顔を覗いてみれば、朝陽の瞳に宿っているのはただただ雄だった。かわいい弟なんかじゃない。恭生をひたすらに求める、男だ。
夢中でキスをして、互いに下着の中まで手を忍ばせる。指が絡んできて、あまりの感覚に腰が震える。濡れた音が恥ずかしいのに、羞恥がさらに快感を煽る。
朝陽に触れられている、朝陽に求められている。リードしてやりたいと思っていたのに。
もっと朝陽のペースに飲まれたくなる。
「朝陽、も、イく」
「うん、俺も……んっ」
首筋にキスをしてくる朝陽を掻き抱く。朝陽の喉を震わせる喘ぐ声が、肌から染みこんでくるみたいだ。それに背筋を震わせ、押し出されるみたいに吐精し、くったりと体を預け合う。
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