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まだあげない
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アパートに到着し、鍵を開ける。ドアノブに翳した手に、背後から朝陽の手が重なった。
「朝陽? どうし……」
恭生が振り向くより先に、ドアが開かれ中へと急かされる。驚く暇もないまま、玄関で背後から抱きしめられる。
「恭兄」
「……朝陽?」
先ほどからどうしたのだろうか。理解できていないはずなのに、縋るような腕と声色に、鼻がツンと痛む。
肩口にすり寄る朝陽の髪を後ろ手に撫でつつ、振り返る。背中に腕を回したら、もっととねだるように抱きしめられた。
「どうしたー、朝陽。甘えんぼか?」
「恭兄」
「んっ……」
ちいさい頃のように、可愛い弟を甘やかすように。また髪を撫でつつ尋ねたら、不服そうに一瞬尖ったくちびるがそのまま押し当てられた。思わず一歩後ずさったのが許せなかったようで、抱擁は強くなってキスも止まらなくなる。
「あ、さひ」
「恭兄、好き」
「ん……」
朝陽からの想いは、ちゃんと分かっているつもりだ。それは日々の生活の中に、凛とした瞳の奥にいつだって見えていた。だがこんなにストレートに、愛情をぶつけられたことはなかった。
いつの間にか背は壁につき、朝陽の腕に囲われている。止まないキスに体が熱くなるのを感じながら、朝陽の名を呼ぶ。
「朝陽、ん、なあ、どうした?」
「なにが?」
「なにがって、こんな……あっ」
シャツの上から腰を撫でられ、思わず上擦った声が出た。こんな風に触れられるのは初めてで。驚いて見上げると、頬にひとつキスをされた後、額同士がくっついた。腰にある指先でゆったりとそこを撫でながら、もう片手は恭生の手を絡めとる。
「俺、恭兄と付き合えてすごい嬉しくて」
「うん、オレもだよ。なあ朝陽、腰の手……」
「本当は……触ったりとか、したいのに。初めてだからどうしたらいいか分からなかったし、一緒にいられるだけで嬉しくて、ゆっくりでいいなとも思ってた。でも……」
「あ、朝陽、手……」
おずおずとながらも、朝陽の手がシャツの裾から潜りこんできた。撫でられ続けて敏感になってしまったところに、今度は直接触れられる。体が跳ねるのを、どうにも止められない。
「昨日、あんなことがあって。恥ずかしがったりしてる場合じゃないな、って思った。俺、恭兄に触りたい」
「朝陽……」
直球の懇願に、頬に熱が集まる。その一方で、昨日は気丈にしていた朝陽だが、様々なことを考えたのだなと切なくなる。
「恭兄、部屋上がろ」
促されるままに靴を脱ぐ。改めてただいまと言う朝陽に、おかえりと返事をする。部屋の中へと進むと、また背後から抱きしめられる。
「おっと」
「恭兄~」
「はは、やっぱり甘えんぼじゃん」
甘ったるく呼ぶ声に、ちいさい朝陽を思い出さずにいられない。よくこんな風に呼ばれて、こんな風に抱きつかれていた。
だが今は、あの頃のような戯れとは違う。抱きつかれたままふたりで進む足は拙くて、どこかペンギンみたいでくすりと笑みが出るのに。昔と同じようで同じじゃない、それが無性に照れくさい。
ベッドまで進み、朝陽がそこに座った。ここに来て、と促されるのは朝陽の足の上だ。されるがままに、向き合うかたちで朝陽の太腿に腰を下ろす。
「座っちゃって重くないか?」
「全然」
「全然ってことはないだろ」
「いいから。恭兄」
「あ……」
朝陽の親指が、ゆっくりと恭生のくちびるを辿る。思わず開いてしまったくちびるの中に指がもぐりこんできて、腹の奥から上がってきた熱い息で濡らしてしまう。
「えっちなことしたい、って言ったら、ひく?」
「……っ」
直接的なワードが朝陽の口から出てきて、恭生はつい慄く。
だって、こんな感情は知らない。たったひと言、そう言われただけなのに。体中が沸騰するように興奮して、この先を期待してしまっている。付き合ってきた元カノたちに求められても、こんな風になったことはなかった。
「朝陽? どうし……」
恭生が振り向くより先に、ドアが開かれ中へと急かされる。驚く暇もないまま、玄関で背後から抱きしめられる。
「恭兄」
「……朝陽?」
先ほどからどうしたのだろうか。理解できていないはずなのに、縋るような腕と声色に、鼻がツンと痛む。
肩口にすり寄る朝陽の髪を後ろ手に撫でつつ、振り返る。背中に腕を回したら、もっととねだるように抱きしめられた。
「どうしたー、朝陽。甘えんぼか?」
「恭兄」
「んっ……」
ちいさい頃のように、可愛い弟を甘やかすように。また髪を撫でつつ尋ねたら、不服そうに一瞬尖ったくちびるがそのまま押し当てられた。思わず一歩後ずさったのが許せなかったようで、抱擁は強くなってキスも止まらなくなる。
「あ、さひ」
「恭兄、好き」
「ん……」
朝陽からの想いは、ちゃんと分かっているつもりだ。それは日々の生活の中に、凛とした瞳の奥にいつだって見えていた。だがこんなにストレートに、愛情をぶつけられたことはなかった。
いつの間にか背は壁につき、朝陽の腕に囲われている。止まないキスに体が熱くなるのを感じながら、朝陽の名を呼ぶ。
「朝陽、ん、なあ、どうした?」
「なにが?」
「なにがって、こんな……あっ」
シャツの上から腰を撫でられ、思わず上擦った声が出た。こんな風に触れられるのは初めてで。驚いて見上げると、頬にひとつキスをされた後、額同士がくっついた。腰にある指先でゆったりとそこを撫でながら、もう片手は恭生の手を絡めとる。
「俺、恭兄と付き合えてすごい嬉しくて」
「うん、オレもだよ。なあ朝陽、腰の手……」
「本当は……触ったりとか、したいのに。初めてだからどうしたらいいか分からなかったし、一緒にいられるだけで嬉しくて、ゆっくりでいいなとも思ってた。でも……」
「あ、朝陽、手……」
おずおずとながらも、朝陽の手がシャツの裾から潜りこんできた。撫でられ続けて敏感になってしまったところに、今度は直接触れられる。体が跳ねるのを、どうにも止められない。
「昨日、あんなことがあって。恥ずかしがったりしてる場合じゃないな、って思った。俺、恭兄に触りたい」
「朝陽……」
直球の懇願に、頬に熱が集まる。その一方で、昨日は気丈にしていた朝陽だが、様々なことを考えたのだなと切なくなる。
「恭兄、部屋上がろ」
促されるままに靴を脱ぐ。改めてただいまと言う朝陽に、おかえりと返事をする。部屋の中へと進むと、また背後から抱きしめられる。
「おっと」
「恭兄~」
「はは、やっぱり甘えんぼじゃん」
甘ったるく呼ぶ声に、ちいさい朝陽を思い出さずにいられない。よくこんな風に呼ばれて、こんな風に抱きつかれていた。
だが今は、あの頃のような戯れとは違う。抱きつかれたままふたりで進む足は拙くて、どこかペンギンみたいでくすりと笑みが出るのに。昔と同じようで同じじゃない、それが無性に照れくさい。
ベッドまで進み、朝陽がそこに座った。ここに来て、と促されるのは朝陽の足の上だ。されるがままに、向き合うかたちで朝陽の太腿に腰を下ろす。
「座っちゃって重くないか?」
「全然」
「全然ってことはないだろ」
「いいから。恭兄」
「あ……」
朝陽の親指が、ゆっくりと恭生のくちびるを辿る。思わず開いてしまったくちびるの中に指がもぐりこんできて、腹の奥から上がってきた熱い息で濡らしてしまう。
「えっちなことしたい、って言ったら、ひく?」
「……っ」
直接的なワードが朝陽の口から出てきて、恭生はつい慄く。
だって、こんな感情は知らない。たったひと言、そう言われただけなのに。体中が沸騰するように興奮して、この先を期待してしまっている。付き合ってきた元カノたちに求められても、こんな風になったことはなかった。
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