【完結】君に夢中〜「私は誰でしょう」LI〇E相手の正体を当てるゲームから始まるBL〜

星むぎ

文字の大きさ
上 下
2 / 20
一章

イレギュラー

しおりを挟む
 四人の座ったカウンターは深刻な雰囲気に包まれていた。一方でテーブル席の整備班や運航部の隊員達は誠達の話題など聞いていないというように大声で談笑していた。

「なんか湿っぽくなっちゃったわね。これじゃあ酒がおいしくなくなるじゃないの。じゃあ、これまで来た5人のうちを出ていったなパイロットの話をしましょう!連中に比べて誠ちゃんがどれだけマシか……今日一日でよくわかったから」

 それまでの深刻な表情を満面の笑みで染めてアメリアはそう言って誠達を見渡した。

「えー、あの馬鹿どもの話か?それこそ酒がまずくなるぜ……同盟司法局の偉いさんがうちに力を持たせまいと送り込んだ一般人なんて……興味ねえや」

 アメリアの提案にかなめは嫌な顔をしながらラムの入ったグラスをすすっている。カウラはと言うと特に関心が無いというように静かに烏龍茶を啜っていた。

「その『法術師』の可能性が無いパイロットの中で、一番最初に来たのは……」

 烏龍茶のグラスを置いたカウラはそう言って首をひねった。

「オミズよ!オミズ!」

 嬉しそうにアメリアが叫んだ。その表情は喜色満面と言う言葉を絵にかいたようなそれだった。

「ああ、居たなそんな奴。印象薄くて顔も名前も憶えてねえけど……アイツが最初だったか……そうだ、アイツが最初だ。うんうん」

かなめは自分自身を納得させる為にそう言ってラム酒のグラスを傾けた。

「オミズ……女性だったんですか?元キャバ嬢とか。あの隊長の趣味ならあり得る話ですけど」

 取り残されていた誠はそう言って、なぜか嬉しそうな表情を浮かべているアメリアに尋ねた。

「違うわよ。男の子……400年に渡り提唱されつつこの20年くらいまで実現しなかった遼州同盟の締結を最初から提案していた遼州の月の『ハンミン国』は知ってるわよね?」

アメリアは社会知識ゼロの誠を試すかのようにそう言った。

「知ってますよ。毎晩空に浮かんでる月に人が住んでるって子供のころは驚いたもんです。確かあそこの公用語は韓国語でしたよね?」

 珍しく見つかった社会知識の引き出しを引っ張り出して誠はアメリアにそう言った。

「『ハンミン国』の第一公用語は確かに韓国語で合ってるわ。でも第二公用語は日本語。同盟会議の演説とかテレビで見ないの?各国の代表が日本語で演説してるじゃないの。まったく社会常識が無いのね、誠ちゃんは。まあ、あの国は資源に乏しいから主にナノマシン関係の技術と観光で食ってるのよ。『ハン流』の芸能人の歌とかドラマとか見たこと無い……わよね、誠ちゃんは。アニメ一筋だから」

 呆れたようにアメリアはそう言ってビールを一口飲んだ。

「知ってますよ!あの国のナノテクノロジーは東和と並んで地球を凌駕してますからね。まあ、たしかに『ハン流』のドラマとかは見たこと無いですけど……」

 誠は自分の偏った趣味を指摘されてうつむきがちにそう言った。

「あの国のお国柄なのか、その子も真面目そうな子でね……角刈りで目つきが鋭くて典型的な『軍人』って感じだったわよね。まあ、見た目に反してメンタルの方は弱かったみたいだけど」

 いぶかしげに尋ねる誠の言葉をアメリアはビールを飲みながら軽く否定した。

「オメエが初対面のアイツに水ぶっかけるからだろ?運航部の入り口で……ドアを開けたら上から仕掛けられていたバケツでドシャ―って」

 かなめは呆れたようにそうつぶやいた。

「水ですか!いきなり失礼じゃないですか!」

 かなめの言い出した言葉で誠は運航部の入り口で逢った『金ダライで歓迎事件』のことを思い出した。

 マイク片手にカラオケでロックを熱唱して馬鹿騒ぎしている運航部の女子隊員の様子を見ればそれくらいのことはやりかねないと誠にも察しがついた。誠は呆然としてアメリアの底知れない不気味な笑顔をのぞき見た。

「かなり怒っていたな……水くらい拭けばいいのに」

「そりゃあ初対面の人の頭に水をぶっかければ普通怒りますよ!」

 常識人に見えて完全に『特殊な部隊』に染まっているカウラの薄い反応に、誠は思わず強めに叫んでいた。

「つうわけで、水をぶっかけられて激怒したそいつはせっかくアタシ等がここでなだめる為の宴会を開いてやったというのに、そのまま次の日に叔父貴にタクシー券を渡されて豊川駅からさようならしたわけだ……この店でもずっと黙り込んだままで……ああ、詰まらねえ酒だったな、あの日の酒は」

 薄ら笑いを浮かべながらかなめそう言って笑った。

「僕は……残るつもりですから……」

「本当に?本当に?」

 冷やかしてくるアメリアを冷めた目で見つめながら誠は砂肝を平らげた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした

雨宮里玖
BL
《あらすじ》 昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。 その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。 その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。 早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。 乃木(18)普通の高校三年生。 波田野(17)早坂の友人。 蓑島(17)早坂の友人。 石井(18)乃木の友人。

キンモクセイは夏の記憶とともに

広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。 小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。 田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。 そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。 純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。 しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。 「俺になんてもったいない!」 素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。 性描写のある話は【※】をつけていきます。

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

たまにはゆっくり、歩きませんか?

隠岐 旅雨
BL
大手IT企業でシステムエンジニアとして働く榊(さかき)は、一時的に都内本社から埼玉県にある支社のプロジェクトへの応援増員として参加することになった。その最初の通勤の電車の中で、つり革につかまって半分眠った状態のままの男子高校生が倒れ込んでくるのを何とか支え抱きとめる。 よく見ると高校生は自分の出身高校の後輩であることがわかり、また翌日の同時刻にもたまたま同じ電車で遭遇したことから、日々の通勤通学をともにすることになる。 世間話をともにするくらいの仲ではあったが、徐々に互いの距離は縮まっていき、週末には映画を観に行く約束をする。が……

「恋みたい」

悠里
BL
親友の二人が、相手の事が好きすぎるまま、父の転勤で離れて。 離れても親友のまま、連絡をとりあって、一年。 恋みたい、と気付くのは……? 桜の雰囲気とともにお楽しみ頂けたら🌸

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

処理中です...