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閑話
第116話 行方不明のマスター②
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「――それが......ヨージさん......帰って来ないんです......」
「帰って来ないって......それまたなんで?」
「それが分かったら苦労しませんよ!――数ヶ月前のあの置き手紙以降一切連絡も来ないですし......心配で心配で......」
あの置き手紙というのは“目無しの魔獣”に勝った後、祝勝会の時に俺も見た『あるよ』とだけ書かれていた手紙の事だろう。
あの後消息不明とは、それは確かに心配だ。
「かなり前からギルドの方には捜索の依頼を出しているのですがなんの手掛かりも掴めず......」
「どこかに監禁されている可能性も視野に入れた方が良いな」
「監禁って、いくらなんでも考えすぎじゃないか? 酒場のマスターだぞ?」
監禁なんてのはこの世界でも罪になるだろう。そんなリスクを犯してまで酒場のマスターを手に入れる価値はあまり無いように感じるんだが違うのか?
「分かっていないなマツルは。この世界での真の料理人というのは一介の料理人と訳が違う」
「そうなのか?」
「ああ、例えばこのからあげ。食べてみて分かった。軍隊鶏の肉を使っているな?」
「!? その通りです!」
ナマコ神様、軍隊鶏って?
『軍隊鶏、狩猟難度Bのそこそこの魔獣だね。基本5~20匹の集団で生息していて、まるで軍隊のように統率のとれた攻撃を仕掛けて来る。その肉はとても美味いが軍隊鶏しか保有出来ない特殊な細菌、“ガンリロバクテリア”を体内に保有しているんだ。“ガンリロバクテリア”は他の生物が口にしたら最後、1gで数万人は殺せるその強い毒性で一瞬であの世へ――――』
分かった。なんか凄いヤバいってのは分かった。
この唐揚げそんなヤバい魔獣の肉だったのかよ......
『要は“滅茶苦茶美味しいけど食ったら死ぬからもどかしい”って感じだね』
「じゃあなんでレオノラは軍隊鶏の味が分かったんだ!? 食ったら死ぬんだろ!?」
「遠征中に一度だけな。俺が毒如きで死ぬ訳が無いだろう?」
「お前はそういう奴だったな......」
「話を戻すぞ? 軍隊鶏の無毒化なんて今まで誰も成功した事が無い。それが出来た上でここまで美味しく調理できる人材なんて、どこでも喉から手が出る程欲しいのではないか?」
こう聞くと連れ去られた説が割と現実味を帯びてきたな。
「自分、探しに行きます――――」
「待つんだイントリーグ殿。その道のプロである冒険者が手掛かりすら掴めない状態なのにあなたが出ても事態は好転しない」
「じゃあこのまま心配だけしてろって言うんですか?」
「そんな訳ないだろ。俺がその心配をすぐに払ってやるって事だよ」
「マツルさん......!」
「もしどこかに攫われたとしたら......ココとココら辺が怪しいな」
レオノラはどこからか地図を取り出し、ある二つの国を指さした。
「ありがとうなレオノラ。すぐホノラと出る。もし何かあれば連絡する」
「マツルさん! どうかヨージさんを......師匠をよろしくお願いします!!」
「ああ......行ってきま――――ル゛ッッ!!!!!!!!!!」
「――あるよ」
カッコよくキメながらギルド舎出入り口の扉を開けようとしたその時。扉が勢い良く開き正面にいた俺とレオノラを吹き飛ばした。
そこに立っていたのは、異世界にしては珍しい日本人風の顔をした壮年の男性だった。
「し......師匠!?」
え!? この人がヨージさん!?
――――
「――それで、一体何がどういう訳でこうなってるんだ?」
「......あるよ」
「ヨージ殿、何があるのだ?」
「あるよ」
「師匠、『あるよ』しか言いたくない体質の人なんですよ」
「何『あるよしか言いたくない体質』って!?」
「参ったな......筆談ならどうだろうか。紙とペンを......」
「お兄ちゃんは順応が早すぎるよ! もっと戸惑え!」
というくだりがあり、筆談で会話することになったのだった。
「オホン、じゃあ初めから。一体何がどういう訳でこうなってるんですか?」
おお、何か書き始めたぞ!
書き終わったのか、紙をこちらへ見せてくる。
「えーと...『あ』『る』『よ』」
「結局あるよじゃねぇかァァァァ!!!!」
「師匠は『あるよ』しか書きたくない体質の人なんです」
「だったら筆談のくだり要らなかったよね!? てかなんだよ『あるよしか書きたくない体質』って!! その指折ったろかコノヤロォォォォ!!!!」
「じゃあ自分が通訳しますね」
「イントリーグさん......それができるなら最初からそうしてください......」
「で! 一体(以下略」
「あるよ」
「えーと......『そろそろイントリーグに店を任せてもいい頃だと思った。お前にはその実力があると思った。だからちゃんと置き手紙をしておいたんだが』だそうです」
あ、あの置き手紙の『あるよ』は『(イントリーグには店を一人で回すだけの実力が)あるよ』って事だったのか!
「ってわかるかァァァァァァ!!!!」
「紛らわしい事この上ないな......」
「あるよ」
「えーと、『それでのんびり諸国を巡る旅に出たのだが、数日前メツセイが急に訪ねてきて“行方不明だと思われてるから一度帰った方が良い”なんて言うもんだから帰ってきた』そうです」
たった三文字に想い込めすぎだろ!
「たまたま別の仕事で“ニシハッテ公国”に行ったらヨージの旦那が雇われバーテンダーしてるもんだからビビったぜ」
「メツセイ!! あんたが連れ帰って来てたのね......」
「あるよ」
「『だが、ここに帰ってきて気がついたんだ。やっぱり私には本当にやるべきことがあったんだって』師匠......」
つまり、また“ヨージ”のマスターに戻るって事だな!!
「あるよ」
「『私、戻るよ......一流の消しゴム農家に』師匠!」
え......消しゴ......え?
「あるよ」
「『ではさらばだ。イントリーグ、この店は任せたぞ』師匠!」
「ちょっと待ってくれ消しゴム農家ってなんだァッ!?」
「待てマツル。良い話だ......引き止めるのは野暮って物だろう......」
「レオノラ殿の言う通りだ! 良いじゃねぇか消しゴム農家......きっとスパランピンコンテストでも優勝出来るさ」
「もう本人達が良いなら俺もそれでいいや」
「あるよ(あばよ)」
「師匠ぉー! お達者でぇぇぇ!!」
ヨージさんは踏み出したのだ。一流の消しゴム農家として、スパランピンコンテストで優勝するという目標に向かって。
今、ギルド舎からその第一歩が刻まれる――――
「わーい。ボブはBMWの免許が取れて嬉しいです! ボブは暴走機関車なのです! BMWはB(ボブは)M(免許取れた)W(わーい)の略なのです」
「あル゛ッッッ......」
第一歩で......BMWに轢かれた......
「スパランピンコンテストォォォォォ!!!!」
こうして、消しゴム農家になる為に必要な大臀筋を負傷したヨージさんはスパランピンコンテスト優勝の夢を諦め、“ヨージ”のマスターに再任したのだった。
めでたしめでたし
「帰って来ないって......それまたなんで?」
「それが分かったら苦労しませんよ!――数ヶ月前のあの置き手紙以降一切連絡も来ないですし......心配で心配で......」
あの置き手紙というのは“目無しの魔獣”に勝った後、祝勝会の時に俺も見た『あるよ』とだけ書かれていた手紙の事だろう。
あの後消息不明とは、それは確かに心配だ。
「かなり前からギルドの方には捜索の依頼を出しているのですがなんの手掛かりも掴めず......」
「どこかに監禁されている可能性も視野に入れた方が良いな」
「監禁って、いくらなんでも考えすぎじゃないか? 酒場のマスターだぞ?」
監禁なんてのはこの世界でも罪になるだろう。そんなリスクを犯してまで酒場のマスターを手に入れる価値はあまり無いように感じるんだが違うのか?
「分かっていないなマツルは。この世界での真の料理人というのは一介の料理人と訳が違う」
「そうなのか?」
「ああ、例えばこのからあげ。食べてみて分かった。軍隊鶏の肉を使っているな?」
「!? その通りです!」
ナマコ神様、軍隊鶏って?
『軍隊鶏、狩猟難度Bのそこそこの魔獣だね。基本5~20匹の集団で生息していて、まるで軍隊のように統率のとれた攻撃を仕掛けて来る。その肉はとても美味いが軍隊鶏しか保有出来ない特殊な細菌、“ガンリロバクテリア”を体内に保有しているんだ。“ガンリロバクテリア”は他の生物が口にしたら最後、1gで数万人は殺せるその強い毒性で一瞬であの世へ――――』
分かった。なんか凄いヤバいってのは分かった。
この唐揚げそんなヤバい魔獣の肉だったのかよ......
『要は“滅茶苦茶美味しいけど食ったら死ぬからもどかしい”って感じだね』
「じゃあなんでレオノラは軍隊鶏の味が分かったんだ!? 食ったら死ぬんだろ!?」
「遠征中に一度だけな。俺が毒如きで死ぬ訳が無いだろう?」
「お前はそういう奴だったな......」
「話を戻すぞ? 軍隊鶏の無毒化なんて今まで誰も成功した事が無い。それが出来た上でここまで美味しく調理できる人材なんて、どこでも喉から手が出る程欲しいのではないか?」
こう聞くと連れ去られた説が割と現実味を帯びてきたな。
「自分、探しに行きます――――」
「待つんだイントリーグ殿。その道のプロである冒険者が手掛かりすら掴めない状態なのにあなたが出ても事態は好転しない」
「じゃあこのまま心配だけしてろって言うんですか?」
「そんな訳ないだろ。俺がその心配をすぐに払ってやるって事だよ」
「マツルさん......!」
「もしどこかに攫われたとしたら......ココとココら辺が怪しいな」
レオノラはどこからか地図を取り出し、ある二つの国を指さした。
「ありがとうなレオノラ。すぐホノラと出る。もし何かあれば連絡する」
「マツルさん! どうかヨージさんを......師匠をよろしくお願いします!!」
「ああ......行ってきま――――ル゛ッッ!!!!!!!!!!」
「――あるよ」
カッコよくキメながらギルド舎出入り口の扉を開けようとしたその時。扉が勢い良く開き正面にいた俺とレオノラを吹き飛ばした。
そこに立っていたのは、異世界にしては珍しい日本人風の顔をした壮年の男性だった。
「し......師匠!?」
え!? この人がヨージさん!?
――――
「――それで、一体何がどういう訳でこうなってるんだ?」
「......あるよ」
「ヨージ殿、何があるのだ?」
「あるよ」
「師匠、『あるよ』しか言いたくない体質の人なんですよ」
「何『あるよしか言いたくない体質』って!?」
「参ったな......筆談ならどうだろうか。紙とペンを......」
「お兄ちゃんは順応が早すぎるよ! もっと戸惑え!」
というくだりがあり、筆談で会話することになったのだった。
「オホン、じゃあ初めから。一体何がどういう訳でこうなってるんですか?」
おお、何か書き始めたぞ!
書き終わったのか、紙をこちらへ見せてくる。
「えーと...『あ』『る』『よ』」
「結局あるよじゃねぇかァァァァ!!!!」
「師匠は『あるよ』しか書きたくない体質の人なんです」
「だったら筆談のくだり要らなかったよね!? てかなんだよ『あるよしか書きたくない体質』って!! その指折ったろかコノヤロォォォォ!!!!」
「じゃあ自分が通訳しますね」
「イントリーグさん......それができるなら最初からそうしてください......」
「で! 一体(以下略」
「あるよ」
「えーと......『そろそろイントリーグに店を任せてもいい頃だと思った。お前にはその実力があると思った。だからちゃんと置き手紙をしておいたんだが』だそうです」
あ、あの置き手紙の『あるよ』は『(イントリーグには店を一人で回すだけの実力が)あるよ』って事だったのか!
「ってわかるかァァァァァァ!!!!」
「紛らわしい事この上ないな......」
「あるよ」
「えーと、『それでのんびり諸国を巡る旅に出たのだが、数日前メツセイが急に訪ねてきて“行方不明だと思われてるから一度帰った方が良い”なんて言うもんだから帰ってきた』そうです」
たった三文字に想い込めすぎだろ!
「たまたま別の仕事で“ニシハッテ公国”に行ったらヨージの旦那が雇われバーテンダーしてるもんだからビビったぜ」
「メツセイ!! あんたが連れ帰って来てたのね......」
「あるよ」
「『だが、ここに帰ってきて気がついたんだ。やっぱり私には本当にやるべきことがあったんだって』師匠......」
つまり、また“ヨージ”のマスターに戻るって事だな!!
「あるよ」
「『私、戻るよ......一流の消しゴム農家に』師匠!」
え......消しゴ......え?
「あるよ」
「『ではさらばだ。イントリーグ、この店は任せたぞ』師匠!」
「ちょっと待ってくれ消しゴム農家ってなんだァッ!?」
「待てマツル。良い話だ......引き止めるのは野暮って物だろう......」
「レオノラ殿の言う通りだ! 良いじゃねぇか消しゴム農家......きっとスパランピンコンテストでも優勝出来るさ」
「もう本人達が良いなら俺もそれでいいや」
「あるよ(あばよ)」
「師匠ぉー! お達者でぇぇぇ!!」
ヨージさんは踏み出したのだ。一流の消しゴム農家として、スパランピンコンテストで優勝するという目標に向かって。
今、ギルド舎からその第一歩が刻まれる――――
「わーい。ボブはBMWの免許が取れて嬉しいです! ボブは暴走機関車なのです! BMWはB(ボブは)M(免許取れた)W(わーい)の略なのです」
「あル゛ッッッ......」
第一歩で......BMWに轢かれた......
「スパランピンコンテストォォォォォ!!!!」
こうして、消しゴム農家になる為に必要な大臀筋を負傷したヨージさんはスパランピンコンテスト優勝の夢を諦め、“ヨージ”のマスターに再任したのだった。
めでたしめでたし
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