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閑話

第115話 行方不明のマスター①

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「――マツル、この“からあげ”なる物も食べてみたいのだが一つ貰っても良いか?」

「......は?」

 ある日の昼下がり、俺の対面で飯をつつくレオノラがメニュー表を眺めながら質問してきた。

 それより......それより......

「なんで俺はお前と昼メシ食ってんだァ!?」

「それはこっちのセリフだァ!!!! いきなり我が愛しの妹が尋ねてきたと思ったら気絶させられていつの間にかここに連れてこられたんだぞ!? お兄ちゃんホノラが強くなってて嬉しいけど! 強くなってて嬉しいけど!!」

「レオノラお前もだったのか......って事は俺のポケットに入ってた『まだ仲悪そうだからちゃんと仲直りね!!』って手紙もそういう......」

「さすがホノラ。気遣い力が凄い」

「よくお前こんな状況で飯食えるな......」

 第一人の視線がヤバい。レオノラはこんなでも騎士団長だ。そんな人が気を失った状態で“ヨージ”に運び込まれ、気が付いたと思ったらそんな事お構いなしに飯を食ってるんだからそりゃ誰だって驚くと言うものだ。

「ちょうど昼時だったし、起きたら目の前に美味しそうな料理が並んでるんだから、それは食うだろう」

 因みにロージーが食べているのは【イントリーグ日替わりランチセットB】である。
 何かのベーコン、レタスっぽい野菜、チーズみたいな発酵食品を挟んだサンドイッチとトマト風味のスープの基本セットに、Bメニューにはコロッケのような揚げ物が三個付いている。
 俺が頼んだAセットには唐揚げが付く。

 これで値段は銅貨3枚! 日本円換算で約300円!! 安いッ!!

「――で、からあげを一つくれるのか? くれないのか?」

「その代わりお前のコロッケと交換な」

「等価交換か......良いだろう」

 レオノラは拳大の唐揚げを一口で頬張った。

ほれはこれは......ふはひな美味いな!!」

「食べきってから喋れよ......」

「騎士団長様にそう言っていただけると嬉しいですね!」

「イントリーグ殿......これはあなたが?」

「はい、今揚げているのは自分です! でも、これを考案したのは自分の師匠......あ、この酒場の店主でもあるヨージさんですよ!」

 唐揚げを考案......ヨージさんも俺と同じ世界から来たのか? まあ美味けりゃどっちでも良いか。

「ヨージ殿......話は聞くが会った事は無いな」

「確かに! 俺もどんな人なのか会ってみたいです!」

 「会いたい」という言葉を聞いた途端、目に見えてイントリーグさんの表情が暗くなった。

「どうしたんですか?」

「まさか......この唐揚げの肉が......?」

「脳みそ洗って来いバカ兄貴」

「――それが......ヨージさん......帰って来ないんです......」
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