異世界ハードモード！〜持ってるチートスキルが使えなくても強くなれる剣士として努力を続けようと思います！〜

第6章 灰の反逆

第92話 灰の男②

（斜め右！　正面っ！　後ろフェイントからの上段蹴り！）

「辛うじて防御しているようだがそれでは体力切れでお前の負けだぞ？」

　分かってるわバーカ!!
　キツい......肺が痛くなってきた......そろそろナマコ神様頼む！　見つけてくれぇ!!

『急かさないでよ!!　大体君は下手に物覚えが良いせいで記憶の量が多いのよ!!　もう少し時間稼いで!!』

　時間稼ぐって言ったって......まずい......酸欠で意識が......

　闘気練り上げて戦闘力を底上げするか？

　いや、この場で魔力を取り込む為に大きく呼吸するのは自殺行為だ......オマケに使えたとして勝てるかは分からんしな。

　実はガラスの強度を一点への衝撃に特化させた事で線での攻撃に弱くなってる可能性は？......試してみるか

　次レオノラはどこから来る......音をよく聴け。気配を感じ取れ！

　正面から音と気配を感じる!!

（そこォ!!）

　刀を前方に振り抜いた時、既にその場に気配は無かった。そして感じるのは後ろからの殺気......避けられた!?　いや違う！　気配だけ前方へ残して後ろへ回り込んだ!?　ンな事も出来るのかよこの野郎!!

　でもそれが分かったなら、対処は可能!!

【我流剣術“斬術”回天かいてん・猛蛇もうだ】

　俺は刀を振り抜いた勢いのまま後ろへ回した。

　ガラスと触れた嫌な音が響き、レオノラの気配が後ろへと下がったのが分かった。

　危ねぇ......つか線での攻撃も駄目か......やっぱり後はナマコ神様が探してくれてる俺の記憶頼りか......

『あったよマツル君!!　これじゃないか!?』

　ナマコ神様の声が響くと同時に、俺の記憶が呼び起こされる。

「ルパートの涙」!!　これだよこれ！　確か雫状の部分はどんな衝撃にも耐えれる位強いけどヒゲみたいな部分は弱いっていう奴！　もしレオノラのガラスの防御壁がこれと同じ原理ならどこかにチョロっとヒゲみたいなのが出来てるハズ!!　

――――でも灰と透明化で姿見えないのにどうやって探すんだ!?

　えーとヒゲが壊れると全体が吹き飛ぶのは圧力がかかって中からひび割れるからで、それをヒゲ無しの状態でやるには内部から圧力をかける事が出来れば良くて......あぁもうめんどくさい!!　叩き割る！

　大きく息を吸え!!　漂う灰だって元は魔法なんだから還元くらいやれ俺の身体!!

「急に呼吸を......？　何をするつもりだ」

「お前のその邪魔な壁をぶち砕く名案が思いついたんだよォ!!【闘気変換とうきへんかん】!!!!」

「お前.....なんだその威圧感は...！」

　肺がぶち壊れる感覚!!　長くは持たねぇ巻きで行く!!

「砕け散れ!!【我流“一撃必殺”TheENDジェット・インパクト】!!!!」

　この一撃で終わるなら!!　防御を捨てろ!!　隙を見せろ!!　見せた所でお前レオノラは反応出来ないッ!!!!

「オオオオオオオオオオ!!!!」

「こんな事が――――！」

　俺の振り下ろした渾身の一刀はレオノラの周りを覆っていたガラスの防御壁を一撃で砕き、部屋に充満していた灰ごと吹き飛ばした。

　砕き割れたガラスの細かな破片は衝撃波を纏い俺達に散弾の雨を食らわせた。

「はぁ.......はァ......やったか......？」

　肺が完全にぶっ壊れてしまった。溜まった灰も吐き出せないし気道からの血が止まらん。

　うぅ......目が霞んできた身体に力が入らねぇ......レオノラは？

「まさかお前を完封する為に改良した【灰防御魔法・雫の虚城ティアーキングダム】がこうも簡単に破られるとは......そこだけは褒めてやっても良いが......お前はもう駄目だな。“次”へ行くのは俺だ」