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第6章 灰の反逆
第89話 5F〜ホノラの喧嘩〜sideホノラ②
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全身に音が響く。
まるで巨大な金属の塊をぶつけ合っているような重打撃音は私たちから出ている。
およそ拳と拳が衝突した時になるような音では無いけど、それが良い。
相手の拳を受けた時の全身を貫く衝撃が、私が殴った時に溢れ出る手応えが全ての感覚を楽しませてくれる。
刹那のやり取り、そこに言葉は必要無かった。
「シッッ!!」
「らぁッ!!」
お互いに口から出る音は空気を吐き出し力を込める音だけだった。
拳を撃ち突け合う瞬間、相手の考えている事がわかる気がした。それは恐らく相手も同じだろう。
一度目の衝突で
(お前は兄の所へ行かなくていいのか?)
「......ッ!?」
と聞かれた。
二度目の衝突で
(私はお兄ちゃんもマツルも信じてる。だから今はこの感覚に浸り続けたいの)
「......ッ?」
そう返した。これは相手に届いただろうか。
三度、四度と私たちは殴り合いを続けた。何を殴ったかはよく覚えていない。
本気で闘り合っても倒れない相手、肌を刺す衝撃波の暴威、私が自己の限界まで身体能力を引き出せる技術。全てが揃っている。
楽しい......
楽しい!
楽しい!!!!
――そのはずなのに何かが足りない。分からないのに何かが満たされていない事だけは分かる。
分からないなら疑いを全て消していけばいい。
私は防御せず相手の攻撃を腹に受けた。
(何故まともに受けた?)
と相手からの疑問が感じられたがそれは今はどうでもいい。
内蔵を無理やり抉り出されたような痛み。今ので臟が破裂したのだろうか。口から吐き出される血が止まらない。
でも違う。足りないのは“命を削り合う痛み”では無い。少し近い気がするけど違う。
これじゃあダメージの受け損じゃない? 痛いんですけど。
じゃあ次
後ろに回り込んで放った蹴りがロックに命中し横方向に吹き飛んだ。
違う。足りないのは“相手を凌駕する圧倒的な速さと力”では無い。
ロックが壁に叩きつけられてから5秒。立ち上がって来ない。やり過ぎちゃった......?
「ゴフッ......!!」
よかった。立ってくれた。まだ戦える。
――――
それからどれ位の時間が経ったのだろうか。私たちは幾度と無く攻防を繰り返した。既に部屋はボロボロになっていて、戦う前の洗練された家具は見る影も無く消滅している。
まだ分からない。足りない物はなんなのか。こんなに楽しいのに何に満たされていないの?
「――――ちょいタンマ! 一旦止めよう」
「何よ......まだ私はやれる! もっとやりましょ!!」
「お前......なんで手加減してんだ?」
ロックが何を言っているのか理解できない。本気の勝負なのに手加減? そんな事する訳ないじゃない。
「俺だって伊達に永く魔人やってる訳じゃねぇからな。相対した時の威圧感である程度の力量は見計れる......気合い入れた時のお前の威圧感はそんなもんじゃ無かった! お前は気丈に振る舞いながらもどこか別の所で何かに怯えている。そんな戦い方だ!!」
何かに怯えている......? 今の私が? 何に?
でも、ロックも闘いで感情を感じ取れているみたい。
仮に私が何かに怯えているとして......うーんと、えーと......
「ぐぁぁぁぁぁ分からない! 私は今は闘っていたいの!! ロックは文句ある!?」
「......無い」
少し不満そうな顔をしたような気がするけど、構えてくれた。
私の闘いはまだ続くという事実に心が踊った。
まるで巨大な金属の塊をぶつけ合っているような重打撃音は私たちから出ている。
およそ拳と拳が衝突した時になるような音では無いけど、それが良い。
相手の拳を受けた時の全身を貫く衝撃が、私が殴った時に溢れ出る手応えが全ての感覚を楽しませてくれる。
刹那のやり取り、そこに言葉は必要無かった。
「シッッ!!」
「らぁッ!!」
お互いに口から出る音は空気を吐き出し力を込める音だけだった。
拳を撃ち突け合う瞬間、相手の考えている事がわかる気がした。それは恐らく相手も同じだろう。
一度目の衝突で
(お前は兄の所へ行かなくていいのか?)
「......ッ!?」
と聞かれた。
二度目の衝突で
(私はお兄ちゃんもマツルも信じてる。だから今はこの感覚に浸り続けたいの)
「......ッ?」
そう返した。これは相手に届いただろうか。
三度、四度と私たちは殴り合いを続けた。何を殴ったかはよく覚えていない。
本気で闘り合っても倒れない相手、肌を刺す衝撃波の暴威、私が自己の限界まで身体能力を引き出せる技術。全てが揃っている。
楽しい......
楽しい!
楽しい!!!!
――そのはずなのに何かが足りない。分からないのに何かが満たされていない事だけは分かる。
分からないなら疑いを全て消していけばいい。
私は防御せず相手の攻撃を腹に受けた。
(何故まともに受けた?)
と相手からの疑問が感じられたがそれは今はどうでもいい。
内蔵を無理やり抉り出されたような痛み。今ので臟が破裂したのだろうか。口から吐き出される血が止まらない。
でも違う。足りないのは“命を削り合う痛み”では無い。少し近い気がするけど違う。
これじゃあダメージの受け損じゃない? 痛いんですけど。
じゃあ次
後ろに回り込んで放った蹴りがロックに命中し横方向に吹き飛んだ。
違う。足りないのは“相手を凌駕する圧倒的な速さと力”では無い。
ロックが壁に叩きつけられてから5秒。立ち上がって来ない。やり過ぎちゃった......?
「ゴフッ......!!」
よかった。立ってくれた。まだ戦える。
――――
それからどれ位の時間が経ったのだろうか。私たちは幾度と無く攻防を繰り返した。既に部屋はボロボロになっていて、戦う前の洗練された家具は見る影も無く消滅している。
まだ分からない。足りない物はなんなのか。こんなに楽しいのに何に満たされていないの?
「――――ちょいタンマ! 一旦止めよう」
「何よ......まだ私はやれる! もっとやりましょ!!」
「お前......なんで手加減してんだ?」
ロックが何を言っているのか理解できない。本気の勝負なのに手加減? そんな事する訳ないじゃない。
「俺だって伊達に永く魔人やってる訳じゃねぇからな。相対した時の威圧感である程度の力量は見計れる......気合い入れた時のお前の威圧感はそんなもんじゃ無かった! お前は気丈に振る舞いながらもどこか別の所で何かに怯えている。そんな戦い方だ!!」
何かに怯えている......? 今の私が? 何に?
でも、ロックも闘いで感情を感じ取れているみたい。
仮に私が何かに怯えているとして......うーんと、えーと......
「ぐぁぁぁぁぁ分からない! 私は今は闘っていたいの!! ロックは文句ある!?」
「......無い」
少し不満そうな顔をしたような気がするけど、構えてくれた。
私の闘いはまだ続くという事実に心が踊った。
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