上 下
42 / 135
閑話

第42話 恋で人の心は一つになる

しおりを挟む
「メツセイさんって、いつもヨージでお酒飲んでますけど、普段何してるんですか?」

 マツルの一言で酒場ヨージの店内が凍りつく!!

「あっ......」

 手の震えが止まらず皿を割るイントリーグ!!

「何......!? 俺の杖の魔鉱石が......」

「私のも!」

「ワシのも」

 その時酒場にいた全員の魔鉱石にヒビが入る!!

「ああ......ボブは今日ツイてないです......」

 頭に鳥の糞を落とされた何も知らない通りすがりのボブ!!

「兄ちゃん......良いだろう教えてやる。俺が普段何をしているのかを」

 某セカンドインパクトの司令官のポーズを取ったメツセイが睨むようにマツルを見て話し始める。

 今! 世界で一番興味が湧かないメツセイの一日が明かされる!!

「え、はい。ありがとうございます......」

 この時点でマツルは既に興味を失っていた。


◇◇◇◇

「まずな、朝起きるだろ」

~~~~

『おいメツセイ! 朝だぞ!? とっとと仕事に行ってきな!』

『うるせえなフューネス......今日は休むから寝かせろ......』

『それ許すと絶対明日も同じ事繰り返すだろ!? ほら早く支度して! 朝ごはん食べてとっととギルドに行ってきな!!』

『めんどくさいな......』

~~~~

「と、フューネスにいつも布団をひっぺがされて朝起きるんだ。ただ、基本俺が出なきゃならないような緊急なクエストは無いから、酒飲んで待機してる訳よ! ガッハッハ!!」

 さも当然といった顔で話すメツセイだが、そんな事実は初耳のマツル。

 ここで一気に話への興味が爆発する!!

「え、メツセイ!? あなたえ!? フューネスさんと一緒に住んでるんですか!?」

「言ってなかったか?」

「初耳だわドワーフおい!」

 「なぜそんな面白い話を黙ってたんだ」と言わんばかりに詰めるマツル。
 刺激を狙うハイエナの目は血走っていた。

「――と言うのも、最近住んでた家を追い出されてなァ......家賃の滞納で」

「アンタAランク冒険者なんでしょ? なんで家賃が払えないんですか」

「酒代に全部消えた」

「控えましょうよ、お酒」

「――それでフューネスの家に転がり込んだ......そしたらアイツすげぇうるせぇのよ! 汚れ物は一気に洗濯するから纏めておけとか飯要らない時は前もって言えとか......」

 この時、この話を聞いていた全員が「夫婦やん」と思った。

「でも意外ですね。フューネスさんって結構大雑把なイメージがありましたけど......」

 マツルは「悪く言えばガサツ」の一言をオレンジジュースと一緒に飲み込んだ。

「アイツは大雑把だが、ちゃんとしてる所はちゃんとしてるからな......直接言うと恥ずかしいしすぐ調子に乗るから言えないが、俺を住まわせてくれてる所とか...飯作ってくれてる所とか感謝してるよ......すごく」

 恥ずかしくて酒のせいで顔を真っ赤にしたメツセイはジョッキに残っていた酒を一気に飲み干した。

 この時、この話を聞いていた全員が「熟年ですやんありがとうございます」と思った!!

「メツセイ......そろそろ晩飯時だけど、ご飯どうするか伝えて来たのか?」

「伝えてないが――――」

「帰らせろォォォォ!!!!」

「「「ウォォォォ!!!!」」」

 ここで全員(メツセイを除く)の心が一つになる!! 

「兄ちゃん、お前らやめろ!! 第一まだ会計だって済ませてないんだぞ!?」

 男達に担がれ運び出されるメツセイが手足をジタバタさせながら叫んでいる。

「安心しろメツセイ! 今日は俺が奢ります!! イントリーグさん!! メツセイの分の代金は!?」

「占めて銀貨12枚です。あ、金貨1枚と銀貨2枚でも大丈夫ですよ」

 銀貨12枚。日本円換算で約1万2000円!!!!

 しかしマツルの財布には銀貨1枚と銅貨5枚のみ!! マツル、痛恨の金欠!!!!

「安心しろマツル!! 今日は俺達で割り勘だぁぁぁ!」

 メツセイを担ぎ出そうとしている冒険者の野郎共の天からの助け舟!!

 大事な事なのでもう一度言おう!

 ここで全員(メツセイを除く)の心が一つになった!!

 そしてメツセイは、抵抗虚しくフューネスの武具屋(住居兼用)へと送り届けられたのだった!


◇◇◇◇


「全くなんだったんだアイツら......」

「お、メツセイ! 帰ってきたのかい?」

 一糸纏わぬハダカエプロン姿のフューネスがひょっこりと顔のみをキッチンから出す。

「ただいま......つか、お前服くらい着ろよ......」

「別に良いだろう? 別に減るもんじゃないんだしさ! ふふっ」

「笑い事じゃないだろ......今日の晩飯はなんだ?」

「先にシャワーでも浴びて来ちゃいな! 上がる頃にはできてるよ」

 キッチンからは、メツセイの好きな匂いが既に流れ出ていた。

「この匂いは......ハンバーグだな?」

 「どうだ? 当たっただろう?」と言わんばかりにニヤけるメツセイ。

「バレちゃ仕方がないね......メツセイ好きだろ? アタシのお袋仕込の煮込みハンバーグ!」

 「今日は帰ってくるような気がして朝から作ってたんだ」と大笑いのフューネス。


 言葉にしなくても伝わる言葉が、そこにはあったのだった。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

ブラック宮廷から解放されたので、のんびりスローライフを始めます! ~最強ゴーレム使いの気ままな森暮らし~

ヒツキノドカ
ファンタジー
「クレイ・ウェスタ―! 貴様を宮廷から追放する!」  ブラック宮廷に勤めるゴーレム使いのクレイ・ウェスターはある日突然クビを宣告される。  理由は『不当に高い素材を買いあさったこと』とされたが……それはクレイに嫉妬する、宮廷魔術師団長の策略だった。  追放されたクレイは、自由なスローライフを求めて辺境の森へと向かう。  そこで主人公は得意のゴーレム魔術を生かしてあっという間に快適な生活を手に入れる。    一方宮廷では、クレイがいなくなったことで様々なトラブルが発生。  宮廷魔術師団長は知らなかった。  クレイがどれほど宮廷にとって重要な人物だったのか。  そして、自分では穴埋めできないほどにクレイと実力が離れていたことも。  「こんなはずでは……」と嘆きながら宮廷魔術師団長はクレイの元に向かい、戻ってくるように懇願するが、すでに理想の生活を手に入れたクレイにあっさり断られてしまう。  これはブラック宮廷から解放された天才ゴーレム使いの青年が、念願の自由なスローライフを満喫する話。 ーーーーーー ーーー ※4/29HOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝! ※推敲はしていますが、誤字脱字があるかもしれません。 見つけた際はご報告いただけますと幸いです……

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~

むらくも航
ファンタジー
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。 ☆10/25からは、毎日18時に更新予定!

異世界に降り立った刀匠の孫─真打─

リゥル
ファンタジー
 異世界に降り立った刀匠の孫─影打─が読みやすく修正され戻ってきました。ストーリーの続きも連載されます、是非お楽しみに!  主人公、帯刀奏。彼は刀鍛冶の人間国宝である、帯刀響の孫である。  亡くなった祖父の刀を握り泣いていると、突然異世界へと召喚されてしまう。  召喚されたものの、周囲の人々の期待とは裏腹に、彼の能力が期待していたものと違い、かけ離れて脆弱だったことを知る。  そして失敗と罵られ、彼の祖父が打った形見の刀まで侮辱された。  それに怒りを覚えたカナデは、形見の刀を抜刀。  過去に、勇者が使っていたと言われる聖剣に切りかかる。 ――この物語は、冒険や物作り、によって成長していく少年たちを描く物語。  カナデは、人々と触れ合い、世界を知り、祖父を超える一振りを打つことが出来るのだろうか……。

処理中です...