36 / 135
第3章 兄と妹
第36話 魔法ってなんでもアリすぎやしませんか?
しおりを挟む
「――貴様、俺がなんの魔法を使うか分かったから勝てるとか思っていないよな......良いだろう。俺の灰魔法の真の力、見せてやろう......」
「見せてみろやシスコン野郎がァ!!」
よし、少し時間が空いたから肺と気道の損傷もほんの少しだが回復した。
後は何故か斬れないバリアらしき物を破るだけだが、そっちの方の見当は全く付かん。やっぱり灰魔法とは別に防御系の魔法を使ってるのか?
『その線はちょっと薄いね~』
〈ナマコ神様? それはまた何でだ?〉
『んとね。防御魔法ってすっごい魔力と精神力を使うのよ。それを三十分なんて長い間展開し続けるのは現実的じゃない訳』
そういえばギルドマスターも俺の攻撃を受ける一瞬だけしか防御魔法を展開してなかったな......となると、俺に対する攻撃と防御を全て一つの魔法、灰魔法で行っている可能性が高い訳だ。
「――やれやれ。では、今度は僕から動こう」
レオノラの身体がブレたように歪み、消えた。
「消える事も出来んのか――」
「ヴッ――!!」
次の瞬間、鳩尾を殴られた俺は、意識が追い付く頃には後方へ吹き飛ばされていた。
ホノラと同等、いやそれ以上のパワー!
「グッ......流石はお兄ちゃんってか?」
「当然だ。兄妹喧嘩だって負けた事は無い」
また消えやがった!
落ち着けマツル......姿が消えただけで音が消えてる訳じゃない!
レオノラは音と気配を限りなく消してはいるが完全じゃない......ゆっくりとこっちに来ている......
「そこぉ!!!!」
俺の顎を刈り取る予定だった回し蹴りを辛うじて刀の峰で受ける事に成功した俺は、体勢を立て直す為に大きく距離を取った。
『うーん......何度見ても分からないね~。彼も“ユニークスキル”を持ってるんじゃないのかい?』
〈いや、違うな。姿が消えるのも灰魔法の一部、なんなら硬くて見えない防御灰魔法もその一部だ〉
取り敢えずあるとめんどくさいあの防御灰魔法を解く!
全身に空気を巡らせろ......全てを剣先に集中!!
「ガフッ!!」
呼吸をすると吸った空気と同じくらいの血が出てくる......なら!!
痛みすらも力に換える!
【我流剣術“刺突術”八気・東門六甲】
「ガァァァァ!!!!」
地面がヘコむ程の踏み込みを経て繰り出される突きがレオノラの目の前の防御壁に接触する。
ガシャァァァン!!!!
次の瞬間、防御壁が音を立てて砕け散った。
「な......何!?」
「ハッハッハァ!! お兄ちゃんの身体を護ってた壁の正体......それは“ガラス”だ!!」
「――どうやったかは知らないが、屈折率とかをなんやかんやして姿もついでに消してたんだろ!」
魔法があればなんでも出来るんだ。原理的なのは俺よく知らん!
レオノラは一瞬動揺こそしたものの、またすぐ表情に余裕が戻った。
「ふ......僕のホノラが着替え中とかの無防備な時に襲われないか確認する為にこの魔法を編み出したんだ......今までホノラ以外の誰にもバレた事なかったのだがな――――」
うわきも! でもホノラにはバレてんのか......その度にボコボコにされてるだろうに懲りない兄貴だな。
「まさか防御と姿消しの両方を同時に破られるとは......僕のホノラを誑かすような不届き者にしてはやるではないか」
「だからそんな事してないっての! マジ人の話聞かねぇなお前!」
「黙れよ下郎!! ならなぜ王国騎士団に入団するはずだったホノラが今冒険者をやっているのだ!! 貴様が誑かしたからだろうが!!」
「え、そうなの?」
「え?」
俺とレオノラの間にかなり微妙な空気が流れる。お互いがお互いの目を見るのも憚ってたのに今は目を見合わせてポカンとしている。
ホノラは――――
「ピュープスー......」
決してこっちを見ようとしない。口笛すらも吹けていない。これは何か隠してるな?
「おいホノラ!! ちょっとこっち来て説明しろ!!」
「う......分かったわよ......」
ホノラは全てを白状したのだった。
◇◇◇◇
ホノラの言うことには、本来ホノラは兄、レオノラ率いる王国騎士団が国に帰ってきたらそのまま騎士団に入団する予定だったらしい。
しかし、俺という存在が出現。ホノラはしめたとばかりに俺と一緒にギルドへ加入。そして今に至ると......
なぜそんなに騎士団に入るのが嫌だったのか聞いてみると、
「この兄貴と同じ場所で働くのは死んでも嫌」
と至極真っ当な答えが帰ってきた。
「で、結局どっちが勝ったの?」
ホノラが観客席に再び戻る前に質問を俺達二人に投げかけた。
うん、もうどっちでも良いかなって思ってたんだけど、これはもうレオノラに任せよう。
「どうする? まだやるって言うならやるけど」
「......今日の所は引き分けにしないか?」
「それがいいな」
という事でアッサリと引き分け、勝負の結果はいつかへ持ち越しとなったのだった。
「見せてみろやシスコン野郎がァ!!」
よし、少し時間が空いたから肺と気道の損傷もほんの少しだが回復した。
後は何故か斬れないバリアらしき物を破るだけだが、そっちの方の見当は全く付かん。やっぱり灰魔法とは別に防御系の魔法を使ってるのか?
『その線はちょっと薄いね~』
〈ナマコ神様? それはまた何でだ?〉
『んとね。防御魔法ってすっごい魔力と精神力を使うのよ。それを三十分なんて長い間展開し続けるのは現実的じゃない訳』
そういえばギルドマスターも俺の攻撃を受ける一瞬だけしか防御魔法を展開してなかったな......となると、俺に対する攻撃と防御を全て一つの魔法、灰魔法で行っている可能性が高い訳だ。
「――やれやれ。では、今度は僕から動こう」
レオノラの身体がブレたように歪み、消えた。
「消える事も出来んのか――」
「ヴッ――!!」
次の瞬間、鳩尾を殴られた俺は、意識が追い付く頃には後方へ吹き飛ばされていた。
ホノラと同等、いやそれ以上のパワー!
「グッ......流石はお兄ちゃんってか?」
「当然だ。兄妹喧嘩だって負けた事は無い」
また消えやがった!
落ち着けマツル......姿が消えただけで音が消えてる訳じゃない!
レオノラは音と気配を限りなく消してはいるが完全じゃない......ゆっくりとこっちに来ている......
「そこぉ!!!!」
俺の顎を刈り取る予定だった回し蹴りを辛うじて刀の峰で受ける事に成功した俺は、体勢を立て直す為に大きく距離を取った。
『うーん......何度見ても分からないね~。彼も“ユニークスキル”を持ってるんじゃないのかい?』
〈いや、違うな。姿が消えるのも灰魔法の一部、なんなら硬くて見えない防御灰魔法もその一部だ〉
取り敢えずあるとめんどくさいあの防御灰魔法を解く!
全身に空気を巡らせろ......全てを剣先に集中!!
「ガフッ!!」
呼吸をすると吸った空気と同じくらいの血が出てくる......なら!!
痛みすらも力に換える!
【我流剣術“刺突術”八気・東門六甲】
「ガァァァァ!!!!」
地面がヘコむ程の踏み込みを経て繰り出される突きがレオノラの目の前の防御壁に接触する。
ガシャァァァン!!!!
次の瞬間、防御壁が音を立てて砕け散った。
「な......何!?」
「ハッハッハァ!! お兄ちゃんの身体を護ってた壁の正体......それは“ガラス”だ!!」
「――どうやったかは知らないが、屈折率とかをなんやかんやして姿もついでに消してたんだろ!」
魔法があればなんでも出来るんだ。原理的なのは俺よく知らん!
レオノラは一瞬動揺こそしたものの、またすぐ表情に余裕が戻った。
「ふ......僕のホノラが着替え中とかの無防備な時に襲われないか確認する為にこの魔法を編み出したんだ......今までホノラ以外の誰にもバレた事なかったのだがな――――」
うわきも! でもホノラにはバレてんのか......その度にボコボコにされてるだろうに懲りない兄貴だな。
「まさか防御と姿消しの両方を同時に破られるとは......僕のホノラを誑かすような不届き者にしてはやるではないか」
「だからそんな事してないっての! マジ人の話聞かねぇなお前!」
「黙れよ下郎!! ならなぜ王国騎士団に入団するはずだったホノラが今冒険者をやっているのだ!! 貴様が誑かしたからだろうが!!」
「え、そうなの?」
「え?」
俺とレオノラの間にかなり微妙な空気が流れる。お互いがお互いの目を見るのも憚ってたのに今は目を見合わせてポカンとしている。
ホノラは――――
「ピュープスー......」
決してこっちを見ようとしない。口笛すらも吹けていない。これは何か隠してるな?
「おいホノラ!! ちょっとこっち来て説明しろ!!」
「う......分かったわよ......」
ホノラは全てを白状したのだった。
◇◇◇◇
ホノラの言うことには、本来ホノラは兄、レオノラ率いる王国騎士団が国に帰ってきたらそのまま騎士団に入団する予定だったらしい。
しかし、俺という存在が出現。ホノラはしめたとばかりに俺と一緒にギルドへ加入。そして今に至ると......
なぜそんなに騎士団に入るのが嫌だったのか聞いてみると、
「この兄貴と同じ場所で働くのは死んでも嫌」
と至極真っ当な答えが帰ってきた。
「で、結局どっちが勝ったの?」
ホノラが観客席に再び戻る前に質問を俺達二人に投げかけた。
うん、もうどっちでも良いかなって思ってたんだけど、これはもうレオノラに任せよう。
「どうする? まだやるって言うならやるけど」
「......今日の所は引き分けにしないか?」
「それがいいな」
という事でアッサリと引き分け、勝負の結果はいつかへ持ち越しとなったのだった。
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~
名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。
無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~
鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!
詳細は近況ボードに載せていきます!
「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」
特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。
しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。
バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて――
こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる