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22. 六日目昼➀※

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 おやつづくりも一段落したシウは、風呂場で可愛いものを見てしまった。なんと、温泉にサルがはいっているのだ。しかも三匹。尻尾が長くて顔に四本のしましま模様がある。シジマザルだ。
 ちょうど時刻は昼下がり。街では暑さが厳しい時間帯だが、山の中腹にあるゼンの家は、どの時間帯も比較的過ごしやすい。
 サルたちは仲睦まじく、互いの毛づくろいをしたりなんかしている。

(いい。ゼンさんとあんな風にお風呂にはいりたい)

 シウは食い入るように猿を見つめた。温泉に入っているサルは、贅沢にも近くで採ったと思われる果実を湯船の中でむしゃむしゃ食べたりしている。

(いい。温泉の中で冷たいものを頂くとか売れそう。ゼンさんも、喜びそう)

 悪くない贅沢である。さっそく、追加のおやつや飲み物を用意して、ゼンと楽しまなければならない。

 他に何かゼンが喜ぶことはあるだろうか。そんなことを思いつつ、シウはいそいそと支度した。


 
 ゼンがはっと気づくと、風呂に入っていた。うっとりしながら、抱きついてきている裸のシウが腕の中にいる。

(いつのまに)

 思い返せば、寝ぼけながら起こされて、たくさんキスされまくって、服を脱がされた気がする。
 シウはゼンの胸に顔を預けてぴったりと身体を寄せている。乳白色の風呂の中は濁ってよく見えないだけに、滑らかなシウの肌の感触が想像力をかきたてる。

「ゼンさん、寝起きで喉乾いてるでしょ」

 シウがさっと木の板をお盆がわりにグラスを乗せて出してきた。見るからにキンキンに冷えて少し曇っている。中には、薄いオレンジ色の飲み物が入っていた。

「ここの氷冷機構、結構性能いいですよね。アステリズムの業務用も顔負けでびっくりしました」

 薦められるままに飲むと、甘酸っぱいベリーの香りがする。温まった身体に、冷たい刺激が喉を通り、胃まで届いたのがわかった。
 気づけば空になっていた。
 
「おいしいでしょ。こんなのもあるんですよ。はい、あーん」

 シウがスプーンの上になにか乗せて差し出してくる。迷わず口に入れると、冷たいものが口の中ですっと溶けた。柑橘系の香りが鼻孔をくすぐる。スッキリとした後味に、いくらでも食べられそうだった。
 それをみこしたように、二口、三口とシウが口の中に入れてくれる。それもあっという間になくなってしまったらしい。

「なかなか良い評価みたいでうれしいです。私にも、味見させてください」

 シウが腕をゼンの首に絡めて、唇を重ねる。冷たいもので冷えた唇に、シウの唇は随分と温かい。腰を引き寄せて、ゼンからも積極的に唇を重ねた。
 胸の上で潰れるおっぱいが相変わらず気持ち良い。お湯の中で擦れる刺激に、ゼンはいつものように興奮した。すでに硬く勃ちあがった股間にシウの肌が強めに触れて、思わずビクつき風呂の湯がパシャリと音を立てる。

「ごちそうさまでした」

 唇の温度が同じくらいになって随分経つころ。ぺろりと唇を舌で舐めて、シウはすっとゼンから身体を離す。てっきりこのまま、いちゃいちゃ継続の流れかと思っていたゼンは、期待に浮ついていた気持ちに、ぎゅうぎゅうと蓋をするも、うまく閉まらない。いまだに軽く寝ぼけているせいか、いつもより流されるスピードが速い気がした。
 ざぱりと立ち上がったシウの白い肌が湯を弾き、隠れて見えなかった輪郭が顕になる。慌ててゼンは、目を逸らした。

「今日は、一緒に身体を洗いっこしませんか」

 そんなことを言いながら、シウはゼンの腕を引っ張ってくる。

(今、立ち上がるわけには!)

 現在、股間は完全臨戦態勢。身体洗うどころではない。一人だけ盛り上がっていたみたいで、大変恥ずかしい。
 湯からあがろうとしないゼンを、シウはのぞきこんだ。

「ゼンさん、どうしました? 顔真っ赤ですよ。のぼせちゃいました? それとも」

 いたずらっ子みたいな顔して、シウは嬉しそうに笑う。

「何か、したいことがあるんですか?」

 大いにある。
 とてもある。
 ただ、どういえばシウに対して失礼にならないのか。
 女性を誘う気の利いた文句が、ゼンは全く浮かばなかった。

「ちゃんと教えてくれたら、なんでもしますよ?」

 唇をツンツンしながら、面白そうにゼンを見つめてくる。ゼンは観念して素直にぶっちゃけることにした。
 
「なんて言ったらいい? シウ、おしえて?」

 今まで余裕ぶって唇ツンツンしてたシウの顔がみるみる真っ赤になった。軽く口を開けてしばらく固まっている。
 
「や……やりますね。そんな真っ赤なかわいい顔で、その切り返しは想定していなかったです」
 
 頬に手を当てて、しばらく目をつぶっていたシウは、そっと耳元で囁く。そしてそのまま、ゼンの肩に顔を埋めてしまった。
 ゼンは、真っ赤に震えるシウの耳にキスし、肩を抱いてシウの身体を起こす。唇にキスし、伏せがちな琥珀色の瞳をまっすぐ見つめた。
 さきほど、シウに言われたとおりの言葉をそのまま口にする。
 
「『シウ、愛してる。今度は、きみが欲しい』って言えばいいんですよ」
「なに馬鹿正直に私の言葉を全部いってるんですか!」

 盛大にお湯を跳ね上げて、シウが湯船に突っ伏した。
 
 何回かやり直しをした結果、ようやくゼンはシウから合格をもらった。途中、うまく言えなくて何度か舌を噛んだ。しかもなぜか台詞を増やされてどんどん難易度が上がるという理不尽さだった。
 湯船の中でシウを上にのせ、すでに潤っている秘所に奥深くまで埋める。シウがうまくバランスを取るのにあわせて、ゆっくり揺さぶる。

「熱くて、くらくらしちゃう」

 キスの合間の、シウの吐息が熱い。
 なんだか息苦しくて、余計に昂る。
 湯の中でしているせいか、お互いの身体の境界も曖昧で、まるで一つに溶け合っているような錯覚に陥る。
 シウの中は相変わらずゼンを魅惑的にしめつけるし、両手で好き放題揉んでるおっぱいは柔らかいしで、もういつ射精してもおかしくない……のだが、ここにきて、流石に目が覚めてきて、どこかに行っていた理性が遠慮がちに戻ってきた。
 
「ゼンさん、なかに、ください」

 目を潤ませるシウに、ゼンは首を振る。
 それは最後の牙城。今まで散々、脆くも崩れている砂の城だが、一応守れるときは守っておきたい矜持であった。

「じゃあ、違うとこにもらいますね! 私がいいっていうまで、だしちゃだめですよ」

 想定通りみたいな感じで朗らかに言い、シウがゼンにしがみつく。ズルリと引き抜かれる感触に、達しそうになるのをなんとかゼンはこらえた。

「そこの、岩に座ってください」

 熱さで朦朧としながら、言われたまま岩に座る。股間を柔らかなもので挟まれて我にかえった。
 シウがおっぱいで挟みながら、先端を口に含んでくれている。

「ほら、ゼンさん横から持って?」

 ゼンの手をおっぱいに添え、横から押さえるように促してくるシウ。これはもう、横から押しながら揉むしかない。シウは気持ちよさそうに、鼻にかかった声をあげながら、必死でゼンのものを咥える。その様子に、なおさら昂ぶった。
 睾丸もやわやわと揉まれて、その裏も刺激される。
 たまらず、シウのおっぱいを強く押し込みながら、思いっきり射精した。
 飲み込みきれない白濁液が、シウの口の横から溢れる。それは顎を伝い、胸のふくらみも汚す。

 シウは、しばらく口を押さえたあと、口の端や胸についた精液を指ですくって、舌で舐めた。

「気持ちよかったですか? もう一回、しちゃいます?」

 ゼンが答える前に、陰茎をすくうように持ち上げ、先端にキスする。舌を這わせながら、根元に向けて何度も唇を押し当てる。陰嚢の方まで舌を伸ばして口に含んで刺激する。

「そんなにしなくていい」
「このにおいも、好きですよ」
 
 目を細めながら、シウは宝物のようにゼンを愛撫してくれる。

(シウは、なんでこんなにしてくれるんだっけ)

 湯でのぼせてるのと、身体が昂っているので、頭に霞がかかったようだった。護衛の報酬は前払いでよかったはずだ。

「シウ、なにか企んでる?」

 シウは、目をぱちくりさせて少し考えたあと、ぱちりとウィンクした。
 
「ゼンさんには護衛以外にもいろいろお願いしようかと」

 ばしゃりと飛沫があがる。
 湯の中でゼンはシウを抱きしめた。

「こんなことしなくても、俺はシウのためならなんでもする」

 シウの顔がみるみる真っ赤になり、瞳が潤む。彼女が両手で自身の頬を叩く前に、さっとゼンがその手を握った。指を絡めて、きゅっと握る。
 真剣に、まっすぐ見つめてくるゼンの視線に、思わずシウは俯く。
 
「わ、わたしは、ゼンさんに喜んでほしいとも思ってます。嫌でしたか?」

 真っ赤な顔でうつむくシウの頬に、ゼンは口づけた。無性に頬が緩む。抱きしめる腕に、さらに力を込める。

 もう余計なこと、ごちゃごちゃ考えるのはやめよう。そう思うゼンだった。
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