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13. 五日目朝➀※

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 さわやかな気持ちで目覚めたシウは、ぐっと拳を握った。 

(よおおぉっし!)
 
 診療所送りにされたものの、ゼンを護衛として雇うことに成功したのだ。やはり、ゼンの誠実さにつけこんだ形にはなったが、目的達成に一歩近づいた。
 
 起きていきなり死体が転がっていたのには驚いたが、味方としては頼もしい限りである。
 
 しかもシウが思ったより、ゼンは大物だったようだ。高ランクというか、そんなランクではかれるものではない気がする。
 
 昨日の診療所を思い出す。夜明け前に帰ると言われ、ゼンにシーツでぐるぐる巻きにされて抱きかかえられて帰ったのだが。
 遠ざかる建物を見て、まわりの風景を見て、シウは驚いた。あれは、ただの診療所ではなかった。
 首都中心部に位置する中央医療研究所。シルクスタ内の医学の粋が集まる、医療の最先端だ。その名の通り、診療所というよりは、研究所。
 ゼンは馴染みの診療所だと、さらりと言っていたが、普通はどんなに金を積んでも、診てもらえるところではない。
 死人をも生き返らせる凄腕医師がいるという噂だが、彼らは金でも情でも動かないともっぱらの評判だ。そんなところが常連とは、よっぽど地位が高いか、彼らが興味をそそる特別なスキルがあるか。
 とにかく、ゼンには何かあるのだ。

 まあ、それは今はいい。
 今は、横に置いとくとして。
 
 そんなところに。
 あんな理由で。
 担ぎこまれたなんて。
 
「くっ……」

 恥ずかしさのあまり、シウは顔を覆って呻いた。
 診察時に、意識がなくて本当に良かったと心から思う。
 
 他にも犠牲はあった。

 横で寝息を立てている、小山みたいな背中に目をやり、ひとつため息をつく。
 
 窓の外は鳥がチュンチュンでまぶしい。朝というより、昼に近い。昨夜は、帰宅途中のゼンの腕の中で寝てしまって、気づいたらゼンの家だった。ゼンは風呂に入って着替えてから寝たようで、昨日と服が違う。

「ゼンさん、朝ですよー」

 小山にのしかかって、ごろりと仰向けにする。むにゃむにゃいっている唇や頬に何度もキスを落とす。

「起きないと、もっとしちゃいますよ」

 はしたないと思いつつ、ゼンの下腹をなぞり、股間に手をやる。起き抜けらしく元気になっていることを確認し、すぐに手を引っ込めた。

 そう、一番の犠牲というか大問題は、だいぶシウがゼンの身体に溺れているということだった。
 先日の夜に、無理やり犯されたあれがよくなかった。怖くて痛くて驚いたけれど、信じられないほど良かった。無理やり組み伏せられて、散々身体の奥に注がれたが、そのたびにいいしれぬ快楽に焼かれた。
 あれが忘れられない。できればまた、あんなふうに強引にしてほしい。自分の身体に残る傷跡を見るだけでシウが昂ってしまうのを、きっとゼンはしらないだろう。

”ややマゾ気質あり”

 どこかで見た一言を思い出す。どうやら、シウ自身にも、その気があったらしい。
 一時の協力関係で済ませられるか怪しいくらい、ゼンとの行為はシウにとって魅力的なものだった

 あまりに良すぎて、熱で朦朧としながら思わず告白してしまったぐらいだ。自分の中でずっとおさえこんで、目を逸らしていた恋心。
 それをまざまざと見せつけられたうえに、しっかり振られるとか。
 しかも、そのあとに、あんな素敵なキスをしてくるとか。
 そのくせ、護衛の報酬はすでに支払い済みって言うとか。

(もう、意味分かんない。したいようにしちゃお)

 身勝手にもそんなことを思いつつキスしていると、眠そうにゼンが目を開く。

「おはようございます!」
「シウ、おはよ」

 ゼンの声が聞けて、シウは嬉しくなってゼンの上にダイブして抱きつく。眠そうな顔をのぞきこんだ。

「ゼンさんは、朝から素敵な声ですね。その低めの声、大好きです」

 えっ、みたいな顔して、ゼンが赤くなった。
 そういえば、風呂場で告白した時もこんな顔をしていたなと、シウは思い出した。

(いつも無口で近寄りがたい雰囲気なのに、褒められて赤くなるとか、なにそれ、かわいい)
 
 シウはもっと褒めることにした。ゼン自身に好意を伝えても受け取ってもらえないが、パーツを褒めるのはただのシウの嗜好なので問題ないはずだ。

「ゼンさん、今日も瞳の色が素敵ですね。天花蜜みたいな色で、きらきらしていてとっても綺麗。大好きです」

 さらに、えっ、みたいな顔してゼンの赤さが増す。その前髪をかきあげて、瞳を上から覗き込む。

「もっとみせてください。うっとりしちゃう、ずっと見ていたいくらい。私の前では、前髪をあげててくださいね」

 ええーみたいな顔をして、ゼンが耳まで赤くなる。

(何この生き物、ほんとかわいい)

 赤く熱を持つ耳にもキスをする。耳たぶを舐めて何度も口づけると、ゼンがくすぐったそうに小さく声を漏らす。

「今の声もすっごく素敵ですね。もっと聞かせてください」

 さらに耳たぶを舐めていると、もうだめというようにゼンが身をよじって耳を隠した。
 シウは標的を変えることにした。

「やっぱり、唇がいいですか? ゼンさんの唇、柔らかくって気持ちいいです。この唇、大好きです。ずっとキスしてたいです」
「ん……シウ、なんで……?」

 シウはゼンの問いには答えない。一度玉砕した告白を、またする気にはなれなかった。
 
 かわりに唇を重ねながら、落ち着かなげにシーツの上をさまよっているゼンの手をとり、シウの胸にあてる。とりあえず、おっぱい揉ませとけばゼンはおとなしくなるということに、シウは気づいていた。

「ゼンさんの手も、好きです。大きくってあったかくて気持ちいい」

 応えるようにそっと揉まれて、シウの口からため息が漏れる。下からすくいあげ、尖端をやわやわとつまむ感触に、身体の力が抜けそうになった。

「ん……触り方、気持ちいい。大好き」

 与えられる刺激に陶然としながら、シウはゼンの服をまさぐる。ひっぱって、まくりあげて、びっしりと傷がついた厚い胸板をむきだしにする。
 さわさわとそこに指を這わせれば、ゼンが小さく震えた。

「気持ちよくしてくれたお礼に、いっぱい触りますね」

 胸板にキスして、少し色づく乳首に舌を這わせる。ビクビク震えるゼンの身体をおさえて、さらに口でつつみこむようにして舐めた。

「ゼンさんは、結構感じやすいですよね。敏感なところも、大好きです。確か男性は他にも感じるところがあるんですよね。このへんとか」
 
 脇とか腰とか、指や唇で刺激する。一通り習った机上の知識を思い出しながら触ってみると、やはり気持ちよさそうに震えるポイントが何ヶ所かあった。
 ちらっと見てみると、なんでそんなこと知ってるんだろうみたいな目で、真っ赤な顔のゼンがみてくる。
 シウはちょっと得意げな気持ちになった。

「これでも花嫁修業として、夜のあれこれに関する教育を受けてるんですよ。男性の触り方とか、一通りたしなんでるんです」

 またちらっとゼンを見ると、興味津々で話を聞いている。ゼンからしたら、全く知らない世界の話なのだろう。さらにシウは得意げな気持ちになった。

「ちなみに、男の人を本当に触るのはゼンさんがはじめて。なんだか、座学でやったことをゼンさんで実践練習してるみたいですね」

 なんだかおかしくなって、くすくす笑っていると、いきなり腕を掴まれた。そのまま引き倒されて、仰向けに押し倒される。

 すぐ間近に、やや不機嫌そうなゼンの顔があった。

「ゼンさん……?」

 何か気に触ったのだろうか。シウにしたら他愛ない雑談だったのだが。

「なにか嫌でしたか?」
「……嫌だった。もう触らなくていい」

 思いっきり拒否されて、シウはショックで固まった。
 確かに調子にのっていた気がする。女性から触るなんてはしたなくて、嫌だったのかもしれない。ゼンはなんだかんだで優しいし、キスしてくれたし、おっぱい揉ませとけば性的なことは大抵受け入れてくれる気がしていた。しかし、やりすぎてしまったようだ。
 ぽろりとシウの目尻から涙がこぼれる。慌ててそれをぬぐって目を閉じた。

「すみません、もう触らないようにします」
「シウが、嫌だったわけじゃない」

 じゃあ、何が嫌だったのか。
 思い返しても、シウには思いあたりがなかった。
 しょんぼりしながら、何が悪かったかと反省しているシウに、ゼンが唇を重ねてくる。それはすぐに深く、噛みつくような激しいキスにかわる。自分からするより、よっぽど刺激の強いそれに、シウからも腕をまわして、応える。
 耳に首筋に、何度も口づけされながら、もどかしげに服を脱がされた。やわやわと直接ふくらみを揉まれる刺激が気持ち良い。痣や傷を気にしているのだろう、ひどく優しい触れ方だった。
 鎖骨から胸の合間へと舌が這う。ふくらみを食む唇の柔らかさが心地よい。

(そういえば、こういうの、はじめてかも)

 初回はわけのわからない駆け引きめいたものがあったし、それ以降は愛撫もなくいきなり挿れられた。まともな前戯を、ゼンにしてもらうのが初めてだとシウは気づく。

(すごい、恋人同士っぽい)

 さきほどまで、ショックでへこんでいたのが見事に吹き飛ぶ。

「ゼンさん、気持ちいいです。嬉しい」

 もどかしげに黒髪を撫でながら、首を伸ばしてゼンの頭に口づける。ゼンはひとしきり胸に触れると、臍から下腹へ、舌でなぞっていく。たまに、唇で刺激されるたびに、シウの身体は快楽で震えるのだった。

 ゼンに促されて、シウはおとなしく両足を左右に大きく開く。最初に教えられたように、自分で襞を左右に開いた。
 肉芽を舐められただけで、背筋がのけぞる。

「んっ……ああっ……これ、だめ」

 執拗に敏感な部分を舐められ、吸われて、無意識に腰が動く。腰を押えて固定されて、音がするほど激しく吸われた。

「ふっ……やっ、奥、熱くなって、だめ」

 太い指を秘所に挿れられて、感じるポイントをトントン押される。敏感な場所を同時に責められて、たまらず腰が浮く。頭の奥が白くなり、一瞬変な浮遊感に包まれる。

「はっ、あぁ、なんか、すごい、ゼンさん、すごい」

 語彙力が完全にどこかにいったまま、褒め称えるシウに、ゼンがのしかかる。いつの間にか服をすべて脱いでおり、ぐったりとしたシウを真正面から抱きしめた。温かな体温にシウは緩慢に腕を伸ばす。ピッタリと身体を隙間なくくっつけて、お互いの呼吸を感じる。ゼンの傷跡のざらつきすらシウの肌は敏感に反応して、つい震えてしまう。

「ゼンさんの肌、気持ちいいです。触ってるだけでふわふわしちゃう」

 背中や肩の傷跡すら愛おしくて、指でなぞる。何度もなぞっていると、ゼンの背中がビクビク震えてなんだか心配になった。

「痛いですか?」

 ふるふると首を横に振るゼンの耳は、また真っ赤になっていた。思わず両手を首の後ろにまわして、その耳に口づける。

「ゼンさんが、欲しいです。前みたいに、激しくしてください」

 誘うように足を開いて腰の位置をずらす。ゼンはしばらく迷っていたようだったが、何度かシウがねだって耳や頬にキスをすると、すでに十分大きくなったものを、ゆっくりと挿れてくれた。

 根元までいれられただけで、シウはおかしくなりそうだった。奥の奥まで乱暴にほぐされたところを、また抉られて、喋る余裕もない。揺さぶられるたびに嬌声をあげる。いつの間にか頬は熱く濡れていた。
 ゼンはシウがねだったとおり、かなり激しくしてくれた。傷や痣こそつけないが、体重をかけて、シウの身体を執拗に求めてくれた。うなじこそかまれなかったが、耳を甘く噛まれながら激しく後ろから突かれて、シウは何度達したかわからなかった。耳元の荒い息遣いと、時折小さく聞こえるゼンのうめき声に、ひたすらに昂ぶった。
 さらにゼンは、シウの望むまま、なかで何度も射精してくれすらした。
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