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1. 一日目夜 ➀※

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 腕の中でふるえる少女のおっぱいを生で揉みながら、ゼンはちょっと困っていた。

 このおっぱいは良い。悪くない。張りがあり、揉みごこちもよく、ゼンの大きな手にもほどよい大きさだ。揉みあげるたびに、可愛い吐息が漏れたりするのも良い。ずっと揉んどきたいくらいだ。
 
 問題は、この相手である。ゼンの膝の中にすっぽり入り、背を向けて身体をゼンにあずけて、おっぱい揉まれまくっている少女。商売女ならともかく、そうじゃない。
 
 しゃべるのは苦手なゼンだが、さすがにずっとだまっているわけにはいかず、気力をふるいたたせて声をかける。
 
「シウ、こういう経験は?」

 耳元でささやくと、少女⸺シウが、ふるふると首を振った。
 まあそうだよな、と思いつつ、身をかがめて耳たぶにキスして、乳首を指で挟んでかるくしごく。

「ぁ…………ふ……」

 小柄な少女は綺麗にゼンの膝の中におさまり、小さく身体を震わせている。ゼンは、やや窮屈にちぢこまりながら少女の耳に、頬に、唇でふれた。

「んっ……っ……」
「今、何歳?」
「じゅ、十六です」

 ゼンより五歳以上も年下である。
 なるほど、それでこの弾力か。
 納得しながら乳首を押し込むようにぐりぐりと揉む。弾む感触が手に気持ち良い。

「あっ、はぁ……やぁっ」

 肩越しに見上げてくる琥珀色の瞳は、ちょっとうるんで泣きそうだ。眉もへにょっとしたハの字になっている。
 
 ゼンの知るかぎり、彼女⸺シウは街の小さな菓子店で働いているごく普通の女の子で、ゼンはその店の常連客だ。
 ところどころ金の混じる栗色の髪に、色白だが健康的な肌。ゼンは顔の美醜についてはうといが、それでもシウが整っている部類だということはわかる。
 つまり、本来ならゼンみたいな生業なりわいの男が、おっぱい揉める子ではない。
 
「タジルに、どこまで触られた?」
「ん、服の、うえから、胸を」

 タジルは服越しなのに、ゼンは生で揉んでしまっている。しまったなと思いながらも、おっぱいを寄せて軽く持ち上げた。

 すぐに汚く笑うハゲ親父タジルが、たわわなふくらみを揉んでいるところをつい想像してしまう。タジルはいわゆる奴隷商だ。ちょっとした出来心から、奴隷女を物色してみようと思いたち、タジルの店をのぞきにいったのが、今日の昼過ぎのこと。
 店の中に入ったとたん、服を乱したシウが勢いよくゼンにぶつかったのが、今思えば発端である。タジルによれば、シウは大事な商品ということだった。ゼンはすぐにその場をおさめ、タジルの言い値でシウを買い取った。

「他には、唇も触られて……んっ」

 あのハゲ親父は、キスもしてやがったらしい。思わず、おっぱいを揉む手に力が入る。

 なんの説得力もないが、ゼンはシウを買い取ったからといって、彼女の身体をどうこうしようというつもりはなかった。おっぱい揉むつもりもなかった。今は乳首とんとんしているが。

「唇、どんな風に?」

 ゼンの踏みこんだ質問に、シウがひるむのがわかった。さすがに自分から、どんな風にタジルに唇を奪われたのか説明するのは恥ずかしいのだろう。
 
 ゼンの目論見どおりである。

「無理なら、ここでやめておけ」

 むしろ、やめるって言ってほしい。ゼンはおっぱい揉みながら、そう思った。

 タジルからシウを買い取ったあと、ゼンはシウに言ったのだ。
 どこへでもいけ、と。
 もう自由だ、と。

 ところが、行くところがないから置いてくれとしがみつかれた。「夜の相手もできない子供に用はない」とがんばって突き放したら「子供じゃないです」と真っ赤な顔で言いかえしてくる。

 結局、シウはゼンの服のはしっこをつかんで、家まで着いてきた。ずっと泣きそうなシウに「俺は外で寝るから」と布団をぽんぽんしてやったら「ちゃんとできます」とおっぱいをゼンの手に押しつけてきて今である。

 基本的に口下手なゼンは、どうしたものかと悩みながらもおっぱいの魅力にあらがえず、とりあえず揉んでいるのだった。
 
 だからできれば、シウからやめたいと言ってほしかった。ゼンが断る理由はあまりないが、シウが断る理由はたくさんあるはずだ。
 変に覚悟を決めずに、わがままに身勝手に拒絶してほしい。ゼンが、ちょっとどうかと思うくらいの大金をタジルに支払ったことなど、気にしないでほしい。
 
 そう思いながら、おっぱいを揉む。
 シウの働く菓子屋に行くたびに、エプロン越しに揺れるこのふくらみに興味がなかったといえば嘘になる。ひとり寝の夜に、シウで妄想したことも、一度や二度はある。いや、もう少し回数は多かったか。ほぼ毎日だったかもしれない。
 
 でも、あの可憐な笑顔を、本当に汚したいとは思っていなかった。ただ、彼女自身は平和に幸せに、いつも笑顔であれば良いと思っていた。
 
 唇に、遠慮がちに触れる指の感触。ふるえる吐息は、すぐ近くにあった。さきほどゼンがたずねた、どんな風にキスをしたか、の回答らしい。
 間近で目が合う。真っ赤な顔したシウが、さっと目をつぶりそのまま唇を重ねてくる。

 まさかの、言葉ではなく実演での説明。

 ”恥ずかしいことを言わせて嫌がられる作戦”はあえなく失敗した。

 そんな真面目にしなくていいのに。
 無理ですっていって、逃げてくれていいのに。
 そう思いながら、シウの唇を受け入れる。唇が触れる瞬間、ゼンは無意識に拳を握りしめた。
 
 おずおずと触れるだけのキスは次第に深さを増し、思わずゼンは息をひそめる。少し顔をかたむけながら、腰と肩に手をまわして抱きしめる。散々揉みまくったおっぱいが、今度は硬い胸筋のうえでつぶれた。
  ぎこちないキスだった。ほとんど、キスなんてしたことないのだろう。

(なんとか、キスくらいでやめておかないと)

 少しずつ深さを増すキスに内心焦りながら、ゼンは思考をめぐらす。
 もっと嫌がられるように仕向けて、シウから拒絶させるのだ。不本意だが、ちょっと泣かせてしまうくらいは覚悟して。

「ん!? ……んむっ!」
 
 顎をつかみ、荒々しく唇に噛みつくように吸いたてる。驚いたシウの隙をつき、口の中に無理やり舌を押し入れ、彼女のそれに絡ませる。激しく角度を変えながら、わざと音をたてた。

「んむっ、……むむっ!」

 息苦しいのか、シウがいやいやするように首を振り、逃れようと身をよじる。

(嫌がられる方向性としては間違っていないな)
 
 確信を得たゼンは、シウを押し倒し、さらに激しく彼女の唇をむさぼる。といっても、ゼンの重みで苦しくないよう気をつけることは忘れない。
 
 簡素なマットレスにシーツと薄い毛布を敷いただけのゼンの寝床。きっといつもふわふわのベッドで寝ていたシウからすれば、床と変わらないだろう。

 息継ぎをするように一度唇を離す。二人の間をつなぐ光る糸に、ゼンは動揺のあまりもう一度唇を重ねた。さきほど一瞬見てしまった色づく唇や、うるんだ琥珀色の瞳が、どうにも頭から離れない。

「ん……く……」

 小さくシウの喉が動く。涙目で何を飲み込んでいるのか。あえて深く考えず、ゼンは柔らかな唇を堪能する。
 シウの唇からこぼれる透明な筋を指でぬぐい、キスしながらおっぱいをまさぐる。あおむけに押し倒していても、その存在感は変わらない。吸いつく感触に指を沈めながら、シウの唇をぺろりと舐めた。
 
「美味いか?」
「は、はい……美味しい、です」

 顔を真っ赤にし、目をうるませてシウがつぶやく。
 少し遠くを見ているようなぼんやりとした琥珀色の瞳でみつめられて、ゼンはくらっとした。
 予想していた反応と違う。
 もうやめてくださいとか、嫌ですとか、あるんじゃないのか。
 
 つまり、”ちょっと気持ち悪いキス作戦”も失敗した。
 
 困りつつ、シウのおっぱいを揉む。上から押さえつけるようにぎゅむぎゅむとわし掴んで指を沈める。仰向けになるとまた感じ方が違うのか、シウが静かに熱い吐息を漏らしている。釣られてゼンの胸の奥の熱がゆらりとうごめいた気がして、思わず顔をそむけた。
 窓の外はすでに暗い。ランプの灯りが、ざらついて白く濁る玻璃窓に規則的に反射している。

 ゼンがあれこれするより、シウに無理やり何かさせたほうがいいのかもしれない。
 新たな作戦でいくことにした。

 シウの前で、上着を脱ぎ上半身を晒す。鍛え上げられた筋肉はランプの灯りを照りかえし、隙間ないほどに刻まれた古傷が濃い陰影を彩る。切り傷、猛獣の爪痕、尖ったもので穿たれた傷、焼けただれた痕。
 
 腹にも背中にもびっしりとついた傷跡を見て、シウが小さく息を飲む。ゼンの身体は、女性からみて気持ちが良いものではないはずだ。今日ばかりは自分の古傷に感謝した。これなら、シウも嫌がるだろう。

 華奢な腕を掴んで乱暴に引き起こし、自身の胸元にシウの顔を押し当てる。
 
「俺を喜ばせてみろ」

 てっきり、できませんって言われると思ったのに。
 すぐに古傷に口づけられて、ぴくりとゼンの身体がふるえた。経験が無いわりに、意外とうまい。ぎこちないながら、ゼンの身体に舌を這わせ、愛撫めいたものをしてくる。あっという間に、ゼンの方が音をあげかけた。
 あんまり攻められ慣れてなかったな、と、ゼンは今ごろ気づいたがもう遅い。
 
 こうして、”無理やり舐めさせて嫌がられる作戦”もあっさり失敗におわった。
 
 主導権を握らせたらダメ、ということかもしれない。
 ゼンは、危機感を演出してみることにした。
 
 紅い舌で丹念にゼンの乳首を舐めているシウの腰を掴み、服越しに彼女の股間に自身のモノを押しあてる。今までの刺激で十分すぎるほど、ゼンの身体は反応していた。男性経験が少ないならば、これを押しつければ怖がるだろう。

「あ……やっ……」

 小さく怯える声にかまわず、腰を押しつけて何度も下から突きあげるようにこする。身体をかがめて、豊かなおっぱいに唇を押しあてた。膨らみを唇でこねながら乳首をめば、小さくシウの身体がふるえる。
 
 手で触るのもいいが、舐めるのもいい。ずっと反応がよくて、それがまたゼンをたかぶらせた。
 身体を引いて逃げようとするシウのふくらみを追って、さらに深く唇を埋め込む。彼女が反応するたびに揺れるので、そのたびに執拗に咥えなおす。
 
「やぁっ……待って、待ってください」

 シウの懇願の声に、ゼンは安堵のため息をつく。やっと拒絶してくれた、と。
 
 ほっとして身体を離すゼンの耳に、衣擦れの音が響く。今までシウの下半身を包んでいた服が床に落ちる。
 そっと身体を預けてきたシウは、一糸まとわぬ姿だった。見下ろせば、小さく震えるシウの滑らかな背中から続く腰のラインがよく見える。
 
 とりあえず、尻を揉んだ。おっぱいもよかったが、尻もやわらかくて揉み心地が良い。おっぱいほど柔らかくないが、指をはね返す弾力が心地よい。わざと割れ目をひらくように何度も揉みこむ。割れ目の奥で確かにささやかな水音がした。

「んっ……んんっ……」

 シウのくぐもった甘い声に誘われて、彼女の頬に、耳に執拗に口づける。
 
 今までで一番だめな作戦が、失敗に終わった瞬間だった。完全に逆効果だった。なぜなら、ゼンがその気になってしまったから。

  最初におっぱい押しつけられたときから、ゼンはずっと我慢していた。ここまでしても逃げたり拒絶したりしないのなら、最後までしてしまおうか。乱暴に抱けば、嫌になって出ていくかもしれない。
 妥協につぐ妥協のすえ、ゼンの思考は肉欲に完全に流され、ささやかに残る理性はみる影もなかった。

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