【絶対攻略不可？】～隣の席のクール系美少女を好きになったらなぜか『魔王』を倒すことになった件。でも本当に攻略するのは君の方だったようです。～

89. 理解者マリリン

　89.　理解者マリリン



　オレと咲夜さんと共に来週の夏祭りに着ていく浴衣を買うためにショッピングモールにいく。電車に揺られながらオレは咲夜さんの隣に座って窓の外を見ていた。

「……」

　電車が揺れるたびに、隣にいる咲夜さんの肩が触れ合う。その度に緊張で心臓の鼓動が早くなるのを感じた。

「ふふっ……」

　咲夜さんはそんなオレを見て微笑んでいる。きっと今、自分の顔は真っ赤になっていることだろう。

「……なんだ？」

「いや、颯太君は可愛いなと思ってね」

　そう言って咲夜さんはまた笑った。この人はどうしてこうも恥ずかしいことを平然と言えるのか……。

「……からかってる？」

「さぁ？どうかしらねぇ～」

　絶対そうだ。だって口元が笑ってるし。まあでも悪い気はしないけど……しばらくすると電車は目的の駅に到着した。改札を出て駅の出口へと向かう。外には日差しが強く照りつけていた。

「あっつ……」

　思わず声が出てしまう。もう夏だもんなぁ……。そりゃ暑いわ。咲夜さんは涼しい顔をして歩いている。

「大丈夫颯太君？」

「なんとか……」

　心配そうな表情を浮かべてこちらを見つめてくる咲夜さん。こんなときまでオレのことを気にしてくれるなんて本当に優しい人だと思う。

　それから数分後、ショッピングモールへと到着した。中に入って涼みながら歩く。そして一軒の洋服屋さんにたどり着く。


「ここは一応私のお気に入りの防具屋さんなの。店主のマリリンのアドバイスもあってここで買い物するようになってからは結構いいものに出会えるようになったのよ」

　へぇ～。……マリリン？外人かな？いや咲夜さんが英語しゃべれるわけない。でも確かにおしゃれなお店だな。店内に入ると冷房がよく効いてとても気持ちよかった。ん？でもオレも一緒だけど大丈夫かな……。

「あら、咲夜ちゃん！？久しぶり！」

「こんにちは真凛さん」

　奥の方から出てきた女性は見た目20代前半くらいだろうか、セミロングの黒髪の女性だった。服装は黒いTシャツにジーンズというラフな格好をしている。この人がマリリンか。いや咲夜さん真凛さんと言っているし。

「今日はどうしたの？あれ？彼氏連れてきたとか？」

　真凛さんがニヤリと笑いながら咲夜さんに聞く。咲夜さんは顔を赤くしながら首を縦にふる。

「そっかそっか！ついに咲夜ちゃんの『魔王』を倒す仲間……いや理解者が現れたか！お姉さん嬉しいよ！」

「大袈裟ですよ真凛さん。あと……痛い。」

　真凛さんは喜びながら咲夜さんの背中を叩く。なんともパワフルな女性である。それを見て少し羨ましく思った。

「じゃあとりあえず採寸するからこっちきてー。咲夜ちゃん少しくらい胸とか成長したかな？」

「ちょっと真凛さん！もう。颯太君、行ってくるわね」

「ああ。」

　そう言うと咲夜さんは店員さんに連れられて奥の部屋へと消えていった。一人になったオレは暇だったので適当に服を見たりしていることにした。

　さっきの真凛さんは咲夜さんの言動とか理解しているみたいだったな。オレ以外にも……。

　オレは少しさみしい気持ちにもなったが、咲夜さんにも理解者がいた。それを知って自分のことのように嬉しくなるのだった。