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48. 何事もフッ軽
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48. 何事もフッ軽
そして翌日私たちはエドガー隊長の騎士団と共に、ロデンブルグの北にある魔物の巣に向かっている。
「あの。エドガー隊長?騎士団はロイさんだけですか?」
「ああ。人数が多いと困るだろ?」
「何が困るんですか?人数が多いほうが討伐が楽だと思うんですけど……?」
「ったく。これだから若いのは何もわかってねぇ!お前それでも冒険者か?」
エドガー隊長が大声で怒鳴りつける。私はビクッとして体を縮こませた。そんな私を庇うように、ゲイルさんが割って入ってくれる。
「うるせぇ。何もエステルに当たらなくてもいいだろ。どうせアリシアにいい格好したいだけだろ?」
「ゲイル。お前、それの何が悪いんだよ?お前らを助けながら魔物の巣を潰す……こりゃ結婚確定だな!」
草。そんなことの為に私は怒られたのか。納得いかない。何が結婚だ!馬鹿らしい。アリシアさんがこんな奴と結婚なんてするわけないじゃん。というか仮に私の事が好きだったとしても、この男は絶対にお断りだ。
私がムッとしていると、隣でロイさんが小さな声で言う。
「すいませんねエステルさん。エドガー隊長はああ言ってますけど、本当は隊員が危険だから街の防衛に残してるんですよ。なんだかんだあの人は多くの命を預かってますからね、許してやってください」
「ロイさん……」
確かにそうかも。街にはたくさんの人が居る。それを守るのも騎士団の仕事。そしてその騎士を守るのも隊長の仕事だもんね。
「待ってろよアリシア!オレが魔物の巣を潰すぜ!そうしたらもう怖いものなしだ!そしたらオレたちは夫婦だ!」
あーダメだこいつ。完全に妄想の世界に行ってやがるわ。……ロイさんの言うことはたぶん違うな。もう構うのやめよなんか疲れてきたし。
私たちはそれから二時間ほど歩いたところで魔物の巣に到着した。その場所は山の中腹にある森に囲まれた洞窟のような場所だった。入口は狭く見えるものの、中はかなり広いらしい。
「よし。ここからはオレが指揮する。全員油断せずについて来い。行くぞ!」
「待てエドガー。指揮はエステルに任せる。」
「ああ?なんでだよ?」
「お前じゃ不安すぎるからだ。それにエステルのジョブは『スカウト』。索敵の能力も高いし、状況判断能力もある。何よりそれがアリシアの望むことだからな」
「アリシアの?わかった。エステルお前の指揮に従おう。遠慮なくオレとロイを使え」
なんかめちゃくちゃプレッシャーなんだけどさ!まあいいか。とりあえず今は目の前のことを片付けよう。私は深呼吸をして気持ちを整えてからみんなに声をかける。
「ではこれより作戦を開始します。まずは私が先頭に立って索敵をします。敵を見つけた場合はキルマリア、リーゼそしてエドガーさんに戦闘をお願いします。ロイさんは前衛の援護。ゲイルさんはレミーナさんの護衛をお願いします。」
私がそう言うと全員が返事をし隊列を組む。それを確認してからゆっくりと歩き始めることにする。
しばらく歩くと前方にゴブリンを発見した。数は5体。おそらく巣の中の見張りだろう。
私は小声で指示を出す。
「私が合図をしたと同時に攻撃を開始してください。キルマリアが先陣を切ります。リーゼとエドガー隊長、ロイさんは続いてください。」
私がそういうと皆がコクリとうなずく中、あのおしゃべりアサシンは大きな声で言った。
「やっぱりこの最強美少女アサシンのあたしが先陣とはエステル姉さんわかってる!それな!」
「ちょっとうるさいわよ!キルマリア!気づかれるでしょ!?」
「バカかお前ら!来るぞ!」
ゲイルさんの注意通り、私たちの存在に気づいたゴブリンたちが一斉にこちらに向かってくる。しかしキルマリアは全く動じることなく短剣を構えると、そのまま突っ込んでいった。
「ふっ!雑魚どもが!この最強美少女アサシンのキルマリアちゃんが蹴散らしてくれる!くらえ!必殺!連続切りぃ!!」
ドシュ!バキ!ズシャ!と音を立てながら、一瞬のうちに3体のゴブリンの首が飛ぶ。速いけどうるさいんだよな本当に……あれさえなければ優秀なんだけど……
「ギャァア!グゲェ!」
「ふん!次はお前らだぁ!くらえ!死ね!くたばれ!死んで詫びろぉ!この最強美少女アサシ……」
「ダメ!キルマリアちゃんばかりズルい!」
そう言ってリーゼはキルマリアをどかして2体のゴブリンの首を掴み力を込めていく。すると首はボキッと折れ、残りの1体は苦し紛れに剣を振り回す。
「無駄だよ。バイバイ」
そして最後の一体の首を折り仕留めると、リーゼは嬉しそうな顔をしながら私の元に戻ってくる。
「見てみてエステルちゃん!ゴブリン倒した!」
「お疲れリーゼ。というかキルマリア!少しは静かにしなさい!せっかくゴブリンが気づいていなかったんだから、もっと安全に戦えたわよ?」
「えー。そんなコソコソしても同じだって!結局戦うなら早い方がいいじゃん。時は金なり、タイムイズマネー、フッ軽のほうが何事もいいでしょ!」
「あんたはもう少し慎重に戦いなさい!そんなんだからこの前のトロッコのようにケガするんでしょうが!」
「受け身取れなかったのエステル姉さんだけじゃん……」
「おだまり!」
私はキルマリアのお尻を軽く叩く。その時だった。洞窟の中からゾロゾロとゴブリンが出てきた。その数およそ30体以上。どうやら私たちの話し声に気づいて、巣穴から出てきたみたいだ。
「あらら?あたしたち大人気だね?」
「もう!キルマリアのせいだからね!」
こうして私たちは魔物の巣の入り口付近で大量の魔物を相手することになるのだった。
そして翌日私たちはエドガー隊長の騎士団と共に、ロデンブルグの北にある魔物の巣に向かっている。
「あの。エドガー隊長?騎士団はロイさんだけですか?」
「ああ。人数が多いと困るだろ?」
「何が困るんですか?人数が多いほうが討伐が楽だと思うんですけど……?」
「ったく。これだから若いのは何もわかってねぇ!お前それでも冒険者か?」
エドガー隊長が大声で怒鳴りつける。私はビクッとして体を縮こませた。そんな私を庇うように、ゲイルさんが割って入ってくれる。
「うるせぇ。何もエステルに当たらなくてもいいだろ。どうせアリシアにいい格好したいだけだろ?」
「ゲイル。お前、それの何が悪いんだよ?お前らを助けながら魔物の巣を潰す……こりゃ結婚確定だな!」
草。そんなことの為に私は怒られたのか。納得いかない。何が結婚だ!馬鹿らしい。アリシアさんがこんな奴と結婚なんてするわけないじゃん。というか仮に私の事が好きだったとしても、この男は絶対にお断りだ。
私がムッとしていると、隣でロイさんが小さな声で言う。
「すいませんねエステルさん。エドガー隊長はああ言ってますけど、本当は隊員が危険だから街の防衛に残してるんですよ。なんだかんだあの人は多くの命を預かってますからね、許してやってください」
「ロイさん……」
確かにそうかも。街にはたくさんの人が居る。それを守るのも騎士団の仕事。そしてその騎士を守るのも隊長の仕事だもんね。
「待ってろよアリシア!オレが魔物の巣を潰すぜ!そうしたらもう怖いものなしだ!そしたらオレたちは夫婦だ!」
あーダメだこいつ。完全に妄想の世界に行ってやがるわ。……ロイさんの言うことはたぶん違うな。もう構うのやめよなんか疲れてきたし。
私たちはそれから二時間ほど歩いたところで魔物の巣に到着した。その場所は山の中腹にある森に囲まれた洞窟のような場所だった。入口は狭く見えるものの、中はかなり広いらしい。
「よし。ここからはオレが指揮する。全員油断せずについて来い。行くぞ!」
「待てエドガー。指揮はエステルに任せる。」
「ああ?なんでだよ?」
「お前じゃ不安すぎるからだ。それにエステルのジョブは『スカウト』。索敵の能力も高いし、状況判断能力もある。何よりそれがアリシアの望むことだからな」
「アリシアの?わかった。エステルお前の指揮に従おう。遠慮なくオレとロイを使え」
なんかめちゃくちゃプレッシャーなんだけどさ!まあいいか。とりあえず今は目の前のことを片付けよう。私は深呼吸をして気持ちを整えてからみんなに声をかける。
「ではこれより作戦を開始します。まずは私が先頭に立って索敵をします。敵を見つけた場合はキルマリア、リーゼそしてエドガーさんに戦闘をお願いします。ロイさんは前衛の援護。ゲイルさんはレミーナさんの護衛をお願いします。」
私がそう言うと全員が返事をし隊列を組む。それを確認してからゆっくりと歩き始めることにする。
しばらく歩くと前方にゴブリンを発見した。数は5体。おそらく巣の中の見張りだろう。
私は小声で指示を出す。
「私が合図をしたと同時に攻撃を開始してください。キルマリアが先陣を切ります。リーゼとエドガー隊長、ロイさんは続いてください。」
私がそういうと皆がコクリとうなずく中、あのおしゃべりアサシンは大きな声で言った。
「やっぱりこの最強美少女アサシンのあたしが先陣とはエステル姉さんわかってる!それな!」
「ちょっとうるさいわよ!キルマリア!気づかれるでしょ!?」
「バカかお前ら!来るぞ!」
ゲイルさんの注意通り、私たちの存在に気づいたゴブリンたちが一斉にこちらに向かってくる。しかしキルマリアは全く動じることなく短剣を構えると、そのまま突っ込んでいった。
「ふっ!雑魚どもが!この最強美少女アサシンのキルマリアちゃんが蹴散らしてくれる!くらえ!必殺!連続切りぃ!!」
ドシュ!バキ!ズシャ!と音を立てながら、一瞬のうちに3体のゴブリンの首が飛ぶ。速いけどうるさいんだよな本当に……あれさえなければ優秀なんだけど……
「ギャァア!グゲェ!」
「ふん!次はお前らだぁ!くらえ!死ね!くたばれ!死んで詫びろぉ!この最強美少女アサシ……」
「ダメ!キルマリアちゃんばかりズルい!」
そう言ってリーゼはキルマリアをどかして2体のゴブリンの首を掴み力を込めていく。すると首はボキッと折れ、残りの1体は苦し紛れに剣を振り回す。
「無駄だよ。バイバイ」
そして最後の一体の首を折り仕留めると、リーゼは嬉しそうな顔をしながら私の元に戻ってくる。
「見てみてエステルちゃん!ゴブリン倒した!」
「お疲れリーゼ。というかキルマリア!少しは静かにしなさい!せっかくゴブリンが気づいていなかったんだから、もっと安全に戦えたわよ?」
「えー。そんなコソコソしても同じだって!結局戦うなら早い方がいいじゃん。時は金なり、タイムイズマネー、フッ軽のほうが何事もいいでしょ!」
「あんたはもう少し慎重に戦いなさい!そんなんだからこの前のトロッコのようにケガするんでしょうが!」
「受け身取れなかったのエステル姉さんだけじゃん……」
「おだまり!」
私はキルマリアのお尻を軽く叩く。その時だった。洞窟の中からゾロゾロとゴブリンが出てきた。その数およそ30体以上。どうやら私たちの話し声に気づいて、巣穴から出てきたみたいだ。
「あらら?あたしたち大人気だね?」
「もう!キルマリアのせいだからね!」
こうして私たちは魔物の巣の入り口付近で大量の魔物を相手することになるのだった。
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