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46. 聖女フローラ=バーネット
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46. 聖女フローラ=バーネット
私は今はレミーナさんと共にエドガー隊長がいる騎士団の拠点に来ている。そこでロデンブルグの北の山の中に魔物の巣があることを聞き、そこへ行くことを了承した。
ちなみにエドガー隊長はアリシアさんに良いところ見せたいと言う、すごい不埒な理由だが、魔物の巣を潰すことは私たちとも利害は一致しているから気にしないことにする。
今、私とレミーナさん、ロイさんは拠点内にある食堂でお茶を飲みながら休憩している。拠点には他にも騎士たちがいて食事や休憩をしているが、騎士たちに笑顔を振りまく1人の女性がいた。その度に騎士たちは頬を緩ませている。
なんというか、女慣れしてない感じだね。まあこの人たちがモテてたらそれこそ驚くけど。
「あの女性は?」
「ああ、彼女はここの騎士たちの癒しみたいな存在ですね。」
「癒しですか……」
確かに美人だけど、なんか近寄り難い雰囲気があるんだよね。なんていうか気品があって上品さを感じさせるんだけど、どこか冷たさを感じるような……?
「彼女の名前はフローラ=バーネットと言います。女神に神託を受けた聖女様です。」
「聖女!?」
「はい。とてもお優しい方ですよ。我々の勝利を願うために同行してくれているんですよ!」
えー!こんなところで本物の聖女様に会えるとは思わなかったわ!まさかこんなところで会えるとは思っていなかったからちょっと緊張する……。そんなことを考えていると聖女フローラと目が合い、彼女がこちらに向かって歩いてきた。
「冒険者の皆さんこんにちは。私はフローラ=バーネットと言います。気軽にフローラとお呼びください。よろしくお願いします。」
そう言って頭を下げるフローラさんはとても綺麗だった。聖女と言われても納得できるくらいに。しかし近くで見ると本当に美しい女性だ。歳は20代前半と言ったところだろうか。神様は私には与えてくれない美貌をお持ちのようだ。
「初めまして。私はエステルといいます。こっちは仲間のレミーナさんと騎士団のロイさん。一応、王都の依頼で魔物討伐に参加しています」
「そうなんですね。ご武運をお祈りしております。」
「ありがとうございます。フローラさんもお怪我の無いように気をつけて下さいね」
「はい。ではまた後ほど……」
フローラさんは微笑みを浮かべながら戻っていった。その後ろ姿に見惚れる男性陣。うん。気持ちはよく分かるよ。でもあまり見つめすぎないようにしようね。ほら、後ろの方にいる騎士たちから殺気が溢れてるから……。
私たちはフローラさんの後ろ姿を見送りながら、先程までいたテーブルに戻った。するとちょうどいいタイミングでエドガー隊長がやってきた。
「おいロイ。お前こんなところにいたのかよ。そろそろ騎士団の任務の時間だ。」
「あっはい。それではエステルさん、レミーナさん。またあとで」
2人は席を立ち、騎士団の任務へと向かっていった。それにしても、聖女フローラさんってあんな人なのか。なんかイメージしていた聖女像とは違うかも……。でも神に選ばれた人間だからやっぱり清廉潔白な人なんだろうなぁ。
「ねぇレミーナさん。聖女様ってどんな人だと思う?」
「どうとは?見た通りではないでしょうか?聖女様は誰に対してもお優しく接してくれます。ただそれは皆に平等だということです。」
平等。確かにそうだよね。聖女といえば困っている人に手を差し伸べる慈悲深い心を持った人のはず。それが全てじゃないことは分かっているけど、やっぱりみんなが思い描く聖女像はそういうものなんだろう。
「聖女か……わざわざ危険だとわかっているこのロデンブルグに来て、騎士団の士気を上げて、住民の不安を取り除く。立派よね。尊敬するわ。」
「まぁ……それが聖女の仕事ですから。」
聖女の仕事か。聖女として人々の安寧のために戦う。聖女が戦えば人々は安心し、崇め奉る。きっと今までの聖女はそうやって人々を助けてきたんだろう。だからあんなにもいるだけで、心を動かすことができるのだろう。
聖女フローラ=バーネット。あなたは一体何を思って戦い続けるのか。私にはわからないけれど、それでも聖女としての役目を全うしようとしているあなたのことはとても尊敬できると思った。
しかし、この聖女フローラ=バーネットとの出会いが、のちにクラン『妖精の隠れ家』での私の人生に大きな影響を与えるということを今は知る由もなかった……。
私は今はレミーナさんと共にエドガー隊長がいる騎士団の拠点に来ている。そこでロデンブルグの北の山の中に魔物の巣があることを聞き、そこへ行くことを了承した。
ちなみにエドガー隊長はアリシアさんに良いところ見せたいと言う、すごい不埒な理由だが、魔物の巣を潰すことは私たちとも利害は一致しているから気にしないことにする。
今、私とレミーナさん、ロイさんは拠点内にある食堂でお茶を飲みながら休憩している。拠点には他にも騎士たちがいて食事や休憩をしているが、騎士たちに笑顔を振りまく1人の女性がいた。その度に騎士たちは頬を緩ませている。
なんというか、女慣れしてない感じだね。まあこの人たちがモテてたらそれこそ驚くけど。
「あの女性は?」
「ああ、彼女はここの騎士たちの癒しみたいな存在ですね。」
「癒しですか……」
確かに美人だけど、なんか近寄り難い雰囲気があるんだよね。なんていうか気品があって上品さを感じさせるんだけど、どこか冷たさを感じるような……?
「彼女の名前はフローラ=バーネットと言います。女神に神託を受けた聖女様です。」
「聖女!?」
「はい。とてもお優しい方ですよ。我々の勝利を願うために同行してくれているんですよ!」
えー!こんなところで本物の聖女様に会えるとは思わなかったわ!まさかこんなところで会えるとは思っていなかったからちょっと緊張する……。そんなことを考えていると聖女フローラと目が合い、彼女がこちらに向かって歩いてきた。
「冒険者の皆さんこんにちは。私はフローラ=バーネットと言います。気軽にフローラとお呼びください。よろしくお願いします。」
そう言って頭を下げるフローラさんはとても綺麗だった。聖女と言われても納得できるくらいに。しかし近くで見ると本当に美しい女性だ。歳は20代前半と言ったところだろうか。神様は私には与えてくれない美貌をお持ちのようだ。
「初めまして。私はエステルといいます。こっちは仲間のレミーナさんと騎士団のロイさん。一応、王都の依頼で魔物討伐に参加しています」
「そうなんですね。ご武運をお祈りしております。」
「ありがとうございます。フローラさんもお怪我の無いように気をつけて下さいね」
「はい。ではまた後ほど……」
フローラさんは微笑みを浮かべながら戻っていった。その後ろ姿に見惚れる男性陣。うん。気持ちはよく分かるよ。でもあまり見つめすぎないようにしようね。ほら、後ろの方にいる騎士たちから殺気が溢れてるから……。
私たちはフローラさんの後ろ姿を見送りながら、先程までいたテーブルに戻った。するとちょうどいいタイミングでエドガー隊長がやってきた。
「おいロイ。お前こんなところにいたのかよ。そろそろ騎士団の任務の時間だ。」
「あっはい。それではエステルさん、レミーナさん。またあとで」
2人は席を立ち、騎士団の任務へと向かっていった。それにしても、聖女フローラさんってあんな人なのか。なんかイメージしていた聖女像とは違うかも……。でも神に選ばれた人間だからやっぱり清廉潔白な人なんだろうなぁ。
「ねぇレミーナさん。聖女様ってどんな人だと思う?」
「どうとは?見た通りではないでしょうか?聖女様は誰に対してもお優しく接してくれます。ただそれは皆に平等だということです。」
平等。確かにそうだよね。聖女といえば困っている人に手を差し伸べる慈悲深い心を持った人のはず。それが全てじゃないことは分かっているけど、やっぱりみんなが思い描く聖女像はそういうものなんだろう。
「聖女か……わざわざ危険だとわかっているこのロデンブルグに来て、騎士団の士気を上げて、住民の不安を取り除く。立派よね。尊敬するわ。」
「まぁ……それが聖女の仕事ですから。」
聖女の仕事か。聖女として人々の安寧のために戦う。聖女が戦えば人々は安心し、崇め奉る。きっと今までの聖女はそうやって人々を助けてきたんだろう。だからあんなにもいるだけで、心を動かすことができるのだろう。
聖女フローラ=バーネット。あなたは一体何を思って戦い続けるのか。私にはわからないけれど、それでも聖女としての役目を全うしようとしているあなたのことはとても尊敬できると思った。
しかし、この聖女フローラ=バーネットとの出会いが、のちにクラン『妖精の隠れ家』での私の人生に大きな影響を与えるということを今は知る由もなかった……。
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