【王都最強の崖っぷちクラン誕生!?】~戦えないやつはいらん。と追放されたスカウトはスカウトされたので、個性派メンバーを超絶サポートします!~

夕姫

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43. マスターとして

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43. マスターとして



 エステルたちがロデンブルグの魔物討伐の遠征に行った後の『妖精の隠れ家』では、いつものように平和な日常が繰り返されていた。

「はい。マスターお茶どうぞなの!」

「ありがとう。はい、ルシルちゃん」

「なんでボクにお茶が回ってきたんですか?」

「なんでって喉渇いてるでしょ?渇いてるわよね?渇いてるって言わないと……」

「喉渇いてたんですよ!あーマスターは優しいな!」

 泣きそうな顔をしながらロザリーが淹れたお茶を飲むルシル。当然の如く不味い……。だが飲まないと怖いので必死だ。

 そんなやり取りを見ていたミルフィも苦笑いしながら口を開く。

「エステルたち大丈夫かしらね?この華麗なるブレードガンナーの私がいなくて。まぁ私クラスが出るまでもない依頼だと思いますけど」

「そうね。今回はゲイルさんも一緒だし、身の回りのことはレミーナもいるから大丈夫でしょ。」

「そう言えば私はゲイルさんとはあまり絡んだことありませんわ。強い方だと聞いてますが、確か剣聖『ソードマスター』でしたわよね?」

 その言葉を聞いてアリシアは微笑みながら話す。

「私が出会ってきた中で一番強いわよ。それに優しくて良い人だから安心して任せられると思うわ」

「でも腰を痛めてるんですのよね?戦闘は大丈夫なんですの?」

「全盛期の実力はないけど、それでも私と同じパーティー、そして元Sランクの冒険者だから問題ないはずよ」

 アリシアの言葉を聞き、皆納得する。そしてルシルは気になった事をアリシアに尋ねる。

「あのマスター?今回どうして、ボクやミルフィさんの後衛職は依頼からはずしたんですか?」

「私も気になっていましたわ。エステル以外の3人は前衛ですし、私はいいとしてもルシルの回復魔法がないのは少し厳しいのでは?」

 ミルフィの言う通り、今回の依頼は後衛であるミルフィとルシルはほぼパーティーのスキルを考えれば必要であり、特にルシルのような回復役がいないのは不自然だった。するとアリシアは2人の質問に対して答え始める。

「今回はね、エステルちゃんにはねメンバーをうまく使って戦闘をコントロールしてほしいと思っているの。そしてその中でも自分で戦うという事を覚えてほしい。それはゲイルさんには伝えてあるわ」

「えっ!?それ本当ですの!?」

 驚くミルフィを見てアリシアは話を続ける。

「えぇ。エステルちゃんは『スカウト』後方支援やサポートがメインのお仕事よ。でもそれはある程度の魔物討伐依頼では役に立たない。現にエステルちゃんはこう思っていると思うわ。『戦えないのに私は必要なのか』ってね?」

 その言葉を聞いたミルフィとルシルは無言のまま小さくうなずく。確かに今の話を聞く限り、今のエステルにとって戦いの場に出る事は不安要素しかない。しかし……そんな事を考えていたミルフィとルシルだったが、アリシアは笑顔を見せながら続けて話す。

「エステルちゃんには戦闘能力を求めているわけじゃない。自らの意思で戦うことでみんなをサポートするスキルを磨くことが大切なの。それができればきっと、どんな状況でも仲間を助けられる立派なリーダーになれると思うわ」

 アリシアの言葉を聞き、ミルフィとルシルは嬉しさを感じ、お互いの顔を見合わせて笑みを浮かべる。

「流石マスター!エステルの事をよくわかっていますわ!」

「うん。やっぱり凄い。マスター尊敬します!」

 2人に褒められたアリシアは照れ臭そうにしながら笑う。

「そんな大したことじゃないわよ。エステルちゃんを軸にしてるけど、これはあなたたちにとってもいい機会なの。前衛がいない時の戦い方を学べるし、キルマリアちゃんやリーゼちゃんは逆に後衛のいない戦い方を学べる。」

「なるほど……。つまり私たちも成長できるという事ですわね?」

「そう言うこと。もちろんエステルちゃんの成長も期待しているわ」

「マスター……。そこまで考えてくださっていたなんて……。感動しましたわ……」

「ボクもです……。本当にありがとうございます……」

 感極まったミルフィとルシルが涙ぐむ姿を見て、アリシアは苦笑いしながらも2人を落ち着かせる。

「ほら、泣かないの。これから冒険者ギルドに行って依頼を受けに行くんでしょ?」

「そうでしたわね!ほら行きますわよルシル!」

「あっミルフィさん。待ってください」

 そう言って2人は『妖精の隠れ家』を出ていく。

「ねぇマスター?最近すごく楽しそうなの!良かったなの!」

「ええ楽しいわ。やっと私たちのクラン『妖精の隠れ家』が始まるんだから!見てなさい。王都で最強のクランに上り詰めてやるんだから!」

 そう言うアリシアのその表情はとても明るく、そして生き生きとしていたのだった。
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