37 / 51
37. トロッコ爆上がり!
しおりを挟む
37. トロッコ爆上がり!
私たちはロデンブルグに向かうために山越えではなく、使われなくなくなった鉱山の洞窟の廃坑を通るルートを選択した。そして今まさにその洞窟を歩いている最中だ。
「あー暗すぎ問題なんだけど?ルシルがいれば神聖魔法で明るく出来るんだけどなぁ~。あたし暗いの嫌いだし」
あなたはアサシンでしょうが……。私はため息をつくと自分のカバンからランプを取り出した。
「これでよし」
「おお~!さすがエステル姉さん。準備万端だね!」
「ありがと。キルマリア勝手に先に行かないでよ?」
「分かってるよ!それじゃあたしに続け~!」
キルマリアはそう言うと先頭に立って歩き始めた。私もその後に続く。この洞窟はかなり広いらしく、道幅は3メートルはあるだろうか。天井も高い。だから歩く分には問題ないけど、戦闘になったら少し動きにくいかもしれない。しばらく進むと分かれ道に差し掛かった。
「あっ分かれ道だ!どっちだろう?」
「エステル姉さんどうする?」
「うーん……」
さすがに私でも正解の道を当てるスキルなんて持ってない。こういう時は風魔法の魔法職なんかの風の流れを読む「風読み」のスキルがあれば楽なのにと思う。まあないものねだりしてもしょうがないか。ここは勘で行くしかないかな。
「おいエステル。索敵したか?」
「はい。しましたよ。」
「どっちが反応が強い?」
「えっと……右ですね。でも左の方が数が多い気はしますけど……」
「なら左に行くぞ。反応が強いなら強敵の可能性が高いし、縄張りを持っている魔物の可能性もある。」
ゲイルさんは私にそう言った。このおじさんは一応剣聖『ソードマスター』、上位職だもんね。それに熟練の冒険者だし、頼りになるわ。……何もしないけど。
「それじゃ左に行きましょう」
「本当に大丈夫なのゲイルのおじさん?適当に言ってない?」
「お前と一緒にするなキルマリア。オレだって冒険者としての経験を積んでいるんだ。それくらいの判断はできる。」
そして私たちは左側の道を選んで進んだ。すると広い空間に出る。おそらくここは鉱山の採掘場だった場所だろう。大きな岩やトロッコの線路などがそのまま残っている。
「よし。エステルここで少し休むぞ。腰が痛い。座らせろ」
「そうですね。そうしましょうか」
「ねぇエステルちゃん。私あのトロッコ見てきてもいい?」
「ええ。気をつけてよリーゼ」
「なら、最強美少女アサシンのキルマリアちゃんも行こう!リーゼのことは任せなさい!ってことでリーゼ行くぞ!あたしに続けぇ!」
「あっ待ってよキルマリアちゃん!」
自分も見たいだけじゃない。単純でわかりやすいなキルマリアは。私は地面に座り込むと、背中を壁に預けて一息ついた。
「ふぅ……」
「疲れたか?」
「いえ、そんなことはないですよ。ただちょっと気が抜けちゃっただけです。」
「なら良かったな。お前は気を張りすぎだ。緊張してるといざという時に動けなくなる。適度にリラックスしろよ。」
「あっはい」
……何だろう。今日のゲイルさんは優しい。いつもこうだと良いのに……。でもゲイルさんっていつも何してるんだろう。私たちみたいにギルドの依頼を受けているわけでもないし、『妖精の隠れ家』の酒場で仕事をしているわけでもないし。もしかしたらなんか特別な任務みたいなことやってたりして……。
そんなくだらないことを考えていると、キルマリアとリーゼが戻ってくる。そしてリーゼは輝かせた瞳で私に話してくる。
「ねぇねぇ聞いてエステルちゃん!あのトロッコ動きそうだよ!魔力を込めればバビューンッて感じに動きそうなの!私乗りたい!」
「古いトロッコが走るのはエモいじゃん。あたしは賛成だけど、どうかなエステル姉さん?」
「そんな危険なこと出来るわけないでしょ?魔物に襲われる危険性もあるし、それにレールがきちんとした形で残っている保証もない。万が一脱線とかしたら危ないし……」
確かにトロッコが動くならそれを使った方が早く出口に辿り着けるのは確かだ。でもさすがにこの洞窟の中を走らせるのは危険すぎる。だから私は反対したんだけど……。
「おお!いいじゃねぇか、歩くより大分マシだ。トロッコ動かすか」
「私も……トロッコ乗ってみたいです」
なぜかゲイルさんとレミーナさんも賛成した。いきなり私だけアウェイになってしまう。
「ちょっ!なんですか二人とも!私の話を……」
「あのなエステル。そんな起こるか分からないことを言っても仕方ないだろ?」
いや、あんたは歩きたくないだけだろ。
「エステルさん。もう2度とトロッコに乗れる機会がないかもしれません。後悔したくありません。」
レミーナさんまで毒された!?どうしよう……。私は頭を抱える。この人たち全然人の言うこときかないんですけど。
「おいエステル!トロッコを動かすぞ!」
「はい……」
結局押し切られてしまった。私たちはトロッコに乗って移動することにした。
「さあ、出発進行~!」
キルマリアが魔力を込め、先頭でトロッコを動かし始めた。最初はゆっくりだったが徐々にスピードが上がる。
「おー速い速い」
「これ楽しいねキルマリアちゃん!」
「だねだね。テンション爆上がりよ!うりゃあああああ!」
キルマリアはさらに魔力を込め速度を上げる。私は振り落とされないように必死にしがみつくしかなかった。
私たちはロデンブルグに向かうために山越えではなく、使われなくなくなった鉱山の洞窟の廃坑を通るルートを選択した。そして今まさにその洞窟を歩いている最中だ。
「あー暗すぎ問題なんだけど?ルシルがいれば神聖魔法で明るく出来るんだけどなぁ~。あたし暗いの嫌いだし」
あなたはアサシンでしょうが……。私はため息をつくと自分のカバンからランプを取り出した。
「これでよし」
「おお~!さすがエステル姉さん。準備万端だね!」
「ありがと。キルマリア勝手に先に行かないでよ?」
「分かってるよ!それじゃあたしに続け~!」
キルマリアはそう言うと先頭に立って歩き始めた。私もその後に続く。この洞窟はかなり広いらしく、道幅は3メートルはあるだろうか。天井も高い。だから歩く分には問題ないけど、戦闘になったら少し動きにくいかもしれない。しばらく進むと分かれ道に差し掛かった。
「あっ分かれ道だ!どっちだろう?」
「エステル姉さんどうする?」
「うーん……」
さすがに私でも正解の道を当てるスキルなんて持ってない。こういう時は風魔法の魔法職なんかの風の流れを読む「風読み」のスキルがあれば楽なのにと思う。まあないものねだりしてもしょうがないか。ここは勘で行くしかないかな。
「おいエステル。索敵したか?」
「はい。しましたよ。」
「どっちが反応が強い?」
「えっと……右ですね。でも左の方が数が多い気はしますけど……」
「なら左に行くぞ。反応が強いなら強敵の可能性が高いし、縄張りを持っている魔物の可能性もある。」
ゲイルさんは私にそう言った。このおじさんは一応剣聖『ソードマスター』、上位職だもんね。それに熟練の冒険者だし、頼りになるわ。……何もしないけど。
「それじゃ左に行きましょう」
「本当に大丈夫なのゲイルのおじさん?適当に言ってない?」
「お前と一緒にするなキルマリア。オレだって冒険者としての経験を積んでいるんだ。それくらいの判断はできる。」
そして私たちは左側の道を選んで進んだ。すると広い空間に出る。おそらくここは鉱山の採掘場だった場所だろう。大きな岩やトロッコの線路などがそのまま残っている。
「よし。エステルここで少し休むぞ。腰が痛い。座らせろ」
「そうですね。そうしましょうか」
「ねぇエステルちゃん。私あのトロッコ見てきてもいい?」
「ええ。気をつけてよリーゼ」
「なら、最強美少女アサシンのキルマリアちゃんも行こう!リーゼのことは任せなさい!ってことでリーゼ行くぞ!あたしに続けぇ!」
「あっ待ってよキルマリアちゃん!」
自分も見たいだけじゃない。単純でわかりやすいなキルマリアは。私は地面に座り込むと、背中を壁に預けて一息ついた。
「ふぅ……」
「疲れたか?」
「いえ、そんなことはないですよ。ただちょっと気が抜けちゃっただけです。」
「なら良かったな。お前は気を張りすぎだ。緊張してるといざという時に動けなくなる。適度にリラックスしろよ。」
「あっはい」
……何だろう。今日のゲイルさんは優しい。いつもこうだと良いのに……。でもゲイルさんっていつも何してるんだろう。私たちみたいにギルドの依頼を受けているわけでもないし、『妖精の隠れ家』の酒場で仕事をしているわけでもないし。もしかしたらなんか特別な任務みたいなことやってたりして……。
そんなくだらないことを考えていると、キルマリアとリーゼが戻ってくる。そしてリーゼは輝かせた瞳で私に話してくる。
「ねぇねぇ聞いてエステルちゃん!あのトロッコ動きそうだよ!魔力を込めればバビューンッて感じに動きそうなの!私乗りたい!」
「古いトロッコが走るのはエモいじゃん。あたしは賛成だけど、どうかなエステル姉さん?」
「そんな危険なこと出来るわけないでしょ?魔物に襲われる危険性もあるし、それにレールがきちんとした形で残っている保証もない。万が一脱線とかしたら危ないし……」
確かにトロッコが動くならそれを使った方が早く出口に辿り着けるのは確かだ。でもさすがにこの洞窟の中を走らせるのは危険すぎる。だから私は反対したんだけど……。
「おお!いいじゃねぇか、歩くより大分マシだ。トロッコ動かすか」
「私も……トロッコ乗ってみたいです」
なぜかゲイルさんとレミーナさんも賛成した。いきなり私だけアウェイになってしまう。
「ちょっ!なんですか二人とも!私の話を……」
「あのなエステル。そんな起こるか分からないことを言っても仕方ないだろ?」
いや、あんたは歩きたくないだけだろ。
「エステルさん。もう2度とトロッコに乗れる機会がないかもしれません。後悔したくありません。」
レミーナさんまで毒された!?どうしよう……。私は頭を抱える。この人たち全然人の言うこときかないんですけど。
「おいエステル!トロッコを動かすぞ!」
「はい……」
結局押し切られてしまった。私たちはトロッコに乗って移動することにした。
「さあ、出発進行~!」
キルマリアが魔力を込め、先頭でトロッコを動かし始めた。最初はゆっくりだったが徐々にスピードが上がる。
「おー速い速い」
「これ楽しいねキルマリアちゃん!」
「だねだね。テンション爆上がりよ!うりゃあああああ!」
キルマリアはさらに魔力を込め速度を上げる。私は振り落とされないように必死にしがみつくしかなかった。
10
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
天才?秀才?そんなのじゃなくて可愛いって言って!!
如月花恋
ファンタジー
西園寺真由華(さいおんじ まゆか)は生粋のお嬢様だった
たくさんの友人を持ち、とても充実した人生を送っていた
なのに…恨まれ…憎しみを持った人に殺された
そして次に目を覚ますと転生して赤ん坊になっていた
いい子ちゃんなんて嫌いだわ
F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが
聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。
おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。
どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。
それが優しさだと思ったの?
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【短編】追放した仲間が行方不明!?
mimiaizu
ファンタジー
Aランク冒険者パーティー『強欲の翼』。そこで支援術師として仲間たちを支援し続けていたアリクは、リーダーのウーバの悪意で追補された。だが、その追放は間違っていた。これをきっかけとしてウーバと『強欲の翼』は失敗が続き、落ちぶれていくのであった。
※「行方不明」の「追放系」を思いついて投稿しました。短編で終わらせるつもりなのでよろしくお願いします。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異能力と妖と
彩茸
ファンタジー
妖、そして異能力と呼ばれるものが存在する世界。多くの妖は悪事を働き、異能力を持つ一部の人間・・・異能力者は妖を退治する。
そんな異能力者の集う学園に、一人の少年が入学した。少年の名は・・・山霧 静也。
※スマホの方は文字サイズ小の縦書き、PCの方は文字サイズ中の横書きでの閲覧をお勧め致します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる