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33. 寒いのは無理
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33. 寒いのは無理
あれから3日ほどたった今日、私たちは王都から北に50キロ程離れたロデンブルグに向かって馬車を走らせていた。
ロデンブルグは王国の中でも最北に位置する場所であり、年中雪に覆われている地域でもある。そのため魔物や魔獣などが多く生息している。また、その寒さ故に作物が育ちにくいため厳しい環境の中で人々は生活しており、主に狩猟民族がすんでいる土地なのだ。
ちなみに今回の依頼には、私とキルマリア、リーゼ。あとはゲイルさんとレミーナさんも同行してくれることになった。ルシルとミルフィは『妖精の隠れ家』でギルドの依頼をこなすことになった。というか私は魔物討伐じゃ役にたたないんだけどさ……。
で。今、その道中でトラブルに巻き込まれている。なんと馬車を走らせていた馬がいきなり暴れだし、そのまま逃げてしまったのだ。
「ウケるんだけど……どする?」
「さてなぁ……とりあえず馬は諦めるしかねぇだろ。まあ幸い荷物も少ないしよ、最悪歩いてでもどうにかなるだろうぜ?荷物は持たんがな。腰に悪い。」
「ねぇ見て見て!雪だよ!雪だるま作りたいなぁ!」
「……寒い。私には無理。」
私は馬車の中で毛布を頭まで被りガタガタと震えていた。そう、私は昔から極端に寒いのが苦手だ。だから私にはこの寒空の中、外に出てロデンブルグまで行くほどの勇気はないのである。そんなことをしたら死んでしまうわ!すると御者席に座っていたレミーナさんがこちらにやってきた。
「どうしますか皆さん。ここからなら歩けば2日ほどで到着するかと思いますけど……」
この吹雪の中歩き続けるなんて無理。しかもロデンブルグは山に囲まれているし、山越えは必須だし。
「おいエステル。どうすんだ?このままだと凍え死んじまうぞお前。」
「それは、いやああああ!!!」
「うるせぇ!!」
だって寒いもん!!無理!!絶対行きたくない!!歩ける自信がない!っていうかこんな吹雪の中で万が一にも野宿なんてしたくない!死ぬってば!絶対死ぬって!!私は毛布の中から顔を出して必死に訴えかける。しかし皆んな私の気持ちを知ってか知らずか無視して話を進める。
「あの……とりあえず馬車を置いてどこかで休みませんか?歩けば近くの村にはたどり着けるのでは?」
「だな。おいリーゼ。エステルを引きずってこい。ほら行くぞ」
「うん!ほら行こうエステルちゃん!」
「ちょ。歩ける!歩くから引きずらないで~~!」
こうして私たち一行は近くの村を目指して歩き出した。私は半ば無理やり馬車から降ろされ、リーゼに引きずられながら進む。そして少し歩いたところで小さな小屋を見つけ私たちは休憩をとることにした。
「ふぅー。良かった……」
「おめぇなぁ……ったくよぉ……」
「あははっ!エステルちゃんおもしろかったよ!またやってね!」
「勘弁して……」
私は暖炉の前に座り込み、暖を取る。はぁ……ほんと疲れた。それにしても外は本当に寒いな。これはちょっと対策を考えないとヤバいかも……。
「エステルさん。温かいお茶です。どうぞ」
「ありがとうレミーナさん。」
私の言葉にレミーナさんは黙って頷く。彼女は無口だけどとても優しい女性だ。今もこうやって私たちのために暖かい飲み物を用意してくれている。私は彼女の入れてくれた紅茶を飲みながら、これからの事を考える。
「まずは食料の確保が必要ですよね……とりあえず今日はこの小屋で休みましょう!」
「そうだな。じゃあエステルとキルマリアとリーゼで食糧を調達してこい。」
「私は嫌です!寒いの耐えられない!死ぬ!」
「わがまま言うんじゃねぇよ!ガキみてぇなこと言ってねぇでさっさと行ってこい!お前リーダーだろ?オレとレミーナはここで待ってっからよ。」
「うぅ……」
「エステル姉さん……マジで寒いのダメなんだね……」
私は渋々立ち上がり、キルマリアとリーゼ共に食糧調達に向かう。ちなみに私が寒いのが苦手なのは、今まで住んでいた場所が雪が全くと言っていいほど降らなかったからだ。なので寒さに対する耐性がほとんどない。
「む~り~!もう帰りたいぃ!」
「えぇ~まだ歩いて10分くらいだよエステル姉さん?」
「だって寒いんだもん!」
「はぁ……いつもあたしに静かに歩けないのとか言うくせに。エステル姉さんこそ落ち着きなさすぎじゃない?」
「それとこれとは話が別なの!」
「なんでよ!?」
私たちはそんな会話をしながら森の中を進んでゆく。しかし、寒いのが苦手という弱点が露見したせいでキルマリアも若干呆れ気味である。
「ねぇエステル姉さん。なんか変だよ?鳥も虫もほとんどいないみたいだし……」
「言われてみると確かに……何かあったのかしら?」
「ねぇ……あれ何?」
「え?」
私はリーゼが指差す方向を見る。そこには大きな雪玉のようなものが鎮座していた。私は警戒しながらその雪玉に近づいていく。するとその雪玉が動き出し、中から巨大な熊が現れた。
「きゃあああああ!!」
「ちょ、エステル姉さん落ち着いて!」
「……いや無理無理無理!寒いし怖いし!」
「でも見つけたね?えい!」
リーゼはその熊の魔物の首根っこを掴み力を込めていく。すると魔物は苦しそうな声を上げる。そして吹雪の風の音に紛れてゴギンッという音が響く。
「はい!終わりっと!これ、持って帰ろう!」
リーゼは首の折れた魔物を掴み引きずって行く。本当にたくましいわね……。そしてそのまま小屋に戻る。ちなみに血抜きや捌くのはゲイルさんがやってくれた、さすが慣れてるだけあって手際が良い。
「おーい終わったぞ。これでしばらく持つだろ?」
「ありがとうございますゲイルさん。」
「まぁこの程度なら朝飯前だな。なぁエステル。お前もう少し落ち着けよ。本来お前がやるべき索敵や戦闘指示が出来てねぇだろ。少なからずキルマリアとリーゼをお前を信頼してんだからよ?それじゃ困るぞ」
「はい……すみません」
確かにゲイルさんの言う通りではある。少し大袈裟だったかもしれないけど、寒くて仕方なかったのだ。今後は気をつけよう。
あれから3日ほどたった今日、私たちは王都から北に50キロ程離れたロデンブルグに向かって馬車を走らせていた。
ロデンブルグは王国の中でも最北に位置する場所であり、年中雪に覆われている地域でもある。そのため魔物や魔獣などが多く生息している。また、その寒さ故に作物が育ちにくいため厳しい環境の中で人々は生活しており、主に狩猟民族がすんでいる土地なのだ。
ちなみに今回の依頼には、私とキルマリア、リーゼ。あとはゲイルさんとレミーナさんも同行してくれることになった。ルシルとミルフィは『妖精の隠れ家』でギルドの依頼をこなすことになった。というか私は魔物討伐じゃ役にたたないんだけどさ……。
で。今、その道中でトラブルに巻き込まれている。なんと馬車を走らせていた馬がいきなり暴れだし、そのまま逃げてしまったのだ。
「ウケるんだけど……どする?」
「さてなぁ……とりあえず馬は諦めるしかねぇだろ。まあ幸い荷物も少ないしよ、最悪歩いてでもどうにかなるだろうぜ?荷物は持たんがな。腰に悪い。」
「ねぇ見て見て!雪だよ!雪だるま作りたいなぁ!」
「……寒い。私には無理。」
私は馬車の中で毛布を頭まで被りガタガタと震えていた。そう、私は昔から極端に寒いのが苦手だ。だから私にはこの寒空の中、外に出てロデンブルグまで行くほどの勇気はないのである。そんなことをしたら死んでしまうわ!すると御者席に座っていたレミーナさんがこちらにやってきた。
「どうしますか皆さん。ここからなら歩けば2日ほどで到着するかと思いますけど……」
この吹雪の中歩き続けるなんて無理。しかもロデンブルグは山に囲まれているし、山越えは必須だし。
「おいエステル。どうすんだ?このままだと凍え死んじまうぞお前。」
「それは、いやああああ!!!」
「うるせぇ!!」
だって寒いもん!!無理!!絶対行きたくない!!歩ける自信がない!っていうかこんな吹雪の中で万が一にも野宿なんてしたくない!死ぬってば!絶対死ぬって!!私は毛布の中から顔を出して必死に訴えかける。しかし皆んな私の気持ちを知ってか知らずか無視して話を進める。
「あの……とりあえず馬車を置いてどこかで休みませんか?歩けば近くの村にはたどり着けるのでは?」
「だな。おいリーゼ。エステルを引きずってこい。ほら行くぞ」
「うん!ほら行こうエステルちゃん!」
「ちょ。歩ける!歩くから引きずらないで~~!」
こうして私たち一行は近くの村を目指して歩き出した。私は半ば無理やり馬車から降ろされ、リーゼに引きずられながら進む。そして少し歩いたところで小さな小屋を見つけ私たちは休憩をとることにした。
「ふぅー。良かった……」
「おめぇなぁ……ったくよぉ……」
「あははっ!エステルちゃんおもしろかったよ!またやってね!」
「勘弁して……」
私は暖炉の前に座り込み、暖を取る。はぁ……ほんと疲れた。それにしても外は本当に寒いな。これはちょっと対策を考えないとヤバいかも……。
「エステルさん。温かいお茶です。どうぞ」
「ありがとうレミーナさん。」
私の言葉にレミーナさんは黙って頷く。彼女は無口だけどとても優しい女性だ。今もこうやって私たちのために暖かい飲み物を用意してくれている。私は彼女の入れてくれた紅茶を飲みながら、これからの事を考える。
「まずは食料の確保が必要ですよね……とりあえず今日はこの小屋で休みましょう!」
「そうだな。じゃあエステルとキルマリアとリーゼで食糧を調達してこい。」
「私は嫌です!寒いの耐えられない!死ぬ!」
「わがまま言うんじゃねぇよ!ガキみてぇなこと言ってねぇでさっさと行ってこい!お前リーダーだろ?オレとレミーナはここで待ってっからよ。」
「うぅ……」
「エステル姉さん……マジで寒いのダメなんだね……」
私は渋々立ち上がり、キルマリアとリーゼ共に食糧調達に向かう。ちなみに私が寒いのが苦手なのは、今まで住んでいた場所が雪が全くと言っていいほど降らなかったからだ。なので寒さに対する耐性がほとんどない。
「む~り~!もう帰りたいぃ!」
「えぇ~まだ歩いて10分くらいだよエステル姉さん?」
「だって寒いんだもん!」
「はぁ……いつもあたしに静かに歩けないのとか言うくせに。エステル姉さんこそ落ち着きなさすぎじゃない?」
「それとこれとは話が別なの!」
「なんでよ!?」
私たちはそんな会話をしながら森の中を進んでゆく。しかし、寒いのが苦手という弱点が露見したせいでキルマリアも若干呆れ気味である。
「ねぇエステル姉さん。なんか変だよ?鳥も虫もほとんどいないみたいだし……」
「言われてみると確かに……何かあったのかしら?」
「ねぇ……あれ何?」
「え?」
私はリーゼが指差す方向を見る。そこには大きな雪玉のようなものが鎮座していた。私は警戒しながらその雪玉に近づいていく。するとその雪玉が動き出し、中から巨大な熊が現れた。
「きゃあああああ!!」
「ちょ、エステル姉さん落ち着いて!」
「……いや無理無理無理!寒いし怖いし!」
「でも見つけたね?えい!」
リーゼはその熊の魔物の首根っこを掴み力を込めていく。すると魔物は苦しそうな声を上げる。そして吹雪の風の音に紛れてゴギンッという音が響く。
「はい!終わりっと!これ、持って帰ろう!」
リーゼは首の折れた魔物を掴み引きずって行く。本当にたくましいわね……。そしてそのまま小屋に戻る。ちなみに血抜きや捌くのはゲイルさんがやってくれた、さすが慣れてるだけあって手際が良い。
「おーい終わったぞ。これでしばらく持つだろ?」
「ありがとうございますゲイルさん。」
「まぁこの程度なら朝飯前だな。なぁエステル。お前もう少し落ち着けよ。本来お前がやるべき索敵や戦闘指示が出来てねぇだろ。少なからずキルマリアとリーゼをお前を信頼してんだからよ?それじゃ困るぞ」
「はい……すみません」
確かにゲイルさんの言う通りではある。少し大袈裟だったかもしれないけど、寒くて仕方なかったのだ。今後は気をつけよう。
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