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29. ハッキリ言って邪魔
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29. ハッキリ言って邪魔
私たちはダンジョン『王都の地下迷宮』を魔物を倒し、罠を解除しながら目的の10階層に向かっている。
さすがにここまでくると、魔物の数も多く無傷と言うわけにはいかない。罠も強力なものが多く解除に時間がかかることも増えてきた。
「ふう……これでよしっと」
「お疲れ様です。エステルさん」
「ありがとうルシル」
罠の解除を終えた私に、隣で一緒に作業の手伝いをしていたルシルが水筒を差し出してくれた。私は礼を言いつつそれを受け取り、喉を潤す。
「あ~生き返るわぁ……」
冷たい水が乾いた身体に染み渡るようだった。ダンジョンに入ってからずっと歩きづめなので正直かなり足がパンパンだ。第9階層で比較的安全な場所を見つけたため今はみんな休憩しているところだ。
「エステルさん。こんな危険な場所でも文句ひとつ言わず、皆のために率先して働いてすごいです!尊敬します!」
「ありがとう。でもこれが私の仕事だからね。気にしないで平気よ」
この子は本当にいい子ねぇ……。素直だし真面目だし可愛らしいし、きっと将来は立派な……うん。間違いなく美人になるわ。私が男ならほっとかないけどなぁ。ってこの子男の子だけどさ。
「エステルさん?」
「ああごめんなさい。ちょっと考え事をしていただけよ。」
私はふとみんなの様子を見る。やはりキルマリアとリーゼの消耗が激しいかもね。使えるポーションにも限りはあるし、回復はルシルにお願いして、私も罠魔法で応戦するしかないか。そうこう考えているうちに、少し離れたところから大きな爆発音が聞こえた。
「今の音は何ですの!?」
「落ち着いてミルフィ。みんな隊列をとって。索敵をするから待って」
私の言葉でみんなは休憩を止め、隊列をとる。そのまま索敵をすると、まだ距離はあるが、どうやらかなり大型の魔物がこっちへ向かってくるようだ。数は1体だけか。私は全員に声をかける。
「敵が来るわ。準備をして」
全員が武器を構えて臨戦態勢をとったところで、先に進んでいたはずのグランたちがこちらへ逃げてくる。
「くそ!もうやめだ!この先には進めねぇ!なんであんな化け物がこの『王都の地下迷宮』にいるんだよ!」
「だから私はオリビアを回復してから行こうって言ったのよ!」
「そうだぞグラン!もうポーションもないし、戻るのだってどうなるのか分からんのだぞ!?」
「なんだお前らオレに逆らうのか!?」
あーあ。何とも醜い奴らね。リーダーとしての器も実力もないのに偉そうなことを言うなんて、恥ずかしいと思わないのかしら? まあいいわ。
「あのさ、ダンジョンでは静かにして。余計な魔物も寄ってくるわ。さっさと地上へ戻りなさい。邪魔。」
「なんだと時代遅れの癖に偉そうに!!」
私のその言葉を聞いて激昂し、胸ぐらを掴んでくる。まったく。これだから馬鹿は嫌いなのよね。
「本当につくづく馬鹿なのね。今、私に絡んでも仕方ないのに」
「うるせぇ!!テメェみたいな生意気な女はこの場で犯してやるよ!覚悟しろ!!」
はぁ……やっぱり馬鹿には何を言っても無駄みたいね。それにこの状況でそんなことを言えるなんてある意味尊敬するわね。そしてあの時と同じく視界の下からグランの顔を掴む小さな手があった。
「ぐあっ!」
「エステルちゃんに触るな!このクソ野郎!」
「ぶべっ!」
いつの間にか現れたリーゼによって投げ飛ばされたグランは、そのまま地面に叩きつけられ気絶した。相変わらずとんでもない力ね。
「さて次はどっちを投げ飛ばそうかなぁ?」
リーゼの怪力を見てルイナとレインは怯えていた。
「あわわわわわ……」
「ひっひぃぃ……」
2人とも腰が抜けてしまったようで立ち上がれないようだった。
「リーゼ。気持ちは嬉しいけどそれはまた後でね。」
「むぅ。分かった。」
「ルイナ、レイン。さっさとその無能で馬鹿なリーダーを連れていきなさい。ハッキリ言って邪魔よ。」
「は、はいぃ!ほら行くよグラン!」
「すまない!恩に着る!」
ルイナは引き摺るようにしてグランを連れ、レインと共にダンジョンの入り口へと走っていった。全く。やっと静かになったわね。
そして静寂の中、何かが近づいてくる音が聞こえる。それは、だんだん大きくなり地面が震えるほどの地響きを立てながら私たちの前に姿を現した。
『グオオォオオッ!』
そこにいたのは、体長3メートルを超える巨大な牛頭の怪物だった。その迫力に一瞬気圧されそうになるが、なんとか踏み止まる。
「な、なんですかあれは……」
ルシルが呆然としながら呟く。
「まさか……ミノタウロスですの!?」
ミルフィの言う通り、目の前にいるのは紛れもなく上位種の魔物であるミノタウロスであった。しかしなぜこんなところに……。もしかしたらおそらく、このミノタウロスは10階層の『鉱石』を守ってたんだわ。でもあいつらが余計なことしてくれたってところかしらね?まぁ考えても仕方はないけど。
「みんな構えなさい!来るわよ!」
私が声をかけると同時に、ミノタウロスはその巨体に似合わぬ速度で突進してきた。
「散開!」
私の指示に従い全員が散らばると、直前まで私たちがいた場所には、凄まじい衝撃とともに土煙が上がった。
「な、なんて威力なんですの!?」
「エステル姉さん……これは鬼ヤバいよ……」
皆の表情に絶望感が見える。そりゃそうよね。私だって怖いもの。でもここで逃げるわけにはいかない。リーダーとして、不安な感情は出さない!私は恐怖を振り払うように大声で指示を出す。
「隊列が崩れてるわよ!前衛はキルマリア、リーゼでそのまま!ミルフィとルシルは左右に分かれて攻撃!私は後方からサポートするわ!」
「おけ!」
「任せてエステルちゃん!」
「分かりましたわ!」
「頑張ります!」
こうして、私たちは『王都の地下迷宮』で上位種の魔物ミノタウロスを撃破するために戦いに挑むのだった。
私たちはダンジョン『王都の地下迷宮』を魔物を倒し、罠を解除しながら目的の10階層に向かっている。
さすがにここまでくると、魔物の数も多く無傷と言うわけにはいかない。罠も強力なものが多く解除に時間がかかることも増えてきた。
「ふう……これでよしっと」
「お疲れ様です。エステルさん」
「ありがとうルシル」
罠の解除を終えた私に、隣で一緒に作業の手伝いをしていたルシルが水筒を差し出してくれた。私は礼を言いつつそれを受け取り、喉を潤す。
「あ~生き返るわぁ……」
冷たい水が乾いた身体に染み渡るようだった。ダンジョンに入ってからずっと歩きづめなので正直かなり足がパンパンだ。第9階層で比較的安全な場所を見つけたため今はみんな休憩しているところだ。
「エステルさん。こんな危険な場所でも文句ひとつ言わず、皆のために率先して働いてすごいです!尊敬します!」
「ありがとう。でもこれが私の仕事だからね。気にしないで平気よ」
この子は本当にいい子ねぇ……。素直だし真面目だし可愛らしいし、きっと将来は立派な……うん。間違いなく美人になるわ。私が男ならほっとかないけどなぁ。ってこの子男の子だけどさ。
「エステルさん?」
「ああごめんなさい。ちょっと考え事をしていただけよ。」
私はふとみんなの様子を見る。やはりキルマリアとリーゼの消耗が激しいかもね。使えるポーションにも限りはあるし、回復はルシルにお願いして、私も罠魔法で応戦するしかないか。そうこう考えているうちに、少し離れたところから大きな爆発音が聞こえた。
「今の音は何ですの!?」
「落ち着いてミルフィ。みんな隊列をとって。索敵をするから待って」
私の言葉でみんなは休憩を止め、隊列をとる。そのまま索敵をすると、まだ距離はあるが、どうやらかなり大型の魔物がこっちへ向かってくるようだ。数は1体だけか。私は全員に声をかける。
「敵が来るわ。準備をして」
全員が武器を構えて臨戦態勢をとったところで、先に進んでいたはずのグランたちがこちらへ逃げてくる。
「くそ!もうやめだ!この先には進めねぇ!なんであんな化け物がこの『王都の地下迷宮』にいるんだよ!」
「だから私はオリビアを回復してから行こうって言ったのよ!」
「そうだぞグラン!もうポーションもないし、戻るのだってどうなるのか分からんのだぞ!?」
「なんだお前らオレに逆らうのか!?」
あーあ。何とも醜い奴らね。リーダーとしての器も実力もないのに偉そうなことを言うなんて、恥ずかしいと思わないのかしら? まあいいわ。
「あのさ、ダンジョンでは静かにして。余計な魔物も寄ってくるわ。さっさと地上へ戻りなさい。邪魔。」
「なんだと時代遅れの癖に偉そうに!!」
私のその言葉を聞いて激昂し、胸ぐらを掴んでくる。まったく。これだから馬鹿は嫌いなのよね。
「本当につくづく馬鹿なのね。今、私に絡んでも仕方ないのに」
「うるせぇ!!テメェみたいな生意気な女はこの場で犯してやるよ!覚悟しろ!!」
はぁ……やっぱり馬鹿には何を言っても無駄みたいね。それにこの状況でそんなことを言えるなんてある意味尊敬するわね。そしてあの時と同じく視界の下からグランの顔を掴む小さな手があった。
「ぐあっ!」
「エステルちゃんに触るな!このクソ野郎!」
「ぶべっ!」
いつの間にか現れたリーゼによって投げ飛ばされたグランは、そのまま地面に叩きつけられ気絶した。相変わらずとんでもない力ね。
「さて次はどっちを投げ飛ばそうかなぁ?」
リーゼの怪力を見てルイナとレインは怯えていた。
「あわわわわわ……」
「ひっひぃぃ……」
2人とも腰が抜けてしまったようで立ち上がれないようだった。
「リーゼ。気持ちは嬉しいけどそれはまた後でね。」
「むぅ。分かった。」
「ルイナ、レイン。さっさとその無能で馬鹿なリーダーを連れていきなさい。ハッキリ言って邪魔よ。」
「は、はいぃ!ほら行くよグラン!」
「すまない!恩に着る!」
ルイナは引き摺るようにしてグランを連れ、レインと共にダンジョンの入り口へと走っていった。全く。やっと静かになったわね。
そして静寂の中、何かが近づいてくる音が聞こえる。それは、だんだん大きくなり地面が震えるほどの地響きを立てながら私たちの前に姿を現した。
『グオオォオオッ!』
そこにいたのは、体長3メートルを超える巨大な牛頭の怪物だった。その迫力に一瞬気圧されそうになるが、なんとか踏み止まる。
「な、なんですかあれは……」
ルシルが呆然としながら呟く。
「まさか……ミノタウロスですの!?」
ミルフィの言う通り、目の前にいるのは紛れもなく上位種の魔物であるミノタウロスであった。しかしなぜこんなところに……。もしかしたらおそらく、このミノタウロスは10階層の『鉱石』を守ってたんだわ。でもあいつらが余計なことしてくれたってところかしらね?まぁ考えても仕方はないけど。
「みんな構えなさい!来るわよ!」
私が声をかけると同時に、ミノタウロスはその巨体に似合わぬ速度で突進してきた。
「散開!」
私の指示に従い全員が散らばると、直前まで私たちがいた場所には、凄まじい衝撃とともに土煙が上がった。
「な、なんて威力なんですの!?」
「エステル姉さん……これは鬼ヤバいよ……」
皆の表情に絶望感が見える。そりゃそうよね。私だって怖いもの。でもここで逃げるわけにはいかない。リーダーとして、不安な感情は出さない!私は恐怖を振り払うように大声で指示を出す。
「隊列が崩れてるわよ!前衛はキルマリア、リーゼでそのまま!ミルフィとルシルは左右に分かれて攻撃!私は後方からサポートするわ!」
「おけ!」
「任せてエステルちゃん!」
「分かりましたわ!」
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