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21. 紡ぐ想い

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21. 紡ぐ想い


 私はゲイルさんに連れられて、王都の街を歩いている。一体どこにいくのだろうか……。

「あのどこに行くんですか?」

「とりあえず花屋に行くぞ」

「花屋さん!?」

 なんで花とは無縁そうなこのおじさんは花を買うんだろう……? まぁいいや、大人しくついていこう。

 しばらく歩くと、大きなお店にたどり着いた。中に入ると、色とりどりの花がたくさん並んでいる。まるで宝石みたいだなあ……。そんなことを考えているうちに、ゲイルさんは店員らしき女性と話していた。

「ベルフラワーはあるか?花束にしてもらいたいのだが……」

「はい!ありますよ!何色を中心に花束にしましょうか?」

「あー。白かな、赤系と青系のものもまぜてほしい」

「かしこましました」

 そう言って店員さんは、手際よく白いベルフラワーを中心に花束を作ってくれた。そのあと会計も済ませて、私たちは外に出た。

「エステル。持っててくれ。次は酒屋で酒を買うぞ」

「はい?あのどこ行くんですか?そろそろ教えてくださいよ!」

「もうすぐわかるさ」

 そう言われても全くわからない。一体何をするつもりなんだ……? そしてまた歩き出した私たち。今度は酒屋さんに着いたようだ。ゲイルさんは慣れた様子で注文している。すると数分後、たくさんのお酒を渡された。

「よし、行くぞ」

「えっ!?ちょっと待ってくださいよ!!」

 このおじさん私のこと見えてる?本当に強引なんだけど……そしてゲイルさんはそのまま前をどんどん歩いていく。いったいどこまで連れていくつもりだろう……

 更にしばらく歩き、王都の外れにある高台にたどり着く。

「着いたぞ」

「ここって……墓地ですか?」

「そうだ」

 そしてそのままゲイルさんのあとについていくと、一つの墓の前で立ち止まった。そこには、【リディ=フォン=ルーザリア】という文字が書かれている。ん?ルーザリアって……

「これって……」

「リディ=フォン=ルーザリア。アリシアの妹でオレの恋人だった人の墓だ。エステル悪いが水を汲んできてくれ」

「あっはい」

 私は急いで近くの井戸から水を汲み、2人で墓石を拭いて綺麗にした。その後は買ってきたお酒とお花を供えて手をあわせる。

「久しぶりだな、リディ」

「えっと……」

「ああ、すまん。リディはオレとアリシアとパーティーを組んでいてな。王都でもそれなりに名前が知れたパーティーだったんだ」

「そうなんですね」 

「リディは魔術師として優秀だったが、回復魔法も使えたし、色々なスキルを持っていて素晴らしい素質の持ち主だった。」

 懐かしむように話をするゲイルさんの顔はとても穏やかだ。きっと大切な人だったんだろうな……。

「でもリディは病に倒れて、そのまま……な。そして、アリシアは冒険者をやめて、持っている有り金積み込んでクラン『妖精の隠れ家』を設立したんだ。」

「ゲイルさんは何で『妖精の隠れ家』に?」

「リディの最後の頼みだからな。あいつ逝く前にオレに言ったんだよ。『お姉ちゃんをお願い』ってな」

 そういうと、ゲイルさんは再び目を閉じて手を合わせた。私もそれに倣って手を合わせる。しばらく沈黙が続いたあと、ゆっくりと目を開いたゲイルさんは口を開く。

「なぁエステル。アリシアは元Sランクの冒険者だ。将来も期待されていた、でも冒険者を引退した。そしてクランを作った。いつか、自分の『妖精の隠れ家』から優秀な冒険者を出すんだって。」

「アリシアさんのような……」

「そしてお前と一緒にいる時のアリシアは楽しそうにしているように見えた。それは紛れもない事実だと思う。だからこそ、お前はこれからもアリシアを支えてやってくれ」

「はい……!」

「頼むぞ」

 そう言うと、ゲイルさんは私の頭をガシガシ撫でた。正直痛いけど……なぜか嫌じゃない。むしろ心地いいくらいだ。それから私たちはしばらくの間話をしていた。すると遠くの方から足音が聞こえてくる。

「あら?エステルちゃん。ゲイルさん。来てたのね?」

「あっアリシアさん……」

「エステルがいることに驚かないんだな?」

「レミーナから2人が出かけたって聞いたからもしかしたらってね?」

「なるほどな。相変わらず鋭いなお前は」

「ふふん!でしょ?」

 2人はそんな会話をしながら笑い合っている。アリシアさんとゲイルさん。2人の過去を知った。だからこそ分かる2人の想い。

「あの!私は……この『妖精の隠れ家』に来て良かったです!アリシアさんにも会えたし、それに……皆さんと出会えてよかったと思ってます!これからも頑張るのでよろしくお願いします。」

「うんうん。エステルちゃんありがとう!」

 私はグランたちには負けない。私の負けは『妖精の隠れ家』の負けになるから。アリシアさんに恥ずかしい思いはさせない。改めてそう決意するのだった。
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