【王都最強の崖っぷちクラン誕生!?】~戦えないやつはいらん。と追放されたスカウトはスカウトされたので、個性派メンバーを超絶サポートします!~

夕姫

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20. 勝負しましょ

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20. 勝負しましょ



 私たちは初めてクラン『妖精の隠れ家』として、パーティーとしてダンジョン攻略の目的の1つゴーレム討伐を達成した。

 でもやはり、私たちは圧倒的な火力不足は否めない。そして経験も。今回はたまたま上手くいっただけだ。まだまだ問題は山積みだよね……。

「はぁ……」

「大きな溜め息ですね?何か悩み事でしょうか?」

「レミーナさん。いや少し考え事をしていただけだから。心配しないで」

「そうですか?あまり思い詰めない方がいいですよ?」

 レミーナさんは頭を下げて、いつも通り仕事をし始める。もしかして……気を使ってくれたのかしら?私はもう一度大きな溜め息を吐くと、気持ちを切り替えて自分の部屋に戻った。






 そして翌日。私は朝から冒険者ギルドに顔を出していた。ゴーレム討伐の報告をするためである。受付に行くと、この世で今一番ムカつくあいつらがいた。

「ああ?誰かと思ったら時代遅れのエステルじゃねぇか。こんなところでどうしたんだ?」

「……どいてくれないかしら。ゴーレム討伐の報告をしたいんだけど」

「おいおい。まさか『王都の地下迷宮』の攻略をしてるのか?あの無駄飯食いがよぉ!」

「そうだぞ。お前みたいな無能が行っていい場所じゃないんだよ!オレ達のような優秀な人間が行くべきなんだ!」

「エステルには無理でしょうね。邪魔だからそこをどいてくれないかしら」

「そうよ。本当にウザいわねあんた」

 私に冷たく言い放つ。他の人達も遠巻きに見ているだけで助けようとはしてくれない。こいつらは本当に最低な人間だわ。そんな時だった。

「あっいたいた!エステルちゃん。」

「あら朝から偉いわね。」

「リーゼ、アリシアさん。」

「あーっ!?この前の弱い人!」

「なんだとガキ!」

「なによおじさん!」

 2人は睨み合う。それを私が止めようとすると、アリシアさんが先にリーゼの肩に手を置いて首を横に振った。

「こら。弱い人に弱いって言っちゃダメじゃない?リーゼちゃん。」

「なんだてめえ!オレが誰だか分かってるのか!?」

「え?あっ初めまして。私は『妖精の隠れ家』のマスターをやってます。アリシア=フォン=ルーザリアと申します。以後お見知り置き下さいませ。」

「ああ?『妖精の隠れ家』だぁ?聞いたことねぇぞ?はっはっはっ!笑わせるんじゃねえ!」

「ふふっ。あなたはご存知なくても仕方ありません。何せあなたと同じく無名ですから。」

「ふざけんなよクソアマが!!」

「うるさいわね」

 アリシアさんは持っている杖をグランの頭に振り下ろした。ゴンッという鈍い音が響く。痛そう……。

「ぐおおおっ!!?」

「はい終わり。私の可愛い仲間に汚い口を聞いてんじゃないわよ。殺すわよ?」

「てめえ……やりやがったな……!」

「文句あるなら勝負でもしてあげる?どうせ私たちが勝つけど?」

 なんでアリシアさんはこんなにグランのことを煽ってるの?いや確かにこいつらはムカつくんだけどさ、アリシアさんは関係ないよね?

「上等だコラァ!!」

「決まりね。私たちは今『王都の地下迷宮』を攻略中なの。地下10階層の鉱石を取りに行って先に戻ってきたほうが勝ちっていうのはどうかしら?」

「ああ良いぜ!負けた方は何でも1つ相手の命令を聞くっていうルールを追加しようじゃねぇか!」

「いいわよ。勝負は一週間後でいいかしら?それまでに準備しておくから」

「おういいだろう!楽しみにしてるぜぇ?無名のクラン『妖精の隠れ家』さんよぉ?」

 そう言ってグランたちはギルドを出て行った。その様子を見て私は呆然としていた。

「アリシアさん。どうしてあんなことを?」

「あら?だって許せなかったんだもの。それにエステルちゃんも悔しかったんでしょう?」

「それは……まあ……」

「ならこれで良かったと思うわよ。エステルちゃんは私たちの大切な仲間なんだから、それに復讐をするいい機会じゃない?事故に見せかけてダンジョンで殺しちゃう?」

「そ、そんなことしませんよ!」

「ふふっ冗談よ。私もそこまで非道じゃないわ。」

 アリシアさんは微笑みながらそう言った。なんか怖いんですけど……本当にしないですよね?

 そのあとはゴーレム討伐の報告をして、『妖精の隠れ家』へ戻ることにした。

 私はグランたちのことを考える。前衛はリーダーのグラン、そして戦士のレイン。後衛には格闘家のルイナとメイジのオリビア。まさしくテンプレのような整ったパーティーではある。ここに回復役がいれば完璧だ。

 それに比べて私たちはどうだろうか。パーティーとしては圧倒的に負けている。あんな勝負を受けてしまったことを今更ながら後悔している。止めれば良かったよね……。私がテーブルに突っ伏しながら落ち込んでいると、ゲイルさんがやってくる。

「なんだ?錆びた機械みたいになってるじゃねえか。また何かあったのか?」

「あー……はい。実は……」

 私は今日起こった出来事を話した。

「……なるほどな。それで悩んでいるわけだな」

「そうなんですよ。勝てる気が全然しないんです。」

「……エステル。暇だろ?少しオレに付き合え。」

「え?どこに行くんですか?もしかして……デートですか?」

「バカ野郎!なんでオレがお前みたいなガキと出かけなきゃいけねぇんだ!」

「ガキって!私は21です!」

「オレから見たら十分子供だよ。いいからついてこい。」

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!」

 こうして、なぜかゲイルさんに私は強引に腕を引っ張られてどこかに連れて行かれるのだった。
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