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5. 証明しないとダメだね

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5. 証明しないとダメだね



 目的の東の森に向かって歩いていく。ところでなんでキルマリアは討伐依頼なんて受けたのだろう?私たちは『スカウト』『アサシン』『クレリック』という組み合わせだし、素材集めのほうが効率がいいはずなんだけど。

「ねぇキルマリア。なんでブラックウルフ討伐依頼なんか受けたの?素材集めのほうが私たちには合ってない?」

「適当だけど?なんか面白いことないかなって思ってさ!」

 適当は草。いや確かに面白そうなことは私だって大好きだからわかるけども。それにしたって……。

「まぁいいわ。とりあえず早く終わらせて帰りましょう」

「えぇー!せっかく来たんだからもっと遊ぼうよ!」

 遊ぶ気満々だったのか……。私はため息をつきながら森の中に入っていった。森の中は木々の間から陽の光が差し込み、木漏れ日となって森全体を照らしている。その光はとても幻想的で美しく、とても心が落ち着く光景だ。

「よしそれじゃ行こうか!エステル姉さん、ルシル」

「待ってキルマリア。今私がスキルで索敵するから」

「そんなこともできるんですねエステルさん。ボク尊敬します!」

 そう笑顔を私にルシルは見せる。めちゃくちゃ可愛い……でも男の娘なんだよね……。どうしようこの気持ち……。頭が混乱する。

 私は頭を振って邪念を振り払い、スキルを発動させる。

「索敵スキル【鷹の目】」

 私の視界が一気に広がり、周囲が見渡せるようになる。これは鷹の目という、鳥系のモンスターが持つスキルである。これを使えば上空からの景色を見ることができるし、遠くを見渡すことができる。また、自分を中心に半径50メートルの範囲にいる生物の反応を見ることができるのだ。

「見つけた。北東方向に20メートルほど先にいるわ。少し東を迂回して行くわよ。戦闘は最小限に抑えたいから」

「わかった。ありがとう姉さん!」

「いえ、お役に立ててよかったわ」

「すごいなぁ。ボクにも何かできることはないでしょうか……」

 うっ……上目遣いでお願いされたら断れないじゃない……。仕方ないな……。

「それならルシルは神聖魔法でキルマリアを援護してくれると助かるかな。回復は私がアイテムで引き受けるから」

「わかりました!頑張ります!!」

 本当に元気で素直な子だ。こんな子が弟だったらいいなと思う反面、やっぱり女の子になってほしいと思ってしまう。なんかどっちでもいいかも。

 私たちはゆっくりと歩きながら北東を進んでいく。なぜか『アサシン』のキルマリアが堂々と先陣を切って歩いているが、まあいいか。この子忍ぶつもりないみたいだしさ。

 しばらく進むとブラックウルフの群れが見えてきた。全部で5体ほどだろうか。遠目に見てもかなり大きいことがわかる。

「おお!本当にいた!」

「ちょっと静かにしてキルマリア!」

「あははごめんごめん。それでどうするのエステル姉さん?」

 数が多いわね。ここは何とか数を減らしたい。私は『スカウト』のスキル罠魔法の『落とし穴』を使うことにした。

「【スカウト】罠魔法の『落とし穴』発動」

 地面に小さな円状の模様が現れる。そして地面から土煙が上がると同時にブラックウルフの足元から巨大な大穴が出現し地面に引きずり込む。これで3体は倒せたはずだ。これで残り2体になった。

「よし。あとは……あれ!?キルマリアは!?」

「さっきまでいたんですけど……ごめんなさいボクが見てなかったから」

 一体どこに行ったのよ……残り2体もいるのに!そんなことを考えていると、突然ブラックウルフが一斉に吠え始めた。

「グルルルゥゥアァァァ!!!」

 すると目の前にキルマリアが現れた。どうやらスキルを使ったようだ。

「【アサシン】スキル・暗殺術の『影渡り』だよ!」

 そう言うとキルマリアは一瞬にして残りのブラックウルフの背後に移動していた。そのままキルマリアは短剣を振るいブラックウルフの首を切り落とした。残る1体のブラックウルフは逃げようとするが、すでにキルマリアの短剣によって首を切り裂かれていた。

「ふぅ。終わりっと!マジであたし最強!」

「キルマリア……あなたねぇ……ちゃんと作戦を話さないと……」

「いやぁつい楽しくて!ごめんねエステル姉さん!」

「もう……いいわよ」

「あの……ボクのせいですみません……」

 ルシルは申し訳なさそうな顔をしている。いや別にルシルが悪いわけじゃないのに……。

「倒したのはいいんだけどさ?エステル姉さんが地面に沈めちゃったから、せっかく5体倒したのに、2体しか証明部位が取れないんじゃない?ウケるんだけど。」

「え……?」

「あのエステルさん……ボクのせいですいません」

 だから謝らなくて大丈夫だからルシル。結局色々ハプニングはあったけど、初めてのギルドの依頼を達成することができた。

 私たち三人は初めて依頼を達成することができた喜びに浸りながら街へと戻っていった。そして『妖精の隠れ家』への帰り道。

「ほい。エステル姉さん。これ報酬の銀貨2枚。あげる」

「え?」

「さっきルシオと話したんだけどさ、『妖精の隠れ家』での初依頼だし。エステル姉さんにあげるよ!」

「その名前で呼ばないでキルマリアさん!あのエステルさん。これからもよろしくお願いしますの意味も込めてるので受け取ってください。」

 2人は笑顔で私に報酬の銀貨2枚を渡してくる。その優しさに思わず涙が出そうになった。そして言葉を聞いて、胸が温かくなるような感覚を覚えた。『おしゃべり陽キャのアサシン』『超絶美少女の男の娘クレリック』。だけど私のことを仲間だと認めてくれている。それがとても嬉しかった。

「ありがとう。それじゃ私のほうが年上だから、この銀貨で『妖精の隠れ家』で奢ってあげる。ロザリーさんの料理食べさせてあげるわね?」

「げっ冗談きついなーエステル姉さんは!」

「ならなら!帰りにアイスクリーム食べたいですボク!行きましょ!ほらほらキルマリアさんもエステルさんの手を引っ張って!」

「あっちょっとルシル!冗談よ!もう、そんなに引っ張らないの!」

 私は初めて本当の仲間に会えた気がした。そしてこれからも頑張ると心に決めたのだった。
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