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380. 姫は『新しい風』を見つけたようです

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380. 姫は『新しい風』を見つけたようです



「早速部屋に行き、配信準備を始めていく。そして高坂さんにもパソコンの画面が見えるように向きを変える。すると高坂さんは、目の前に広がる2つのモニターに目を輝かせていた。

「わぁ!これがプロの部屋なんですね!素敵です!こっちの画面でコメント欄を拾うんですね。すごい……」

「ありがとうございます」

 ……なんか近いな。まぁいいか。とりあえず配信を始めるか。高坂さんは少し離れたところに椅子を置き、オレの配信画面を見ながらメモを取っていく。

 コメント
『おはよう』
『ましろ姫おはよう』
『親衛隊揃ってます!』

「おはようございます。今日も1日頑張ろうね?Fmすたーらいぶ1期生、みんなの姫こと姫宮ましろです」

 いつものように雑談配信をスタートさせていく。それからしばらく雑談配信をしていたが、時折チラッと高坂さんを見てみると、夢中になってメモを取っていく姿が目に映る。

 コメント
『ステラさんと連絡してるの?』
『しろしろまた観たい』
『姫かまそう!』

「ステラさんとは連絡取ってないかなw忙しいよきっと。だってチャンネル登録者100万人いるんだよ?あのコラボだって奇跡だからw」

 コメント
『次は姫も100万人!』
『その時逆凸しよ』
『あとどのくらい?』

「ましろは……今83万人だから、早くても来年じゃないかなwまぁ逆凸はその時考えようか」

 コメント
『待ってます』
『そう言えば5期生募集してるね』
『もうそんな時期なのか』

「公式で募集してるの?知らなかった。でもそんな時期だよね、4期生は『ましポん』の時にシルエット御披露目したもんね……5期生は何人入るんだろ楽しみだね」

 コメント
『応募要項面白いよ』
『オレも見た』
『なかなか味がある』

「そうなの?ちょっと見てみようか……えっと……条件……『在籍ライバーでは無理!絶対に私にだけしか出来ない!と自信のあるものをお持ちの新しい風になりたい方』……おお……Fmすたーらいぶらしいねwでも、最近は動画配信者や個人勢のVtuberさんも増えてるから、単純に配信スキルだけでは判断は難しいよね?ほら4期生だっていきなり話せていたもんね。ましろの初配信なんて沈黙してる時間の方が多かったよw」

 コメント
『姫も成長したね』
『新しい風楽しみだね』
『ガチ恋増えるかなw』
『ありそうw』

「あはは。確かに、もしかしたら3期生、4期生のガチ恋勢が入ってきてもおかしくないからね?かのんちゃんのガチ恋勢とかだったらどうしようwそうだ!新しい風と言えば、ましろのマネージャーさん新しい人になったんだよね?しかも可愛い新人ちゃんだよ?」

 オレがそう言うと、高坂さんは目を丸くして驚いた表情を見せる。まさか自分が話題に出るなんて思ってなかっただろうからな。

 コメント
『そうなの?』
『新人が姫につくの!?』
『スパルタすぎw』
『さすがFmすたーらいぶw』

「前のマネージャーさんは偉くなっちゃったから、なかなかましろだけに時間を作るのは難しくてね?でも……新人ちゃんを指名したのはましろなんだ」

 更に驚く高坂さん。オレなりに教えてみると桃姉さんには言ったし、とりあえず今オレが思っていることを話そう。

「でもさ、新人とかベテランとかは関係ないとましろは思うよ?もちろん経験値が違うから、色々対処する術はないけど。そこはましろが教えてあげられるといいと思うし。ただ重要なのは、お互いが信頼しあって助け合うこと。良く勘違いされるんだけどライバーとマネージャーに優劣はないよ。よりみんなが楽しんでくれるような配信にするためにやっている。ゴールは同じだからさ?」

 コメント
『いい言葉や』
『姫の考え好き』
『新人ちゃんどんな子?』

「新人ちゃんはね……真面目で礼儀正しくてしっかりしてる。でも……不器用な子かな?素晴らしい才能があるけど、その才能に気づいてなくて『私には……』みたいな?」

 コメント
『姫は見抜いてる』
『さすがエース』
『すごい才能なんだろうな』

「彼女はね『好きなものを共有』できる才能があるんだよ。まだ1回しか話したことないけど、彼女が大切にしている気持ちや想い。それを分かち合うことが出来ればきっとみんなを笑顔にできるって思って行動できるすごい才能だよ。ましろにはそれはない。だって怖いじゃん?自分の好きなものが否定されたらさ?」

 コメント
『確かに』
『自分の趣味とか隠したい人いるよね』
『自分だけが楽しめればいいし』

「そう。自分だけが楽しめればいい。その通りだよね、でも彼女は違う。その勇気がある。だからさ、きっとましろにも良い提案とかしてくれるんじゃないかな?それが今は楽しみだね?」

 そんな感じで雑談を続けていき、いつものように朝配信を終える。高坂さんにオレの思いが伝わったならいいけどな。

「お疲れ様でした。あの……私のこと話題にしてくれて嬉しかったです」

「……高坂さん。オレはライバーは4年目ですけど、マネージャーはまだ1年目。正直、マネージャーの仕事を教えてあげるにはスキル不足かもしれません。でも、ライバーのことは誰よりも分かってるつもりですから、遠慮なく思ったことを言ってください。ライバーとマネージャーには優劣はないから」

「はい。私……なんか吹っ切れました。頼らせてください!色々勉強させていただきます!そして早く皆さんのために貢献したいです!」

 満面の笑顔をオレにくれる高坂さん。その時、少し開けていた部屋の窓から心地よい風が入ってくる。それはまだ微かではあるけど、オレと高坂さんを包みこむような優しい風。もしかしたらオレは『新しい風』を見つけたのかもしれない。
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