上 下
395 / 718

354. 姫は『探偵』の部屋に行くそうです

しおりを挟む
354. 姫は『探偵』の部屋に行くそうです



 5月2日。今日も前夜祭として、Fmすたーらいぶの公式配信がある。そして明日はついにVパレスプロダクションさんとの『Vすたコラボ』が始まる。まぁ初日はひなたさんが配信をするのでオレは休みだけど。

 そんなことを考えながら、オレはリビングでグッズの特典のサインを黙々と書いていた。あまりこういうのは得意じゃないんだけど、『姫宮ましろ』のファンの親衛隊の為だ。そう思いながらサイン書きをしているとスマホが鳴り出す。

「ん?日咲さん?なんだろうか……もしもし?」

 《あ。颯太?今大丈夫?》

「うん。大丈夫だけど」

 《今日さ、どうする?》

「どうするって何が?」

 《え。企画書読んだ?》

 企画書?今日の20時からの配信のやつだよな?

「探偵VS警部のやつだろ?読んだけど」

 《一番上見た?》

「え?」

 オレは企画書を確認する。

『今回はヒントクイズ形式なのでディスコードを使いますが、特定のサーバー回線の使用や文章の打ち込みの関係で1人にしか送れません。各チームは当日、事務所のスタジオかどちらかの自宅で配信をしてください。ご協力お願いします』

 《ほら。颯太は事務所無理じゃん。あたしの家か颯太の家なんだけど?》

「あぁ……確かに。日咲さんどっちでやりたいとかある?」

 《別にないけど……あ。そうだ、あたし打ち合わせがあるんだった。だから颯太の家に行けないや。悪いんだけどあたしの家来てくれない?住所送っておくから》

「ああ。わかった。住所送っておいて」

 そう言って日咲さんとの通話を終える。日咲さんの家……初めてだな。なんか緊張してきたぞ……プライベートのことは何も知らないしな……そう思いながらオレは住所を確認し、家を出る準備をする。

「よし……じゃあ行くか」

 そしてオレは日咲さんの住むマンションに向かうことにする。電車に乗りしばらく電車に揺られていると、日咲さんのマンションの最寄り駅に着く。駅から5分くらい歩くと日咲さんが住むマンションが見えてくる。エントランスで暗証番号を入力し、エレベーターに乗る。そういえば……家に行くのは初めてだな。

 普段あんなだけどどんな感じなんだろう?なんか緊張してきたぞ……そんなことを考えてるうちに、日咲さんの部屋の前に着き、インターホンを鳴らすと中からパタパタと足音が聞こえドアが開く。

「あ。いらっしゃい颯太。ご飯にする?お風呂にする?それとも……」

「お邪魔しました」

「こらこら!冗談だよ冗談!そんなすぐ帰らないでよwどうぞ」

「とりあえずお邪魔します」

 日咲さんの部屋は普通の女の子って感じの部屋だった。なんかすごく日咲さんっぽい。でもなんかいい匂いするな……彩芽ちゃんの部屋もだけど女の子特有のものなのかもな。

「日咲さん。サイン書いててもいい?配信まで時間あるからさ」

「うん。いいよ。夕飯まだでしょ?カレーあるけど食べる?」

「……インスタントか。ありがとう食べるかな」

「こら。あたしの手作りだけど?」

「え?日咲さん料理できるのか?」

「出来るよ!あたしのことなんだとおもってんの?とりあえずカレーならあるから食べてよ」

 オレは日咲さん特製カレーを食べながら、サインを書くことにする。……普通に美味しいんだが?日咲さん料理作れるのか……なんか女子力高いな。それは失礼か。そう考えていると日咲さんが話しかけてくる。

「そうだ。この前、衣音と話したんだけど、今度3期生で旅行配信するんだって?」

「うん。来週の週末にね」

「お土産よろしくね?」

「え?いや日咲さんには衣音ちゃんが買うだろうし」

「別に颯太からも貰ってもいいじゃんwあたし同期だよ?」

「……じゃあ何か買ってくるよ」

 そのあとは、お互いの近況や彩芽ちゃんのこと、Vすたコラボのことなど雑談をしながらカレーを食べ終わり、そろそろ配信の準備を始める。日咲さん……年下で異性だけど、こうやってオレにも色々話せて信頼できる仲間が出来たんだな。なんか嬉しいな。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

男女比がおかしい世界に来たのでVtuberになろうかと思う

月乃糸
大衆娯楽
男女比が1:720という世界に転生主人公、都道幸一改め天野大知。 男に生まれたという事で悠々自適な生活を送ろうとしていたが、ふとVtuberを思い出しVtuberになろうと考えだす。 ブラコンの姉妹に囲まれながら楽しく活動!

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた

楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。 この作品はハーメルン様でも掲載しています。

最底辺の落ちこぼれ、実は彼がハイスペックであることを知っている元幼馴染のヤンデレ義妹が入学してきたせいで真の実力が発覚してしまう!

電脳ピエロ
恋愛
時野 玲二はとある事情から真の実力を隠しており、常に退学ギリギリの成績をとっていたことから最底辺の落ちこぼれとバカにされていた。 しかし玲二が2年生になった頃、時を同じくして義理の妹になった人気モデルの神堂 朱音が入学してきたことにより、彼の実力隠しは終わりを迎えようとしていた。 「わたしは大好きなお義兄様の真の実力を、全校生徒に知らしめたいんです♡ そして、全校生徒から羨望の眼差しを向けられているお兄様をわたしだけのものにすることに興奮するんです……あぁんっ♡ お義兄様ぁ♡」 朱音は玲二が実力隠しを始めるよりも前、幼少期からの幼馴染だった。 そして義理の兄妹として再開した現在、玲二に対して変質的な愛情を抱くヤンデレなブラコン義妹に変貌していた朱音は、あの手この手を使って彼の真の実力を発覚させようとしてくる! ――俺はもう、人に期待されるのはごめんなんだ。 そんな玲二の願いは叶うことなく、ヤンデレ義妹の暴走によって彼がハイスペックであるという噂は徐々に学校中へと広まっていく。 やがて玲二の真の実力に危機感を覚えた生徒会までもが動き始めてしまい……。 義兄の実力を全校生徒に知らしめたい、ブラコンにしてヤンデレの人気モデル VS 真の実力を絶対に隠し通したい、実は最強な最底辺の陰キャぼっち。 二人の心理戦は、やがて学校全体を巻き込むほどの大きな戦いへと発展していく。

パンツを拾わされた男の子の災難?

ミクリ21
恋愛
パンツを拾わされた男の子の話。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...